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厚生福祉 2005年3月4日


国民健康保険制度の「改正」


 国民健康保険の運営が変わる。被保険者には直接の影響はないので、一般的な関心は集めていない。市町村への調整交付金は、これまでは、国からだけ10%(給付費等への割合、以下同じ)出されていたが、これに県からの調整交付金7%が加わる。これに伴い、国の調整交付金は9%に減り、国からの定率負担も40%から34%に下がる。

 この「改正案」が、三位一体改革の政府対案として唐突に出されたことに、地方側としては不信感がいっぱいだった。私は社会保障審議会の医療保険部会の委員であり、そこでの議論では、国民健康保険については、平成20年に改革案をまとめるスケジュールと思っていた。なのに、平成17年度にこの「改正」を実施しようというのだから、唐突感はすこぶる大きい。

 「国保に県の関与が入るのだから、結果としてはいいではないか」とする見方がある。しかし、県の賛同も得られていない中で、こういう押し付けの形でやるのは良くない。「県に裁量権が付与されるのは、三位一体改革の趣旨に合う」という説明に至っては、地方の意向にまるで反している。地方側は「こういう形の負担金いじり、税源移譲だけはやらないでくれ」とあらかじめ申し上げていたことを、よもや知らないとは言わせない。

 県への裁量権付与であれば、国の調整交付金はゼロにするのが当然である。市町村側から見ても、調整交付金が国からと県からと二本でやってくるのは、何とも面妖なのではあるまいか。調整交付金の配分ルールが、国も県も似たりよったりなら、二本にする必要なし。食い違うのなら、戸惑いが残る。具体的なガイドラインは、一体、どうなるのかというのが、目下の懸念であろう。まさに、そのガイドラインの作成が、目の前の作業として待っている。「県の裁量」と言われて下げ渡された調整交付金の配分業務であるから、県の裁量でやらせていただく。「国としては、それでは困る」と今更言われても、それは聞こえませぬ。

 怒りがあらわな文章になってしまった。国民健康保険制度の在りようへの文句というよりは、もっぱら、「我々が真剣に進めてきた三位一体改革を、こんな形でおもちゃにするな」という怒りの方が大きいのである。


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