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厚生福祉 2006年1月27日


医障害者自立支援法の施行


 障害者自立支援法が、この4月に施行になる。支援費制度の運営においては、在宅支援の予算不足が恒常化して、障害者にとっては先行き不安感が広がっていた。その不足分を埋めるような形で、障害者自立支援法ができたが、受益者負担の強化などをめぐっては、一部の障害者団体からは反対の声が上がったことも記憶に新しい。

 確かに、新法にはさまざまな問題はあるかもしれないが、障害者の在宅生活の支援、就労の促進ということでは、一歩前進である。精神障害者が、福祉施策の対象として本格的に組み込まれたことも、画期的なことと評価できる。この方向性は大事にしなければならない。また、平成21年を目途に、介護保険に障害者介護が参入することも見据えての取り組みも必要である。

 課題は、施策をどう運用していくかである。問題視された費用負担についても、たとえば、親など扶養義務者に所得があるからといって、収入の少ない障害者に負担を負わせるようなことになってはならない。障害者がサービスを受ける際の、障害程度の判定を正確に行うためのシステムも、緊急に打ち立てることが必要である。そのための方法論はむずかしいが、それよりも、自立支援の哲学が判定者に共有されていないと、制度としては動かなくなってしまう恐れがある。

 サービスの実施面においては、市町村の責任が重い。障害者の期待に応えるようなサービス提供の質と量を確保することができるかどうか。市町村がサービスを直接提供することがむずかしい場合、的確なサービスを提供する業者をどう確保するか。地域の事情によっては、社会福祉協議会を主たる事業主体として期待するしかないというところもある。その意味では、県の社会福祉協議会も含め、社会福祉協議会への役割も大きくなる。

 精神障害者の在宅支援については、市町村によっては、どう関わっていいか、経験どころか問題意識さえないところもある。それでは済まないのであって、法律施行時までには、最低限の備えが必要である。その意味では、宿題は山積している。

 せっかくできた障害者自立支援制度である。これを、前向きに使うか無駄にするかは、これからの取り組み如何にかかっていることを強調したい。


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