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浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━2003/3/11
http://www.asanoshiro.org/                  第79号
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 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「イラク「武力行使」問題」(浅野史郎)

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 ○「イラク「武力行使」問題」(浅野史郎)

 イラク「武力行使」は、このメルマガが発行される頃には、始まっている
かもしれない。そういった緊迫の秒読み段階に入っている。「武力行使」と
カギ括弧で書いているのは、本来は「戦争」と言うべき行為だからである。
この辺の言葉遣いにも、だまされてはいけないという気がするが、それは一
応置いておく。

 日本はどういった立場を取ったらいいのか。両極端の論評を続けて読んだ。
まずは、雑誌「選択」3月号の特別レポート「『反米非戦』の妄論を排す」
である。「凶器を振り回す国(イラク)とそれを取り締まろうとして警棒を
持つ国(アメリカ)の区別がつかなくなる」という、一見わかりやすい比喩
が示されている。第二次世界大戦直前の英国チェンバレン首相のヒトラーに
対する宥和政策の失敗を持ち出し、「現代のヒトラー」に対峙するブッシュ
政権という図式を示しつつ、「日本は、『米国の対イラク戦を支持する』と
叫ぶことこそが自主外交ではないか」と結んでいる。

 もう一方が、雑誌「世界」4月号の寺島実郎論文「『不必要な戦争』を拒
否する勇気と構想」である。「湾岸戦争の怨念をひきずった屈折した心理と
役割意識肥大症ともいうべきアメリカの価値への陶酔、我々は今そうした
ゲームに付き合わされているのだ」と解説する。イラク攻撃の理由を「テロ
との戦い」から「大量破壊兵器」へといつの間にか変えてきていることへの
不審、「国連決議違反」についてのイスラエルとイラクへの対応の違いのダ
ブル・スタンダード、大量破壊兵器の保有なら、米国こそが最大の保有国で
あるという指摘、こういった論述から、いろいろなことが見えてくる。

 このメルマガで私も以前に指摘したことだが、「先制攻撃権」の論理は、
世界秩序を液状化させ際限ない戦闘を誘発するものと、明確に異議を発して
いる。「本当の敵はテロリストという見えない敵であるにもかかわらず、
『屈服しそうな都合の良い悪役』に攻撃を加え、勝利を演出しようとしてい
る」という指摘には、なるほどとうなずかざるを得ない。それで解決になる
だろうか、「憎悪の連鎖は収拾のつかない恐怖の世界をもたらしかねない」
と続ける。

 日本がとるべき政策が3点示されている。1、イラクへの武力攻撃を支持
しない。「紛争解決手段として武力を用いない」という国是を貫く。2、米
軍が中東に行動を起こす際、日本の基地を使用することは許容する。3、イ
ラク攻撃に関しては、直接間接の軍事支援もしないし、戦費の分担もしない。

 長々と引用ばかりしてきた。引用の長さからも察せられるだろうが、私は
寺島論文に共感を覚える。今回のイラク問題への対処こそが、新しい日米関
係の構築につながるという寺島さんの見解は、彼がこのところ一貫して主張
していることである。つまり、日本としての新しい外交基軸、米国との関係
の再設計なくして日本の未来はないという主張である。

 今回のイラク問題では、日本の国益とは何かということが、正面から問わ
れている。我々は、日頃からこういった議論を積み重ねてきただろうか。国
会において、こういった議論は、各議員の問題意識の中で、優先事項の第何
番目に位置しているのだろうか。いまさらながらではあるが、国会も中央官
庁も、地方に任せておけばいいような問題は地方に任せて、こういった日本
の進路をどうするかといった、本質的な問題をこそ真剣に議論すべきである。
外務大臣の態度がはっきりしないとかの揚げ足取りはみっともない。問われ
ているのは、一つの政党として、国際問題に対してどういった政策を打ち出
すのかといったことでもあるのだから。

 それにしても、大変な時代に我々は生きている。イラク問題に加えて、北
朝鮮問題が控えている。日本海を隔てただけの隣国が、常軌を逸したような
行動に出ている。アメリカの核の傘がなければ、自分たちの国を守っていく
ということは、できないのかもしれないという無力感にも襲われる。本当に
そうなのだろうか。こういったことを考え抜く日本人全体の「脳力」こそが、 試されているのかもしれない。 ____________________________________________________________________ > [お知らせ] <  ○メルマガ登録者、相互リンク募集中です。  多くの皆様に浅野史郎の「生」の声を届けたいと思っております。  お近くにご紹介いただければ幸いです。  相互リンクも随時募集中です。お気軽にこちらまでメール下さい。  mmz@asanoshiro.org  リンクページはこちら  http://www.asanoshiro.org/link/index.htm ____________________________________________________________________ > [編集後記] <  「空爆に慣れているから、平気」と子どもがインタビューに答えていまし た。その言葉を聞いて涙が出てしまいました。         (一馬)  皆さんのご意見、ご感想をお待ちしております。      メールアドレス mmz@asanoshiro.org ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 浅野史郎メールマガジン http://www.asanoshiro.org/ 発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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