宮城県知事浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

浅野史郎メールマガジン バックナンバー

浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2004/3/9
http://www.asanoshiro.org/                  第131号
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
> <<目次>> <

 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「続続・みやぎ知的障害者施設解体宣言」(浅野史郎)

 [読者のみなさんから]
  ○メルマガ読者、みなさまからのご感想などを掲載しております。

 [お知らせ]
  ○メルマガ登録者募集中です。

____________________________________________________________________
> [週刊コラム・走りながら考えた] <

 ○「続続・みやぎ知的障害者施設解体宣言」(浅野史郎)

 「解体宣言」には、各方面からいろいろな反響があったので、それらに対
して明確にしておくべきこともあると思い、もう1回分このテーマで書くこ
とにした。

 前回紹介した反対意見は、極端なものばかりであったので、それに対して
はあえて反論する必要がない。また、そんな気持ちにもならない。「狂獣を
放し飼いにするつもりですか」といった種類の「意見」には、一体どう反応
すればいいのだろう。読者の何人かからは、「反対意見を読んで、暗澹たる
思いになる」といった趣旨のコメントをいただいた。

 そういった極端なものではない反対論は、だいたい予想がつくものでは
あった。障害者の家族側からは、次のようなもの。まずは、地域での支援態
勢を確立するのが先であって、解体を言い出すのは早過ぎる。軽度、中度の
障害の人なら地域に出られるとしても、重度だったり行動障害がある人、医
療的ケアを必要とする人たちは施設以外での生活は無理だ。家庭に戻されて
もとても支えきれない。

 施設側からの反論は、あまり目にしなかったことが意外であったが、その
ことは解体宣言賛成を意味するものではない。自分たちの仕事の誇りを傷つ
けられたという思いもあったはずだし、そんなこと言っても入所施設は絶対
に必要だという確信からの反論もあるだろう。

 まずは、平成14年11月の宮城県福祉事業団による「船形コロニー解体
宣言」で強調されたことを繰り返したい。つまり、障害者を地域に戻すとい
うのは、親元に返すというのではないこと、障害者にとっては、施設での生
活よりも豊かで安心できる生活環境を整えること、このことを明確にした上
での解体宣言である。今回の「みやぎ知的障害者施設解体宣言」で前提とさ
れていることも同様である。親が子どもを入所施設に入れるのは、自分たち
では支えきれないということが契機になっている。施設入所の時と比べて親
は高齢化し、障害を持つ子どもを支える力は確実に落ちている。その親元に
返すということが、現実的であるはずがない。だから、そういった方向は絶
対に取れないし、取ってはならないのである。

 施設解体をすぐにやるのではない。いつまでに解体を完了するかといった
計画も示していない。当然ながら、地域生活支援のシステムがしっかりでき
ているところに、障害者が施設から移行していくのが先になる。それも無理
矢理ではない。地域での生活のほうが、その人にとって豊かで安心できるも
のであると、本人にも周りにも思えるからこそ地域生活に移行していくので
ある。その条件を、みんなで作っていきましょうということ。それには時間
がかかるかもしれないが、行政も力を尽くすから、その方向に努力をしてい
きましょうという宣言でもある。

 「時間がかかる」というのは、本人の準備が整うのにも時間がかかるとい
うことでもある。施設から地域生活への移行には、準備期間がいる。施設内
での、又は、施設職員の関わりの中での自活訓練というステップが必要であ
る。そもそもが、知的障害者の入所更生施設というのは、「更生」、つまり、
リハビリテーションをするための施設であるから、そこで社会復帰への訓練
が主役を演じなければならないのだが、実際は生活施設、しかも終生の生活
施設になってしまっている。これも、問題。自活訓練をし、グループホーム
でのおためしの生活があって、徐々に段階を踏んで本格的な地域生活に入っ
ていく。そういう時間と段階が必要なことは、言うまでもないことである。

 「解体宣言」の最後の部分でも書いたが、解体ができるようになるまでに
は時間がかかるのである。だからといって、どっちの方向に進んでいくかを
示すことの重要さはなくならない。行政マンは、どうしても、百点満点で
60点である時に、40点の減点ということが気になってしまうのだが、そ
うではなくて、ここまで獲得した60点に1点ずつ加えていこうという発想
も必要である。知的障害者の地域生活移行に関しての得点表では、60点ど
ころか35点ぐらいしか獲得できていないのかもしれない。しかし、そこで
恥ずかしがらずに、「この科目で100点を目指すのだ」と宣言することも
必要ではないか。

 百点満点のたとえ話がぴったりかどうかわからないが、「地域での条件整
備ができなければ、障害者を施設から出せるはずがない」という「正論」も、
下手をすると「卵が先か、ニワトリが先か」の議論になりかねない。地域で
生活をする障害者の実例を増やさなければ、障害者本人、その家族にとって
のモデルができないし、世の中の人たちの理解も広がらないということは、
確かにある。ここで考慮に入れるべきことは、知的障害者の人生だって有限
であるということ。施設に入って30年という人にとって、残された人生の
期間は長くはない。その意味では、急がなければならないという側面もある。

 ともあれ、「解体宣言」を契機に、議論が巻き起こったことは、大きな成
果ではあると思っている。途中段階で、誤解に基づく混乱があったり、予想
もしない障害があったりもするだろう。しかし、障害者福祉の仕事のやりか
たを、これまでの延長線上で漫然と続けていくわけにはいかなくなったとい
うことについては、多くの人たちが、イヤでも応でも認識せざるを得なく
なったことは、大きな進歩であると確信する。

____________________________________________________________________
> [読者のみなさんから] < 

 ○メルマガ読者、みなさまからのご感想などを掲載しております。

 当メルマガには、皆さんからたくさんのご感想をいただいております。そ
の皆さんの声の一部を掲載しております。


 <清水さまから>

 今日のメルマガ(編集補足:第128号のこと)の内容は、選挙を経験した人
は少なからず感じている事だと思います。時代に合わない又理解しにくい規
則も多くあり、この国の不可思議さを感じます。

 市議会議員を目指し2回挑戦しましたが、甲州選挙の特にひどい当地のあ
からさまな地縁、血縁、金品による買収合戦にいかんとも太刀打ちできず、
民度の低さにただただむなしさを感じております。

 5年前より「市川房枝政治参画センター」で学ばさせていただいておりま
すが、市川先生の理想選挙で戦うにはあまりにも厳しい現状に、時には投げ
出したくなることもありますが、だからこそこの現状を次世代に引き継がせ
ない為にもあきらめずに発信し続け、挑戦し続けねばと我が身に叱咤激励し
ております。

 候補者、有権者ともに、選挙はボーナス付きのお祭りで、政治と生活が一
体であることなどほとんど感じておりません。むしろクリーン選挙を批判さ
れてしまう状況です。選挙違反は犯罪であることを、おそらく意識していな
いのではないと思われます。

 今回の衆議員選挙において、選挙違反で数名の逮捕者が出ましたが、「公
職選挙法」「連座制」の文字に、まだちゃんとこの言葉が生きているんだ、
と嬉しくなりました。当地では心ある住民がいくら警察に訴えようが、「証
拠を持ってこい、選挙違反では誰も被害者がいないから調査しづらい、政治
家は誰でもたたけば埃が出る物だ」と取り締まる意識などありません。

 国政選挙で地方議員も逮捕されましたが、地方選挙こそしっかり取り締ま
るべきです。国政も地方も選挙民は同じであり、地方議員の資質が国政選挙
に連動していますので、この構図を断ち切らない限りこの国の政治の質がレ
ベルアップしないと思います。



 本日は、お一人の感想を掲載いたしました。ご意見、ありがとうございま
した。

※お寄せいただくご意見は、当方の判断で掲載させていただく場合がありま
 す。基本的には削除、変更なしといたします。掲載不可のご意見の場合は、
 投稿の際にその旨明記していただくと助かります。また、ペンネームでの
 掲載をご希望の方もその旨を明記いただきますよう、お願いいたします。

 ご感想・ご意見は mmz@asanoshiro.org まで

____________________________________________________________________

> [お知らせ] <

 ○メルマガ登録者募集中です。

 多くの皆様に浅野史郎の「生」の声を届けたいと思っております。
 お近くにご紹介いただければ幸いです。

 登録ページはこちらです。
 http://www.asanoshiro.org/news/mmz.htm

____________________________________________________________________
> [編集後記] <

 前回発行のメールマガジン第130号において、TBSラジオ番組「アクセス」
のホームページより、無断で転用した部分がございました。関係者の方々に
はご迷惑をおかけいたしましたことをお詫び申し上げます。

 それでは、来週の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)

                        皆さんのご意見、ご感想をお待ちしております。
                            メールアドレス mmz@asanoshiro.org

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
浅野史郎メールマガジン http://www.asanoshiro.org/
発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 


TOP][NEWS][日記][メルマガ][記事][連載][プロフィール][著作][夢ネットワーク][リンク

(c)浅野史郎・夢ネットワーク mailto:yumenet@asanoshiro.org