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浅野史郎メールマガジン バックナンバー

浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2004/10/19
http://www.asanoshiro.org/                  第163号
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> <<目次>> <

 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「『特殊教育』の見直し」(浅野史郎)

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 ○「『特殊教育』の見直し」(浅野史郎)

 「特殊教育」とカギ括弧で書いたのは、特殊教育そのものの見直しではな
く、用語の見直しだからである。中央教育審議会の特別委員会が、学校教育
法などで半世紀にわたって使われてきた「特殊教育」という表現を改めるよ
う求める中間報告をまとめた。

 「特殊教育」は障害のある児童生徒をきめ細かく指導するため、盲・ろう・
養護学校や「特殊学級」で行われてきた。同委員会は「特別支援教育の理念
を定着させるためにも、法律の用語を改める必要がある」と提言。言い換え
語の選定は文科省が行うが、「特殊」を「特別支援」に改める案などが考え
られている。 

 昭和60年の4月、私は北海道庁の福祉課長に赴任した。障害福祉を担当
する部署である。就任直後、千歳市で開催された「全道特殊教育研究大会」
に来賓として招かれた。「皆さんは、自分たちの携わっている教育が『特殊
教育』と呼ばれることに違和感は感じないのでしょうか」という挨拶をした
のは、若気の至りと言うべきものだろう。近くにいた親切な人が、「浅野さ
ん、これは英語のSpecial Education の和訳なんですよ」と教えてくれた。
「なるほど」と思った後に、「待てよ」と思い直した。

 Special Education なら、「特別教育」と訳すべきで、「特殊」はおか
しいのではないだろうか。Special Dinner は「特殊なお料理」ではなく、
「特別料理」だろうし、Special Guest は「特殊なお客様」ではなく、
「特別ゲスト」のはず。意味が全く違ってしまう。当時和訳した人に悪意が
あったのではないかと疑うほどの、「誤訳」である。そんなエピソードを、
仙台市で開催された「第27回全国障害者技能競技大会(アビリンピック)」
で、「障害者が地域の中で生活するために」というタイトルの特別講演
(「特殊講演」ではない)の中で紹介したら、偶然にも、その翌日の新聞に
冒頭で紹介した報道がなされた。

 障害者による芸術際として、ケネディ大統領の妹さんが始めた
Very Special Arts は、大阪の城みさをさん達によって、「とっておきの芸
術祭」と訳された。ケネディ大統領のもう一人の妹さんが始めたSpecial 
Olympics は、知的障害者によるスポーツの祭典である。「とっておき」と
「特殊」、同じSpecial の訳語として、何たる違いであろう。

 用語の問題だけでない。そもそも障害児の義務教育が、本当の意味で「義
務」になったのは、昭和54年度である。まだ25年しか経っていない。そ
れまでは、障害児には「就学猶予」という名の下に、義務教育に通わせなく
てもよいという扱いがなされていた。差別と言えば差別である。現在は、障
害のある子どもには、障害の状態に合わせたきめの細かい教育を行うという
ことで、養護学校での「特殊」教育が用意されている。これは差別ではない
としても、区別とは言える。目の前に地域の学校があるのに、通学バスで
30分、1時間かけて養護学校に通うという不便に耐えなければならないの
だから、この面では、やはり差別と見るべきかもしれない。

 統合教育については、第53号(2002.9.10)で詳しく書いた。
「みやぎ知的障害者施設解体宣言」を出した宮城県としては、障害者が地域
で生活できる条件について真剣に考えなければならない。そのような中で、
障害児と健常児が同じクラスで学ぶ統合教育を目指すことは、施策として当
然の方向に思える。そのことはそのこととして、ここでは、改めて用語の問
題について深く考える必要性を感じる。

 そもそもが、「障害者」の用語は、当事者を大いに傷つける表現である。
「障」は「差し障り」であり、その後に「害」が続く。ただ、なかなか言い
換えがむずかしい。Challenged(チャレンジド)という言い方も使われるよ
うになっているが、なかなか普及しない。それに横文字であるのも困る。

 宮城県では、障害者差別撤廃条例(仮称)の制定を検討中である。中心に
なるのは、差別により実際の被害が生じている、生じるおそれがあるケース
の救済をどうするかということとなる。救済機関の設置という形で、実際の
ケースで有効に働くような条例にしなければ意味がないという思いがある。
したがって、用語の問題が中心になるというものではないのだが、条例は条
例として、別途考えられなければならない。

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> [読者のみなさんから] <

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 <倉島さまから:“日本の安全保障と地方政府”について>

 米軍の再編成に関連して、小泉首相は沖縄に展開している米軍基地を、海
外及び国内に分散して沖縄の過重負担解消の実現を意図している発言をした。

 具体的にはどの部隊を国内はOO県、海外には何処と言う名指しこそまだ
無いが、実際は米国はワシントン州の司令部を日本に移転して、世界的即応
体制に備えたいと言う報道もあり、日本政府には既に具体的な内示がされて
いる筈である。

 小泉首相の政府関係者への指示にも、関連する地方自治体の応諾を促す言
葉もある。これは前々太田前沖縄県知事が「基地が日米安保に必要欠くべか
らざるものなら、本土にも公平に背負ってもらいたい」と言ってきたこと其
のものである。

 しかし、直ちに候補地?からあらゆる反対運動が噴出することもまた覚悟
しなければなるまいが、首相が過去の一連の改革に於いて見せたような「ワ
ンフレーズ・丸投げ・妥協による中途半端な結果」に終わらせる訳には行く
まい。今までは国内問題、この米軍再編成は単に日米安保に留まらず、世界
戦略として展開するからには米国も日本に合わせて何時までものんびりとは
待っては居まい、そのときに首相がドンナ決断を下すかによって日本の運命
が決定される。

 国民にわかりやすい説明が絶対条件となる。一度基地が稼動し始めれば撤
去などできなくなる、周辺住民は何らかの被害を蒙り続けることを念頭に置
いて米軍との折衝に当たってもらいたい。



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> [編集後記] <

 Specialを特殊と訳すのか、特別と訳すのか。知事が仰るように「特殊ゲス
ト」と「特別ゲスト」では雲泥の差です。

 いろいろな「特別」を「特殊」と置き換えてみたら、激しく意味が変わる
なぁと、いろいろ想像してしまいました。「特殊なプレゼント」「特殊賞」
などなど。

 「特殊」から素晴らしい言葉への言い換えが進むことを期待しています。
 
 それでは、来週の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)

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発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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