ニュージーランドで感じたこと
2005.12.21
12月11日から18日まで、ニュージーランド旅行に行ってきた。11月20日に、3期12年務めた知事業を終えた。世間で言う「骨休め」ということも必要だろう。12年間、知事業を支えてくれた妻への感謝を態度で表わすこともなければならない。このタイミングを逃すと、いつこういう機会が持てるかわからない。そんな諸々のことから、決行した。
「決行した」というほど大げさなものではない。目的地をニュージーランドにしたのは、欧米は真冬で寒いし日が短い。東南アジアは、この時期、鳥インフルエンザが怖い。南半球でも、南米は遠いし言葉もわからない。オーストラリアは意外と見るものに乏しいらしいとの情報。ということで、消去法のような形になったが、二人とも初めての土地だし、行ってきた人の話では、とてもいいところとの報告なので、ここに決めた。
引越しの後片付けやらなにやらもあり、我が家のパソコンが正常に作動するのに手間取って、インターネットでの旅行申し込みが遅くなってしまった。そのせいで、旅行社のおすすめコースが満杯になってしまって、残っているのは、(多分)不人気なコースだけという状況だったのかもしれない。成田空港で手続きをしてわかったのだが、このコースの参加者は、我々二人だけとのこと。そんなに不人気なのかと心配になったり、二人だけなら気楽でいいなと思ったり。
結果的には、気楽で良かった。そして、かなりユニークな日程を楽しむことができた。南島のクライストチャーチでは、ガーデニングの得意なお宅のお庭を三軒もお訪ねする企画があった。私はともかく、ガーデンニング大好きの妻とすれば、願ってもない訪問である。夕方は、牧場をやっている農家を訪問。羊の毛刈りの実演を含む農家の様子を見せてもらい、素敵な自宅を中までご案内いただき、夕食は奥様の手作りをごちそうになるという至れりつくせりであった。ご主人のニュージーランドなまりの強い英語は、かなり聞き取りにくかったが、気のいいご夫婦で、心から歓待されていることを感じることができた。
北島のオークランドでは、ヨットでの夕食クルーズ。それほど大きなヨットではないので、参加者は我々のほかにはオーストラリアからの新婚さんだけ。夕食はヨットのキャビンで。船長とその助手が夕食を出してくれる。その日は、雨も風も強く、ヨットは猛スピードで、片側に大きく傾いての走行となる。そんな中で、船長は新婚の妻に舵を取らせるものだから、私の妻は「こんな状態で素人にやらせるなんて、とんでもない」と怒るやら、怖がるやら。それも含めて、City
of Sails(オークランドの異名)での経験も忘れられないものとなった。
忘れられないのは、オークランドから南に3時間ほど行ったワイトモ洞窟での土ボタルである。鍾乳洞の中で土ボタルが幻想的に光るというもので、楽しみにしていた。3日前に、ワイトモ洞窟のビジターセンター、おみやげもの屋などが全焼するという火事が発生していた。その結果、急遽別な鍾乳洞に案内されたのだが、これがとてもよかった。今年の6月に中が整備されたばかりの鍾乳洞で、設備は整っているし、土ボタルも見られた。ワイトモと比較できる立場ではないのだが、「怪我の功名」の言葉が浮かんできた。
今回の最大のハイライトは、ミルフォード・サウンドである。南島のクイーンズタウンからバスで5時間も行ったところにあるこのフィヨルドには、圧倒されてしまった。氷河が山を削り取って出来上がった入り江である。船から見れば、両岸には2千メートルの山が切り立っている。折からの雨模様で、その山肌からは何本もの滝が流れ落ちるのが目撃される。息を呑むようなという表現がぴったりくるような自然の威容である。これを経験できただけでも、今回のニュージーランド行きの元は取ったような気になった。
人口400万人のところに、その10倍4000万頭の羊。マウイの原住民の子孫をはじめ、多種多様な人種、民族が友好的に交じり合った社会を作っている。旅行者の目から見ただけではあるが、のんびり、ゆったりした生活を楽しんでいる国民性が感じ取れた。
ガーデンシティと呼ばれるクライストチャーチの真ん中にあるハーグレー公園内でジョギングしたが、一周7キロという広大なものである。中にある植物園は入場無料で、手入れされた花々の美しさと立派な樹木の威容が印象的であった。こういった文化に金も人手もかける。それを誇りとする気質は、洗練された大人のものであろう。ぎすぎすした競争とは縁がないかもしれないが、さりとて自堕落な怠け者社会では絶対にない。こういう生活こそが幸せ。住んでいる人は、そんなことを格別に意識することさえないのかもしれないが、日本の大都会にはない価値観が支配している地域であることが伝わってくる。
たまには、こういう異文化に触れることは大事。骨休めで行ったにもかかわらず、こういう理屈っぽいことを思い、こうして「走り書き」のネタにもしている。だから、あなたは貧乏性なんだの声が聞こえてくる。
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