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浅野史郎メールマガジン バックナンバー

浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━2003/3/25
http://www.asanoshiro.org/                  第81号
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 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「米英軍によるイラク攻撃」(浅野史郎)

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 ○「米英軍によるイラク攻撃」(浅野史郎)

 ついに始まった。アメリカがイラクに対して、ついに武力行使を行ったこ
とを言っている。いい悪いといったことで、単純に割り切れることではない
が、まことにもってわかりにくいといった印象だけは免れない。そして、恐
ろしいことになりそうだという、大きな不安をぬぐうこともできない。

 アメリカよ早まるなという声が強かったことだけは、まちがいない。国連
安全保障理事会での議論だってそうだ。独仏、特に、フランスのシラク大統
領は、信念を持って、最後の最後まで、「早まるな」という説得をしてきて
いた。

 そういった動きは、当然ながら、アメリカの攻撃開始で影をひそめてし
まった。「早まるな」といっても、始めてしまったものは、仕方がない。し
かし、仕方がないということと、今回のこの時期での攻撃を大義ありとして
認容することとは、大いに違う。この辺が、私にとっても、引っかかる部分
である。

 小泉首相は、いち早く、米国支持を表明した。日米同盟の存在があるし、
北朝鮮の脅威がある。いざとなったら、アメリカに助けてもらうしかない。
それが日本の国益であるということなのだろう。

 あまりに当たり前なので、誰も指摘さえしないが、「戦争」であるにもか
かわらず、勝敗の行方は、自明であることの不思議さがある。アメリカが勝
つか、イラクが勝つか。戦争であれば、そういったことが問題となるはずな
のだが、この戦争に限っては、全くそういったことは問題にならない。戦争
というよりは、大国アメリカが、ならず者国家イラクをいとも簡単に踏み潰
すといった図式である。早期に決着がつくか、長引くか。はたまた、戦争が
始まる前から、「戦後復興」をどうするか、それだけが問題となっている。

 だからこそ、容易に米国支持ということができる。戦争の勝敗ということ
では、勝ち組みにつくということに、何の心配もない。しかし、戦争を始め
る大義、そもそも、どちらから仕掛けたのかといった経緯、そのことの議論
が吹っ飛んでしまうというのも、本当は奇異なことなのである。

 2週間前のこのメルマガでも書いたが、イラク攻撃の目的は、最初はテロ
対策であった。それが、大量殺戮兵器の排除になり、今や政権転覆である。
新たな国連決議を得てからの攻撃にしようというのは、アメリカだって認め
ていた。それが、以前の国連決議を持ち出して、それの違反だから攻撃する
ことに変わってしまう。大義があるかということもそうだが、なぜ今なのか
への答がないままの攻撃である。

 日本として、最終的にはアメリカ支持も仕方がないだろう。直後の私の公
式コメントでも、「苦渋の決断」と言った。しかし、その苦渋さが国民に
すっきりとは伝わらない。「アメリカ支持」とする前に、アメリカに対して
日本はどういった説得、主張を行ってきたのか、それがどの程度受け入れら
れたのか。受け入れられなくても、支持するのなら、その理由は何か。どう
も、こういうところがあいまいなままでの「支持」表明になってしまってい
る。

 連日連夜、テレビで戦闘の状況が報道され、それを茶の間で寝転がりなが
ら眺める。そういった形の戦争は、前回の湾岸戦争で経験済みとはいっても、
やはりとても奇異である。新聞では、戦争の背景や、賛否の意見などが詳し
く紹介されているが、テレビは映像の衝撃で、そういった深い洞察部分は省
略されてしまう。そして、同じ画面、同じ発言が何度も繰り返される。これ
がテレビの特性であり、恐いところでもある。

 テレビをはじめとする報道で、これでもか、これでもかと見せつけられる
のは、アメリカの軍事力の圧倒的な強さである。「この戦争は早く終結すべ
し」という思いで見ているから、そういった米軍の強さに応援を送る気持ち
になってしまうが、これとていささか変な心理状態である。

 軍事面においても、アメリカの一人勝ち。このことが、内外に疑問の余地
なく示されたあとの世界秩序は、一体どうなるのだろうか。イラクの運命も
大事だが、こちらのほうももっと大事。

 どうも、戦争の混乱の中で、私自身の心の中も混乱状態にある。もう少し、
じっくりと考え抜く必要を感じる。

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> [編集後記] <

 つい先日、岩手の中尊寺に行ってきました。中尊寺の本堂の入り口にイラ
ク攻撃の早期終結祈願文が張ってありました。「戦争に『正しい戦争』とい
うものはありません」とはじまるこの祈願文に「怨みをもって怨みに報いれ
ば、怨み止むことなし」と経典の言葉を引用したものと思われる言葉があり
ました。
 終戦が一日も早いことを祈ることしかできない自分に、歯痒さを感じます。

 それでは、来週の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)

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発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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