宮城県知事浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

浅野史郎メールマガジン バックナンバー

浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━2004/2/10
http://www.asanoshiro.org/                  第127号
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
> <<目次>> <

 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「社会保障改革の行方」(浅野史郎)

 [読者のみなさんから]
  ○メルマガ読者、みなさまからのご感想などを掲載しております。

 [お知らせ]
  ○メルマガ登録者募集中です。

____________________________________________________________________
> [週刊コラム・走りながら考えた] <

 ○「社会保障改革の行方」(浅野史郎)

 わが国の社会保障は、これからどうなって行くのか。人間の作るシステム
であるから、「どうしていくべきなのか」と問うべきなのであろう。

 私は、全国知事会の社会文教調査委員会委員長の役柄から、国の社会保障
審議会の委員を拝命している。審議会にはスケジュールを差し繰って、ほぼ
毎回出席を確保している。出席すれば、必ずなにがしかの発言はすることに
している。その立場からは、問われている当人なのかもしれないが、なにせ
問題は大き過ぎる気がしないでもない。

 社会保障と言えば、年金、医療保険、介護保険、福祉施策が含まれる。こ
れらは、厚生労働省の中でも、旧厚生省の所管である。雇用の問題は、社会
保障と密接に関連することではあるが、雇用保険をはじめとして旧労働省の
所管であることから、社会保障の領域では、「担当外」といった感じになる
のは、歴史的には仕方がない。ただ、いつまでもそういったわけにはいかな
いことは、関係者の誰もが認識している。

 最近特に関心が高まっているのが、年金制度である。昭和五十年代の後半、
私は厚生省年金局に4年間在籍して、基礎年金の創設を含む「昭和60年改
正」(施行は昭和61年)に関わった。その時の経験からも、「年金は世代
と世代の助け合い」、「絶対つぶさないのが年金制度」、「国民の制度への
信頼感がすべて」といったことを頭に叩き込まれている。だから、「どう
やったら年金で損をしないのか」とか、「年金はどうせつぶれるから加入し
ない」とか、「年金だけで生活できるだけ給付せよ」といった「議論」を聞
くと、違和感を禁じ得なくなる。

 年金給付を受ける側の生活水準が、現役世代として働いて税金負担、保険
料負担をしている側の生活水準を上回るということになったときに、誰が納
得づくで負担を続けるだろうか。そもそも、制度設計として破綻せざるを得
ない。その意味では、年金制度の給付と負担は、落ち着くべきところに落ち
着くと言うことができる。

 最近の論調で、年金制度を支えるのに不足があれば、財源の中での税金負
担を増やせばいいではないかということが聞かれる。税金の中でも、消費税
をあてればいいという議論が有力である。私とすれば、この議論をすんなり
と受け入れるには抵抗がある。年金制度に限らないが、社会保障制度におけ
る給付と負担との緊張関係をゆるくすることを危惧するからである。

 社会保障制度における給付と負担の水準は、理論的にすっきりと決まるも
のではない。給付水準は、保険料を負担する側が、それ以上給付を上げるこ
とに拒否権を行使するところが限界である。そして、その負担の水準は、い
ずれ自分たちも給付を受ける側になることを想像した上での負担側の判断に
委ねられているということである。いわば、給付と負担との綱引きである。
これは、一定のルールの下で行われる政治的な決着であることは否定できな
い。

 言いたいことは、社会保障制度の行方、なかんずく、給付と負担の水準を
決めるのは、広い意味での政治であるということである。一定のルールに
則ったゲームということになるが、その辺をあいまいにするのが、税金の投
入である。税金の負担率を上げればいいじゃないか、そのために消費税率を
上げればいいじゃないかという手品を使うことによって、ゲームのルールが
なし崩しになってしまう。別な言い方をすれば、給付と負担との緊張関係が
薄れてしまうということになる。

 最近、いろいろな場において、私は障害者の支援費制度の基幹的部分を介
護保険に移行したらいいという発言をしている。その理由の一つが、障害者
給付の制度においても、負担と給付の緊張関係を維持しなければ、制度の維
持はむずかしいと思うからである。逆に、財源の全額が税金という支援費制
度から、保険料主体の介護保険の制度に転換することによって、障害者給付
においても、「明日は我が身」という意識を醸成することができるのではな
いかと期待する部分がある。

 結局のところ、社会保障制度は、給付を受ける側と負担をする側との間で、
お互いに納得し合いながら、もしやの時に備えた安心のシステムを構築しよ
うというものである。税源を税金に頼れば頼るほど、「お互いの納得」とか、
「負担と給付の緊張関係」が薄れてしまう。給付のための財源は天から降っ
てくるとは思わないまでも、どこまでが給付の限界かを決めるルールが見つ
かりにくくなる。もちろん、これとて、程度問題ではあるが、安易に税金の
投入に頼るということになると、社会保障制度が自分たちの制度ではなくて、
誰かに作ってもらって、都合のいい結果だけ享受しようというものと思われ
てしまったのでは、制度に未来はない。

 社会保障制度の行方を確かなものにするためには、正しい意味での政治の
出番が必要である。政治の場において、給付と負担についての緊張感のある、
ルールに則った議論が行われて、その結果としてしっかりした社会保障制度
が構築されるものと思っている。

 舌足らずになってしまった。この件に関しての、一応の第一弾として・・・。


____________________________________________________________________
> [読者のみなさんから] < 

 ○メルマガ読者、みなさまからのご感想などを掲載しております。

 当メルマガには、皆さんからたくさんのご感想をいただいております。そ
の皆さんの声の一部を掲載しております。


 <倉島さまから>

 浅野知事も言っておられる「荒れる成人式」は毎年報道されながら自治体
行事としてだらだらと続けられているのは不可解だ。いっそのことこんな無
駄な行事は廃止するに限る。

 戦後の家庭教育、学校教育の慣れの果てがこの「成人達」を育て、他人の
迷惑に配慮できぬ未成熟な人間を造って来た、この責任は誰でもない現在の
大人に在る。

 高度成長期に育った大人は、身の回りには欲しい物が溢れ、我慢をするこ
とすら学ばず、何でも片っ端から手に入れ得る環境の中で我が子にも同じ扱
いをして来た結果がこれである。

 成人式は氷山の一角で、暴走族、子どもの虐待、ゆすりタカリ、手加減な
しの暴力沙汰など、毎日の報道に溢れているが、この世情を如何すれば和ら
げる事が出来るのか、文部科学省の官僚たちや族議員の言う「教育基本法改
訂」等なんの役に立つとも思えない。

 50年放置した事を取り返すには恐らく100年の歳月を要することであ
ろうと考えると個人が出来る事、即ち周辺に目配りをして小さな悪事や身勝
手を正す程度しかないのか、それも場合によっては可成りの勇気を伴う必要
があり、大多数の人に求める事は無理だ。私自身が如何すればよいのか判ら
ず仕舞いにはしたくは無いのだが。

 本日は、お一人の感想を掲載いたしました。ご意見、ありがとうございま
した。

※お寄せいただくご意見は、当方の判断で掲載させていただく場合がありま
 す。基本的には削除、変更なしといたします。掲載不可のご意見の場合は、
 投稿の際にその旨明記していただくと助かります。また、ペンネームでの
 掲載をご希望の方もその旨を明記いただきますよう、お願いいたします。

 ご感想・ご意見は mmz@asanoshiro.org まで

____________________________________________________________________
> [お知らせ] <

 ○メルマガ登録者募集中です。

 多くの皆様に浅野史郎の「生」の声を届けたいと思っております。
 お近くにご紹介いただければ幸いです。

 登録ページはこちらです。
 http://www.asanoshiro.org/news/mmz.htm

____________________________________________________________________

> [編集後記] <

 今回のコラムの中で「緊張関係」という言葉が出てきました。しかし、い
ざ自分に置き換えてみると、全くそのようなことはありません。

 なぜなら、制度の全体像が見えてこないからです。年金のパンフレット等
には「あなたの将来のために」と謳っていますが、年金制度の本来の基本理
念が伝わってこないのです。

 うーん、年金滞納気味の人間が語ると、ただの言い訳ですね・・・。

 それでは、来週の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)

                        皆さんのご意見、ご感想をお待ちしております。
                            メールアドレス mmz@asanoshiro.org

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
浅野史郎メールマガジン http://www.asanoshiro.org/
発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


TOP][NEWS][日記][メルマガ][記事][連載][プロフィール][著作][夢ネットワーク][リンク

(c)浅野史郎・夢ネットワーク mailto:yumenet@asanoshiro.org