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シローの走り書き

走るクマ

サッカー・ワールドカップ

2005.6.14

 2006年ドイツで開催のサッカー・ワールドカップのアジア最終予選で、日本は北朝鮮を2対0で破って、本選への出場を決定した。32チームの枠で出場決定第一号というおまけもついた。

 この北朝鮮戦は、テレビ中継で観戦していた。日本は序盤からずっと押し気味で、後半のいい時間帯で得点。その後は、北朝鮮の戦意が落ちたのか、激しい反撃にも遭わないうちに2点目。危なげない順当勝ちである。本来なら北朝鮮の平壌で行われるはずの試合が、第三国のタイのバンコクで、しかも、無観客で行われた。北朝鮮がイランと戦った試合での選手、観客の暴力行為が原因である。この試合の模様もテレビで見ていたが、ひどいものだった。選手の傍若無人さ、観客の暴徒化。これでは正常な試合をさせる資格なしとされても、無理はない。

 無観客試合なのに、東京の国立競技場には2万人以上の「観客」が集まって、熱い声援を送っている。ちゃんとした「有観客」試合をしていれば、入場料収入など莫大に稼げたのにもったいないと思ってしまう。

バンコクでの試合の様子を、記者として観戦していた作家の村上龍さんが報告記事を読売新聞に書いていた。自分の隣りで、北朝鮮のVIPがサッカー音痴丸出しの応援をしているのに腹が立ってきたという内容だったが、ベストセラー「半島を出よ」で北朝鮮コマンドが福岡を占拠するというストーリーを書いた村上氏である。北朝鮮のVIP観客に面が割れていたら、居心地は悪かっただろうなと思いつつ、報告を読んだ。

 それはともかく、めでたいことである。うれしいことである。前回のワールドカップ日本開催の時にも書いたことだが、この時期、普段は愛国的とは思えない若者たちが、一気に愛国者になり、「ニッポン、ニッポン」と絶叫する。これは、どこの国でも同じこと。サッカーにはそういった不思議な力があるということなのだろう。

 前回の日本開催の際には、宮城スタジアムでも3試合行われた。決勝リーグの対トルコ戦で日本が敗れてしまい、なぜか地元として申し訳ないという気持ちになった。あの時の雨中の試合を思い出してしまう。それにしても、世界のトップレベルの試合、国の威信を賭けた真剣勝負が我々の目の前で展開されているのを見守る興奮は、何ものにも代え難い。

 突然、欧州憲法条約の批准が、いくつかの国で反対に遭っていることを考える。ここまで順調にEUがヨーロッパの国々の団結力を示してきたし、ユーロという共通通貨も立派に通用しているし、国境などなくなってしまうという方向で進んできている。アメリカという超大国の独り勝ちを牽制する存在として、EUはますます強固な団結を示すべき時期であると思っていた。それが、ここに来て、少しブレーキがかかってしまっている。

 ワールドカップがこれに関係あるとは、これっぽっちも考えていない。それにしても、ドイツ大会への出場権を賭けて、フランスだ、イングランドだ、スペインだと熱狂している様子は、EUの団結とはかけ離れている。たかがサッカーであるが、愛国心が濃く出てくる機会であり、欧州憲法の批准問題はこの時期をはずしたら、ひょっとして違った結果になったかもしれない。もちろん、そんなことを本気で思っているわけではないが。

 ワールドカップでの各国代表には、他の国籍の選手は入れない。普段はJリーグの同じチームでやっている選手同士が、敵味方になる。それはそれでいい。よくわからないのは、監督は国籍に縛られないことである。今回の日本の監督はブラジルのジーコ、前回は、フランスのトルシエであった。全日本の監督は日本人でなければならないというルールでもいいような気がするが、そうでない理由がピンと来ていない。誰かに説明してもらいたい。ジーコ監督は、日本生活も長いのだから、もうちょっと日本語で話してくれてもいいんじゃないかなと思うのは、このルールとは別ではあるが、率直な気持ちである。

 ワールドカップの季節。快い愛国心に身を任せて、「ニッポン、ニッポン」と私も応援することにしよう。



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