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浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2004/10/12
http://www.asanoshiro.org/                  第162号
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> <<目次>> <

 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「日本の安全保障と地方政府」(浅野史郎)

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 ○「日本の安全保障と地方政府」(浅野史郎)

 三位一体改革に関する議論が、いよいよ正念場を迎えている。我々地方側
から言わせてもらえば、これは地方財政自立改革である。地方のことは地方
が考えるし、施策の実施は自前の財源で賄い、補助金・負担金に縛られるこ
とはなくするということ。国としては、地方のことは地方に大幅に任せて、
国でしかできないことに専心して欲しい。それこそが、国際社会の中で、日
本が確固たる役割を果す所以である。

 こういった観点から言えば、「国でしかできないこと」の最たるものは、
日本の安全保障の問題である。まさに、国の専権事項というべきものだろう。
地方としては、あまり口を出すべきものではないようにも思われるが、最近
の動きを見ると、そうもいかない。

 一つが、イラク問題である。イラク人道復興支援のために、宮城県内の自
衛隊駐屯地からも人員が派遣されることになる。派遣される自衛隊員は、自
らの任務に誇りと自負を持って臨んで欲しい。そのためには、イラク派遣の
しっかりとした位置付けを理解しておくことが前提になる。

 イラク人道派遣支援が必要となった、その原点、つまり、イラク戦争の大
義がどうであったかということに遡っての議論が、今また必要になっている
のではないだろうか。具体的には、大量破壊兵器の問題である。

 イラクの大量破壊兵器について、「いかなる備蓄も発見されておらず、この
先も発見されることはないだろう」と9月13日、パウエル米国務長官が、
米上院政府活動委員会の公聴会で証言した。日本では、この件について、政
府の見解は明確になっていない。そもそも、「イラクが大量破壊兵器を保有
している」という情報を、わが国はどういった根拠で、どういった手段で入
手したのか、それがまちがいであったとすれば、それはいかなる理由による
のか。この説明がない。

 日本政府も、安全保障に関して、独自の情報収集活動を行っている。イラ
ク情勢の分析についても、相当の人員と予算を投入して行っているはずであ
る。その体制がどのように機能したのか、しなかったのか。その点も明らか
にされていない。

 イラクへの武力行使の大義は何であったのかが揺らいでしまうと、その後
の人道復興支援事業の位置付けもあいまいになりはしないか。派遣される自
衛隊員のためにも、政府としては明確な説明が求められるところであると思
う。報復テロの可能性なども考えると、有事法制ができた現状では、地方自
治体としても、「安全保障の問題は、国で考えてもらえばそれで結構」とだ
けでは済まない状況である。

 地方として関心を持って見守っていかなければならないもう一つの問題が、
米軍再編の動きである。新聞によると、アメリカ政府は、ワシントン州の陸
軍第1軍団司令部を日本に移すなど、陸海空軍と海兵隊の司令部を日本に集
める構想を持っている。日本に置く司令部には、中東、中央アジアなどにも
展開する統合部隊の指揮機能を持たせる計画であることも、外務省に対して
は説明済みとのことである。

 日米安全保障条約では、米軍の在日基地を使用した活動範囲は「極東まで」
と定められているので、アメリカ政府による米軍再編計画はこのことと抵触
してしまう。具体的な計画の一つとしては、アメリカのワシントン州にある
陸軍第1軍団司令部を神奈川県のキャンプ座間に移転することが考えられて
いる。早速に、10月8日、神奈川県の松沢成文知事は「政府は十分に情報
を提供したうえで、関係自治体の意向を聞き、それを踏まえて米側と交渉し
てほしい」と山崎拓首相補佐官に要望した。移転地に擬せられた自治体の長
としては、当然の懸念である。

 在日米軍の駐留費用の相当部分は、日本が負担している。「思いやり予算」
と呼ばれている部分である。他の国??に駐留する米軍の費用は、ほとんど米国
持ちであることから、司令部を日本に置いたほうが財政上は有利と米国が考
えているのかどうか。いずれにしても、移転候補地の自治体としては、由々
しき問題にならざるを得ない。

 米軍基地の大半が存在する沖縄の問題も、解決されなければならない。米
軍ヘリが、8月13日、沖縄県宜野湾市の沖縄国際大学構内に墜落した事故
で、事故後の県警と消防の現場検証を米軍が拒否した。このことに対しては、
沖縄県民の怒りの声は大きく、稲嶺知事も政府に対して、原因究明までの飛
行停止と、日米地位協定の見直しを要請した。さらに、10月4日には、嘉
手納基地から発進した米軍F15戦闘機が、空中接触事故を起こした。

 こういった状況の中で、小泉首相は、沖縄の米軍基地について「国内移転、
国外移転の両方がある」と言及するに至っている。国内移転ということにな
れば、国内のどこにという議論が出てくる。その際には、当然ながら、米軍
基地の必要性、日米地位協定のありかたといった問題に触れざるを得ない。
アメリカ依存一辺倒の外交のあり方、そして日本の安全保障をどうしていく
か、そういったことについて、地方自治体としてもモノ申すべき事態が出て
くることになるだろう。完全に「国任せ」というわけにはいかないことは、
自覚すべきものである。

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> [編集後記] <

 仙台に新球団が生まれるとなると、気になるのがそのチーム名。日本のプ
ロ野球チームのほとんどは、企業名+カタカナ。カタカナ部分は動物の名前。

 その慣例?にしたがうと、動物名がつくのでしょうか?
 東北・宮城・仙台にぴったりの動物って?
 
 それでは、来週の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)

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発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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