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浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2003/10/28
http://www.asanoshiro.org/                  第112号
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> <<目次>> <

 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「日本テレビ視聴率操作事件」(浅野史郎)

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> [週刊コラム・走りながら考えた] <

 ○「日本テレビ視聴率操作事件」(浅野史郎)

 日頃、テレビを見ることはあまりない。見るのは、阪神戦のプロ野球中継、
NHK朝の連続ドラマ、ニュースが定番である。だから、今、評判になって
いるドラマとか、バラエティ番組の中身を知らない、ましてや、テレビ業界
の内実など全くわからない。そういう私にとっても、今回の日本テレビ視聴
率操作事件というのは、「さもありなん」と思うぐらいの想像力は持つこと
ができる。

 そもそも、番組ごとに出される視聴率なるもの、一体どうやって調査され
ているのだろうという疑問はあった。モニター世帯があって、そこで実際に
視聴した番組が記録され、集計される仕組みというのは知っていたが、モニ
ター世帯はどうやって選ばれるのかまでは、私の知識の外の話である。

 民放では、視聴率がすべてである。スポンサーにとっては、視聴率のよし
あしで番組提供をするかどうか判断するのは当然であろう。番組を作るほう
としても、視聴率引上げにやっきとなる。それが、番組の内容を改善するの
ではなく、視聴率工作のほうに向ってしまったというのが、今回の事件の悲
劇であり、喜劇であった。

 番組モニター世帯を割り出すために興信所を使い、1軒割り出すごとに成
功報酬10万円だったかを払っていた。そうやって割り出された世帯には、
これこれの番組を見たら数千円を御礼するという形で、視聴率を稼ぐという
手口である。

 視聴率調査を手がけているビデオリサーチ社が、尾行の車に気がついて抗
議をしたというのが、手口がばれたきっかけのようである。調査対象世帯に
設置している機械の保守点検に向う車を尾行するというやりかたは、誰でも
思いつくのではないかという気もする。となれば、これが初めて、唯一の
「犯行」なんだろうかとの疑問も湧いてくる。

 それにしても、浅ましいというか、浅はかというか。日本テレビとしての
組織的関与はない、担当プロデューサーが単独でやったことであると会社側
は説明しているが、それはそれで信じるしかない。しかし、一方で、日本テ
レビは視聴率競争で9年連続の「四冠王」ということであるので、ライバル
テレビ局とすれば、こんな不正手段によって手に入れたタイトルはおかしい
と言いたくなるのは当然である。野球なり、サッカーの試合で、審判を買収
するようなものであるから、そもそもゲームとして成り立たない。

 いきなり話を一般化させれば、数字がすべてということに、世の中が振り
回されていることの結果である。大人の世界では、視聴率、政党支持率など。
子どもの世界では、お勉強の偏差値、志望校合格可能性確率など。今回渦中
にあるプロデューサーが、子どもの頃からの偏差値教育で純粋培養された人
材ということであれば、話は面白くなるのだが、多分そうではないだろう。
数字を上げる、成績を上げるということにのみ頭が行ってしまって、地道に
結果を出す努力を放棄するようでは、いずれにしても、とても賢い選択とは
言えない。

 視聴率調査に基づいて、スポンサーの行動が決められるという中で、調査
そのものの信頼性が揺らぐということになれば、テレビ業界は大混乱であろ
う。その意味では、なんと罪深いことをしでかしてくれたものか。ビデオリ
サーチ社としても、客観性、公正さということに疑問符がつくようになった
ら、どういった対抗措置をとったらいいのか、頭を抱えていることだろう。

 今回の事件は、大事件ではないかもしれない。犯罪に問うこともできない
事案であるらしい。そうであっても、視聴率の神秘性、信頼性を著しく損
なったという点においては、影響はとても大きい。テレビを見ている青少年
に与える影響も小さくないだろう。大人はごまかす、ずるいことをやる存在
であるということを、これだけわかりやすく示す事件はない。

 視聴者のほうには、対抗手段はある。この事件を契機に、下らない番組は
断固として見ない、見せないと心に決めることである。よく言われるように、
単なる視聴率ではなく、視聴質こそ問うべきでもある。「見た」という数字
ではなく、どう見たか、何を感じたかの評価を加味した視聴率の導入も、検
討されていいだろう。

 テレビがこの世の中に出回ってすぐのころ、評論家の大宅壮一さんが、
「一億総白痴化」という言葉で、テレビ文化が世の中に流す影響について警
鐘を鳴らした。それから何十年たった現在、あれは卓見だったと再認識せざ
るを得ない。テレビ業界よ、これを契機に、心から反省、奮起して欲しい。

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> [読者のみなさんから] < 

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 当メルマガには、皆さんからたくさんのご感想をいただいております。そ
の皆さんの声の一部を、今後この場で紹介してまいります。


 <中村様から>

 今の日本の八方ふさがりの状態は、陰の支配者・官僚とそれに寄生する族
議員にあると思う。「脱官僚体制」を実現しない限りこの国には未来はない。
 中央が駄目ならまず地方から改革の意志に燃える自治体が結束して立ち向
かって欲しい。浅野知事には是非その先頭に立って頑張って欲しい。



 今回は、お一人の感想を掲載いたしました。お気軽にご感想などをお送り
いただければ幸いです。
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> [編集後記] <

 結果を追い求めることが、今回の「視聴率操作事件」につながっていった
のでしょうが、そもそも私達は「数字」に絶対性を持ちすぎなのではないで
しょうか。「数字だけが客観性を持つ」から「正解」であるとは限らないの
ですが・・・。

 それよりも、近い将来、デジタル多チャンネル化した時の視聴率調査はど
うなるのでしょうか。数百チャンネルになった時には、視聴率調査モニター
数も何倍も必要になりますね。

 それでは、来週の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)

                        皆さんのご意見、ご感想をお待ちしております。
                            メールアドレス mmz@asanoshiro.org

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発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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