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浅野史郎メールマガジン バックナンバー

浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2005/1/4
http://www.asanoshiro.org/                  第174号
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> <<目次>> <

 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○年頭にあたって(浅野史郎)

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> [週刊コラム・走りながら考えた] <

 ○年頭にあたって(浅野史郎)

 新しい年になって初めてのメルマガである。毎週書くのは、実際、つらい。
1週間の単位では、情報が限られる。知事業が、「広く、浅く」の典型であ
ることとも無縁ではない。それでも、今年もメルマガは続けようと思う。こ
ういう形で自分に圧力をかけないと、考えるべきことを言語化しないままに、
時間だけが流れていってしまいそうだから。

 新年は、いつもよりいささか時間がある。昨年もそうだったが、新聞各紙
をじっくり読むだけの余裕があった。特に、社説を読み比べてみたら、それ
が結構面白い。共通しているのが、「戦後60年」ということ。干支が一巡
りして、人間で言えば還暦ということに重大な意味を結び付けているようで
ある。論理的には、60年にはほとんど意味がない。それはわかっているが、
還暦に引っ掛けて、「戦後」をじっくり考えてみようということなのだろう。

 地元紙の河北新報の社説は、そのものずばりの「戦後は戦前」というタイ
トルをつけた。そこでは、戦後の新憲法を高く評価している。戦前の植民地
建設・軍部の専横・国民生活の疲弊に対置させて、平和・民主主義・豊かな
暮らしを戦後の日本の像としてあげつつ、それらをもたらしたのは、「制定
の手続きはともかくとして」、主権在民・戦争放棄・基本的人権の尊重を三
本柱にする憲法の精神であったとしている。

 特に重要なのが、第九条の戦争放棄。自民党の改憲案では、集団的自衛権
を持つ自衛軍、国際貢献のための武力行使も認めている。河北新報の社説が
心配するのは、隣国が軍国日本の再来と恐れ、自国の軍備拡張に走り、日本
もそれに対抗すること。つまりは、果てしない軍備拡張競争、気が付けば、
「戦後は戦前」という構図。この社説の標題は「わが国が誇れるものとは何」
というものである。憲法第9条こそが、日本が世界に誇る財産という声に耳
を傾けたいと主張している。

 この主張と正対するのが、読売新聞の社説、「『脱戦後』国家戦略を構築
せよ――対応を誤れば日本は衰退する」である。憲法前文をわざわざ「GH
Qが作成した」と言いつつ、「平和を愛する諸国民」を信頼しさえすれば国
の安全は保てる趣旨になっていると解説する。そして、「戦力放棄」の第9
条第2項を、世界の実像とはかかわりなく一国平和主義が貫徹できるかのよ
うな、「戦後」的幻想と評している。この項は、「首相および政治全体が、
『戦後民主主義』的な軍事アレルギー感覚と一線を画す時である」と結ばれ
ている。河北新報の社説とは、方向性を全く異にしていることに驚く。

 私として、かなり危機感を持って読んだのが、米軍再編の一環としてのア
ジア・太平洋地域における即応展開能力の拡充について言及している部分で
ある。それに続いて、日米協力・相互補完関係を展望すれば、集団的自衛権
を「行使」するさまざまなケースを想定せざるを得ないと論を進めている。
「行使」にカギ括弧がついているが、この社説では、この「行使」は、憲法
を改正するまでもなく、首相の決断による憲法解釈の変更次第で可能になる
と言いたいらしい。

 米軍再編の問題は、実は、大問題である。日米安全保障条約における「極
東の範囲」に関わる。私事であるが、60年安保改正の際の国会論議で、社
会党の横路節雄代議士が、この「極東の範囲」について、岸信介総理大臣、
藤山愛一郎外務大臣を相手にして、火の出るような論戦を展開している様子
をテレビ中継(あるいは録画)で見たのを鮮明に覚えている。試しに、YA
HOOの検索で調べたら、10秒で1960年2月8日、衆議院予算委員会
の議事録が出てきた。改めて読んでみて、当時の論戦の興奮が甦ってきたよ
うな思いである。さらに私事を言えば、この横路節雄代議士は、20年前に
私が北海道庁で仕事をした時の知事、現横路孝弘衆議院議員の御父君である。
 話がそれこそ横道にそれたが、米軍再編によって、いかなる任務の展開が 期待される米軍基地が日本に置かれることになるのか。日米安保条約では、 極東における安全に関わる行動だけに限定されている。それが、地理的にな し崩し的に広がることは、大きな問題である。少なくとも、日本国民に対し て明確な説明を行い、理解を得ることが必要である。決してなし崩しでなさ れてはならない。  なし崩しということで言えば、この問題に限らず、集団的自衛権の発動を 首相の憲法解釈でやっていいいというのは、これまた大きな問題である。こ のことは、このメルマガの第148号(2004.7.6)「イラク多国籍 軍への自衛隊参加」でも書いた。繰り返せば、その時の状況に応じて変幻自 在に解釈を変えられるような憲法を持つ国は、諸外国からの信頼を得られる だろうかということである。これだけ大事な問題は、憲法解釈問題ではなく て、憲法改正問題になるべきものであろう。  そんなこんなで、元旦の新聞の社説には、いろいろなことを考えさせられ た。字数の都合で、ついでのようになってしまうが、朝日新聞の同日の社説 は、「アジアに夢を追い求め」である。日中関係、日韓関係にダイナミック なプラス思考を持ちこんで、アジアの実情にあった緩やかな共同体の実現に 向けて、まずは夢を追い求めたいという論調である。こういった前向きな関 係の構築に向けての大きな前進がなされる、新しい年の始まりであるだけに、 夢を追い求めるのはいいことのように思える。 ____________________________________________________________________ > [読者のみなさんから] <  ○メルマガ読者、みなさまからのご感想などを掲載しております。  今週はお休みです。みなさんのご感想をお待ちしております。 ※お寄せいただくご意見は、当方の判断で掲載させていただく場合がありま  す。基本的には削除、変更なしといたします。掲載不可のご意見の場合は、  投稿の際にその旨明記していただくと助かります。また、ペンネームでの  掲載をご希望の方もその旨を明記いただきますよう、お願いいたします。  ご感想・ご意見は mmz@asanoshiro.org まで ____________________________________________________________________ > [お知らせ] <  ○メルマガ登録者募集中です。  多くの皆様に浅野史郎の「生」の声を届けたいと思っております。  お近くにご紹介いただければ幸いです。  登録ページはこちらです。  http://www.asanoshiro.org/news/mmz.htm ____________________________________________________________________ > [編集後記] <  何とか風邪も治りました。どうやら、私は一年の疲れがどっと来るタイプ らしく、毎年この時期は体調が優れません。ということで、年頭のスタート ダッシュが他人よりちょっと遅くれます。  遅れた分を取り返そうと、今日は仕事場の整理を。明日から、バンバン仕 事しますよ。    それでは、来週の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)  皆さんのご意見、ご感想をお待ちしております。      メールアドレス mmz@asanoshiro.org ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 浅野史郎メールマガジン http://www.asanoshiro.org/ 発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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