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毎日新聞 2003年10月25日
《’03秋 岐路に立つ

地方自治の旗手に聞く(3)
 浅野史郎・宮城県知事
【聞き手・高橋和宏】

争点、政権交代の是非


 今回の衆院選の争点は政権交代の是非だ。そもそも衆院選は総理大臣を間接的に選ぷ選挙なのだから、政権交代がありえない衆院選をやっているようでは、健全な民主主義社会とは言えない。

 その意味で、民主党と旧自由党の合併を評価する。以前の衆院選で、野党第一党だった旧社会党が垂れ幕に「3分の1の議席を獲得しよう」と書いていたことがあった。当時、社会党は候補者全員が当選しても過半数に足りなかった。我々は絶対に政権交代が起こらない選挙をやらされていた。今回、民主党は過半数の候補者を出している。やっと健全になった。

 「権力は腐敗する、絶対的権力は絶対的に腐敗する」という英国の歴史学者、J・E・アクトンの有名な言葉がある。政権交代しないことの問題点は「腐敗」「よどみ」「癒着」「胡散臭さ」などと表現されると思う。

 マニフェスト(政権公約)も今回の衆院選の大きな成果だ。三重県の北川正恭前知事が今春、作成を呼びかけてから半年ほど。よくここまで育ったと思う。もちろん、不十分な点も多いが、私は各政党とも良くやったと言いたい。

 マニフェストの内容のうち、地方分権に限定すると、民主党のものが意欲と内容において他党にまさっている。項目の第一番に掲げていることに象徴されている。分権は金と権限と人を国から地方に移行するという話ではない。それなら国と地方がコップの中で、同じものを分配するということでしかないからだ。

 霞が関の官僚は、私たち知事に任せれぱいい内政問題を補助金などを通じてやり、国益や国民のために本当に必要なことをやっていない。分権の議論というのは国の役人の仕事の内容、あり方を変えるということだ。

 いずれにしろ、政策の実現時期や財源などが明確にされたマニフェストは次の選挙で評価され、検証されるという点でも、個人的な約束にすぎない「公約」と異なるものだ。マニフェストがあって初めて、本当に政権を選択することが可能になる。

  私の一票はマニフェストの内容で投じる。


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