![]() 月刊ガバナンス平成18年7月号 地方議会の定数削減 宮城県議会では、現在63名である議員定数を59に削減する案が検討中である。定数減となるのは過疎地の選挙区である。そこの議員からは、「地方の意見が反映されない議会となる」という反対論が提起される。仙台市では、定数増となる区が出てくる。これに対しては、政令市である仙台市選出の議員は、県議会では意味のある存在ではないので、むしろ削減すべきだという主張もなされる。 この議論には、大いに異議ありである。政治学の教科書には、「議員は選出された地区の代表ではなく、県議会なら県全体の住民の代表として機能すべきである」ということが書いてある。選挙区となっている地域の利害を代弁することは、恥ずかしそうに、そっとやるべきことであって、正々堂々たる議論でやられるのには、違和感を覚える。 同じく教科書には、「議会は唯一の立法機関」とある。宮城県条例を制定できるのは、宮城県議会のみである。知事には条例提案権はあっても、制定権はない。だとすれば、議会としてはもっと条例の制定に力を発揮すべきである。宮城県議会は、議員提案の条例制定数では、全国トップクラスであるが、それでもここ6年ほどで15本しかない。 提案条例の数だけではない。県議会は、条例制定を通じた政策立案能力をもっと磨く必要がある。議会内の会派は、議長選びや委員会ポスト獲得のためにあるのではない。政策集団なのだから、条例の立案に会派は主導的な役割を果たすべきである。その能力と実績を他会派と競い合うという形が望まれる。 予算編成についても、議会はもう少し突っ込んだ関与があってよい。編成権は知事にあるとしても、予算編成の過程において、議会としての政策提案がなされることは望ましいことである。新しい施策の提案だけでなく、既存予算について、「使命は果たした、時代に合わない」として、廃止、削減を提案するような議会であっていい。その際にも、政策集団としての会派は主体的に動くことになる。 条例制定にしても、予算提案にしても、議会として主体的に関わるには、政策スタッフの支えと、執行部側からの関連情報の提供は必須である。各地で問題になっている政務調査費は、本当に政務調査のために必要であるなら、むしろ増額すべきものと思う。政策スタッフを充実するのに財源が必要であるとしたら、その分を議員定数の削減で生み出すということにしてはどうか。そういう発想は、邪道なのだろうか。 議会が政策立案能力を高めることによって、議員の選ばれ方も、当然、変わってくる。地縁、血縁、同窓会、後援会、冠婚葬祭でまめなこと、「気さくな人柄」といった、政策能力と無関係のことで評価されるのではない。どんな条例の制定にどれだけ関わったか、新規施策の導入にどれだけ力を発揮したかといったことで、議員の力量が判断される。有権者はその基準によって議員に投票することがあたりまえにならなければならない。 議員定数の削減議論から、私としては、そんなところまで考えを広げてしまう。単に、「金がないから定数削減する」というのでは、あまりに寂しくはないか。
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