浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

 

Insight 第11号 2002.6.1から
(関西電力メールマガジンInsight  http://www.kepco.co.jp/insight/)

「『自治』への視点―自前のビジョンを描くために」

 関西経済は近頃元気がない、という話がある。しかし外から見ればそんなことはない。地盤沈下を嘆くのは、ある意味で「自虐的」で、また「他人事」としか捉えていないからだ。挙げ句に「それは関西人気質のせいだ」とか、訳知り顔に解説する者が出てくる。そこで納得してしまうと、それが自己増殖し、悪しき伝統として定着してしまう。訳知り顔の気質論など、世間話としては面白いが、良いものを生むはずがない。

  むしろ私は「褒める」ことが大事だと思っている。輝いている個人も会社も地域も褒める。何をするにも、まずは人材であり、人材は東京にばかりいるわけじゃない。人材を見つげて、褒めて、活躍してもらう。褒めないのは、良い面を発見しようとしていないから。そして足を引っ張る気持ちがあるから。それではもったいない。

  宮城県では職員の「年間MVP賞」を定め、めざましい活躍をした個人等を表彰し始める一方で、各部局のトップたちに「自慢話」をさせることにした。ところがみんな意外と自部局の活動で自慢し得ることを認識していない。つまり「知らない」。そして「的確に伝えられない」。

  自慢話というのは、プレゼンテーション能力が問われる。施策を「説明」することはできても、「自慢話」をするには、エピソードを入れるなど話し方に工夫や表現力が必要になる。加えて自慢話をする前後には「べンチマーク」―つまり46都道府県のライバルのパフォーマンスと比べ自分たちの相対的位置を知っておくことが必要だ。他との違いを意識して、べンチマークを上回るだけの付加価値をつけようという仕事の発想をしない限り、自慢はできない。

 ところが多くの場合、地方は「こなし仕事」をしがち。財源も権限も中央に握られてる結果でもあるが、補助金を貰って国が決めたとおリのことはしても、「新しいこと」には思考停止状態。とりわけ教育分野にその傾向が強かった。

  これは国民全体の意識の問題でもある。「教育の機会均等」というマジックワードの呪縛の中で、日本全体が公平・一律を非常に意識している。日本人は「足らざるを憂うるにあらずして均しからざるを憂う」。「国土の均衡ある発展」も同じだ。「機会均等」や「均衡ある発展」は確かに美しい言葉だが、裏を返せば嫉妬の構造があり、その害悪をもっと意識しないといけない。

  「自治」とは、一面では心の持ち方だが、システムの面も大きい。例えば宮城県は「福祉日本一」をめざしており、福祉分野は児童福祉や介護保険など「上乗せ横出し」認められ、多様な工夫ができる。しかし、教育自由化を狙った新学習指導要領がスタートする1年前まで、教育分野で独自性を出すことは、しくみ上許されていなかった。嫉妬の構造がシステムに反映され、日本全体の活力を奪ってきた。もっとビビッドに、各地域が特色ある発展をめざせば、日本全体が活性化する。

  今、各自治体は「違い」をつくろうとしている。意気込みはそれぞれあり、私も自慢話をつくろうと思っている。福祉もベッド数など量的な話でなく、重い障害を持つ人に光を当てようとか、時代を先取りした、他がやっていない施策を行いたい。宮城県がそれをやることが外に向けての「発進力」になるし、我々にとっても「誇り」になる。

  「違い」ということで忘れてならないのは、各地域の「固有文化」だ。とりわけ関西文化はインパクトが違うわけで、東京と同じものをほしい、ではなく、「違う」ことへ自負と誇りを持ちたい。それは日本全体にとっても望ましい。外国から見ても、日本が均質であるより、多様な地域がある方が魅力的だし国の力を感じる。だから歯を食いしばっても関西は「違い」を強調してほしい。比べる基準を変え、従来の勝ち負けとは別の物差しを持つことだ。

  それは日本だけでなく地域の力という点でも同様だ。地域は同質性中でやっていくと停滞する。元気な地域を見ると、よそ者が活躍している。異質性を排除するのではなく、大事にしていく。

  「違い」とは、special。地域づくりではスペシャルなものの発見を強調したい。「スペシャルエデュケーション」は障害児教育のことだが、日本では特殊教育と訳された。なぜ,特殊と訳すのか。「ベリースペシャルアーツ」、障害者芸術を、日本のNPOが「とっておきの芸術」と名づけたように、違いに価値を持たせる。関西、そして各地域 もナンバーワンよりオンリーワン。褒めるに値する、スペシャルな地域づくりをめざそう、 ということだ。


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