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進化する知事会

2005.7.19

 「進化する知事会」というのは、この7月13日、14日と徳島市で開催された全国知事会のキャッチフレーズである。一昨年の岐阜県高山市では「闘う知事会」というキャッチフレーズが使われた。そもそも、全国知事会でキャッチフレーズが使われたのは、この高山会議が初めてだったのではないだろうか。ホストの梶原知事が提唱し、その後、その梶原岐阜県知事が全国知事会の会長になって、「闘う知事会」は、知事会そのものを言い表す用語へと変換を遂げたように思う。

 今回の「進化する知事会」というのは、闘わない知事会を意味してはいない。さらに闘うのであるが、昨年の新潟での全国知事会での盛り上がり、その後の政府との「闘い」を通じて、しっかりと成果を上げなければ意味がないという教訓を踏まえての言い方であると理解している。

 言い出したのは、今回のホスト役である飯泉嘉門徳島県知事なのだろう。秀逸なキャッチフレーズである。さらに、「地方が変わる、日本を変える」というフレーズが続く。これまたぴったりの言い方である。今回の「三位一体改革」(地方財政自立改革)の目指すところが、これである。日本を変えるためのシステム改革であるという視点が、極めて重要である。

 ということで、今年の「進化する知事会」は、どうであったか。昨年の新潟での知事会以来、深夜に及ぶ議論が当たり前のようになった気がする。初日13日の日程では、最初から夜10時までと組まれていた。結果として夜10時になったという会議はあっても、最初から夜10時までの日程という会議は、珍しいのではないか。

 日程はともかく、中身も侃々諤々たる会議である。今回は、三位一体改革(地方財政自立改革)第一期のしめくくりとして、6000億円の税源移譲のために、それに見合う補助金・負担金の廃止リストを決めるというのが、最も大事な議題であった。結局は、9970億円の廃止リストを決めることになったのだが、そこに至るまでの議論が結構なボリュームであった。

 いわゆる「蒸し返し」の議論である。昨年の深夜に及ぶ新潟会議で到達した3兆2000億円の廃止リストに入っている義務教育国庫負担(のうちの中学校分)8500億円を「廃止は問題」として議論を展開する知事が何人かいた。「いったん決めたのだから、ぐずぐず言うな」ではない。だから、今回もほぼ2時間がこの議論に費やされた。それにしても、蒸し返しの議論であることには変わりはない。小異を捨てて、大同につくということで了承された上で、政府に対して戦いを挑んでいる。我々の足元がふらふらしていては、戦いにならないではないか。そんな想いもよぎるが、2時間の議論は、ムダではなかったと思いたい。

 議論の過程で大阪府の太田房江知事が、的確に核心をついた発言をしていた。今回、我々地方として勝ち取らなければならないのは、3兆円の税源移譲である。その原点を忘れては困る。まさにそのとおり。国と地方の関係で、これほどのインパクトのあるシステム変更は、これまでなされたことはなかった。その意味で、絶好のチャンスである。我々知事の一人ひとりの意気込みが試されている。

  そういう観点から、義務教育国庫負担廃止問題を考えてみてはどうか。ある県における義務教育のレベルが一定以上に保たれるのは、文部科学省のがんばりの結果勝ち取られる国庫負担のおかげなのか、自分の県の教育レベルを下げたくないと知事、教育委員会に熱い視線を送る県民なのか。知事自身が、「税源移譲がなされても、国庫負担がないと自分の県の義務教育レベルを維持するのに自信が持てない」と言っているに等しい心理状態の中で、「税源移譲を勝ちとって、真の地方分権を確立しよう」という意気込みが出てくるものなのだろうか。教育論もあろうが、それ以前の問題ではないかと強く思う。

  そんなことを、熱くなる気持ちを抑えながらも、考え抜きながら、今回の「進化する知事会」に参加していた。そういった熱い議論を経て、9970億円の税源移譲案=補助金・負担金廃止リストの原案が了承された。さあ、ここからが秋の陣の戦いの始まりである。「進化する知事会」が、「深化する知事会」ということで、議論の質が深まったことを信じながら、行動する知事会にしていかなければならない。



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