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毎日新聞2001年6月22日付け
インタビュー 記事から
小泉改革の行方 私はいいたい 1
経済財政基本方針

地方自律のチャンス

経済財政諮問会議が21日に取り、 まとめた経済財政運営の基本方針 (骨太の方針)は、公共事業や社 会保障のあり方、国と地方の税財 源問題など、戦後の日本社会を支 えてきたシステムの抜本的な見直 しの必要性を訴えている。日本は 果たして変わるのか?経済界や 地方自治体など、各界の識者にそ の評価を聞いた。

―税源移譲も含めた、国と地 方の税源配分の見直しが盛り込ま れた
◆非常にいいことだ。地方の自 主性が確立され、自治体同士で競 争すれば、行政サービスの水準も 上がる。そこから、納税者の自覚 も生まれてくる。

―行革も進むか。
◆宮城県で文化会館のようなも のを建てる案が出てきたとして、 本来なら「じゃあ、道路は、しば らく先送りになるよ」という政策 の優先順位を精査する議論が必要 で、それが政治だ。しかし、現行 制度では「国から補助金をもらい、 地方債を起債して将来的に国に交 付税で面倒をみてもらえばいい。、 だからどっちも作れ」という議論 になる。住民は「効率的な行政」 より「知事がうまく立ち回って国 から金を持ってこい」という姿勢 になりがちで、極めて不健全だ。

―税源移譲で、地方の財政は 自立できるか。
◆所得税(国税)を個人住民税 (地方税)に振り替え、消費税も 地方分の1%を半分程度に引き上 げればいい。税収は人口に比例す るから都市の取り分が増え、地方 は減る。格差が生じるが、交付税 で調整すればいい。交付税を減ら せという議論もあるが、簡素化し ても、財政調整の仕組みは必要で、 まず交付税の削減ありき、には反 対だ。

―税財源などで、都市と地方 が対立するのでは。
◆都市の稼ぎが地方に流れ損し ている、という。しかし、都市に 住む人のほとんどは1世代、2世 代前は地方に住んでいた。都市住 民も、いずれ定年などで職業生活 が終わる。「帰りなんいざ」と思・ ったときに「田園まさに荒れなん とす」となるのは、都市住民にと っても望ましくない。都会エゴと 地方エゴのぷつかり合いではな い。地方の美しさも残していかな けれぱならない。

―制度が変わると地方も変わ るか。
◆地方は、国と地方の税源のあ り方について、「入試制度を変え てくれ」という言い方をしてきた。 今の制度では補助金を一銭でも多 くもらうためには、踊りも踊るし、 なんでもする。現行制度では「武 士は食わねど高楊枝」という行動 を知事が取ることは、合理的でな いからだ。しかし、こういう仕組 みはよくない。国がこれを変える というのだから、地方にはいいチ ャンスだ。

―道路特定財源の見直しにつ いては。
◆道路整備はどの程度必要なの かという議論から始めるべきだ。 地方の道路は生命線で、まだ必要 な水準に達していない。ただ、一 般論としては、いつまでも特定財 源化を続けるのは健全ではなく、 時間を区切るべきだろう。


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