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浅野史郎メールマガジン バックナンバー

浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━2004/5/11
http://www.asanoshiro.org/                  第140号
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> <<目次>> <

 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「みやぎの「統合教育」その後」(浅野史郎)

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 ○「みやぎの「統合教育」その後」(浅野史郎)

 2002年9月10日、メルマガ第53号で「統合教育」を書いた。その
時には、あまりはっきり書かなかったが、分離教育のどこが問題なのか、な
ぜ統合教育を目指すべきなのか、少し明確に上げてみれば、次のようなこと
である。

 「障害がある子どもは養護学校に行くべきもの」と決めつけてしまっていい
のだろうか。目の前に地域の学校があるのに、30分、1時間かけてスクー
ルバスに乗って遠くの養護学校に通う。放課後や土日に地域に戻ってきても、
近所の子供達の中にクラスメートはいない。逆に、地域の学校のクラスには、
障害児は一人もいない。「健常児」にとって、学校の中では「障害児」に日
常的に接する機会はない。

 一方で、養護学校での教育のほうがいいという反論もある。「反論」とい
うよりも、これが通説であり、だからこそ宮城県においても障害児について
は、養護学校での教育が主流になっている。障害の程度に合わせて、少人数
指導で先生の目が届く形でのキメ細かな教育ができるのは、養護学校におい
てのみ可能である。障害児の親で、自分の子どもを普通学級で学ばせたいと
希望しているのは、養護学校の利点を理解していない無知か、普通学級のほ
うが聞こえがいいという親の見栄か、流行に流されてしまう軽薄さかに帰せ
られる。

 こういった「反論」に対する再反論もある。「養護学校でのそんなにいい
扱いが、実社会に出たあとも保障されるのならいいが、そうはなっていない」
という障害児の母親の言葉に、ハッとさせられた。だからこそ、早い時期か
ら、障害児も健常児と一緒の場で学ぶべきであるという話には、とても説得
力があった。

 障害児教育だけ切り離して考えるのではなしに、そもそも教育とは何かに
ついて、真剣に考え抜かなければならない。いろいろな資質の子どもが、同
じ場で学び合ってはじめて育っていくものがある。できる子はできる子だけ
集めて学ばせるのもおかしいし、障害児は障害児とだけ一緒に教育するのも、
同様に不自然である。真の教育につながる道ではない。

 選択肢がないことも問題である。養護学校ではなく、普通学級を選んだ障
害児には、クラスで特別に指導にあたる補助教員は配置されていない。適切
な補助教員がいれば、障害児本人は必要な助力を得られるし、先生もかなり
助かる。ということで、宮城県では、平成15年度から、障害児を受け入れ
た普通学級に補助教員を配置する施策をモデル的に開始した。そのうちの一
つ、岩沼市立岩沼西小学校を先日訪ねてみた。

 知的発達障害が有るA君が在籍するクラス。私が行った時間は、補助教員
プラス養護学校からの指導教員の二人による授業だった。こういった以外の
時間は、みんなと一緒の教室での授業である。すごろくを使ったゲームの中
で、数字について学んでいるようであった。

 A君の他にも別のクラスに在籍している知的障害の有るB君の授業も参観
したが、こちらは補助教員が付き添って、クラスメートと一緒の国語の時間。
他のクラスメートは、B君を特に意識せずにいるようであった。現場では、
特に何の問題もなく、普通学級での障害児受け入れは円滑に進んでいること
が確認できた。

 新鮮な驚きは、石巻市立湊小学校のCさんである。彼女は、「歩けない、
吸引が必要、話せない」という、かなり重度の障害を有している。補助教員
の他に、週3回、9時から13時まで看護師が派遣されている。こんな重度
障害のCさんが、うまく普通学校で受け入れられるだろうかということが心
配ではあった。「驚き」と書いたのは、それが杞憂に過ぎなかったことがわ
かったから。Cさんのお母さんの近況報告がそのことを示している。

 「Cも、昨年一年間でたくさんのことを学びました。何よりも、学校へ通う
ことの本人の強い意欲が感じられます。もしかしたら、勉強より大好きなお
友達と遊ぶことを期待しているのかもしれません。他の児童が感じとってく
れたこととして、歩けない、話せない、吸引が必要ということを「病気じゃ
なく、これがCちゃんの普通の姿」という理解が進んでいます」。そして、
校長、教頭、協力学級、担任が期待以上の取組みをしてくれていることに感
謝をしている。

 ダウン症の息子さんである和樹君を普通学級に入れた小林厚子さんは、石
巻での統合教育の実践者であり、先駆者である。その小林さんの報告によれ
ば、Cさんの実践に刺激されて、今年石巻ではダウン症児2名、LD(学習
障害)児1名が普通学級を希望し、円滑に入学することができたとのこと。
モデル事業の対象は、限られているが、実践面では大きく前進しつつあるこ
とに勇気づけられる。

 統合教育への歩みも、「みやぎ知的障害者施設解体宣言」と同じようなこ
となのかもしれないと考えつつある。統合教育のモデル事業の対象は、予算
の制限もあり限られている。それを考えれば、「宮城県で統合教育を進めま
す」といっても、実態はなかなかついていけない。だったら宣言しないほう
がいいのかと問われれば、そうはいかない。進むべき方向を示しながら、時
間はかかっても、反対論はあったとしても、議論しながら、悩みながら、一
歩一歩、方向を間違えずに進んでいく。そうやってこそ、新しい地平線は開
けていくものである。

 和樹君は、普通学級から普通高校に進学して現在は最高学年。昨年度の成
績を教えてもらった。個人情報なので、詳しいことは書けないが、とても素
晴らしい成績である。来春は大学進学を考えているという。誇り高きパイオ
ニアとして、和樹君には心からの声援を送りたい。

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> [読者のみなさんから] <

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 <千葉さまから>

> そもそも、日曜日が休みというのは、キリスト教の安息日が起源なのだ
> から、仏教国では、大安とか仏滅が休みということにしてもいいのでは
> ないか。 

たいへんおもしろい考え方です。
どっかで話の種に使わせて貰います。



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> [編集後記] <

 気がついたら、今週末は仙台青葉まつりが開催されます。確かに、新緑が
まぶしい季節となりました。

 それでは、来週の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)

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発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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