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浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━2003/2/25
http://www.asanoshiro.org/                  第77号
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 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「宅老所・グループホーム研究会」(浅野史郎)

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 ○「宅老所・グループホーム研究会」(浅野史郎)

 正式には「全国宅老所・グループホーム研究交流フォーラム」と称するこ
の研究会も、今回の栃木県宇都宮市大会で6回目となる。私は今回も参加を
したので、第1回からの皆勤賞になる。

 今回、私が出たセッションは、「自治体が変われば、福祉は変わる」とい
うタイトルのものであった。富山県で「このゆびとーまれ」という活動を進
めている惣万さん、アメニティフォーラムの仕掛け人の根来さん、愛知県高
浜市長の森さん、栃木県知事の福田さん、全国社会福祉協議会事務局長の和
田さんの5人がパネラー。私はコーディネーターを務めた。このセッション
のことを詳細に報告するつもりはない。コーディネーターとしてセッション
を進めながら感じたことを書いてみたい。

 そもそも、宅老所とは、読んで字の如く、老人を預かる居宅のような場所
のことである。地域に住んでいて、昼間の居場所がない、障害があるために
日中の生活が困難であるという老人がいる。そういった老人に、簡易なデイ
サービスのようなものを提供するものであるが、そんなに張り切った事業で
はない。子ども達が一人立ちしてしまって、時間的な余裕ができた女性、夫
婦だけでは広過ぎる居宅、こういった資源を使って、宅老所は始まった。

 行政のお声がかりで始まった事業ではない。だから、と言うべきなのだろ
うが、自由な発想で運営されている。宅老所から始まって、住まいを提供す
るグループホームに発展していったものも少なくない。手探りで始めたので、
不安はある。情報が欲しい、勉強もしたい、仲間と語りたい、こんな想いか
ら、研究交流フォーラムが始まった。始まって3回までは、宮城県で開催さ
れた。せんだんの杜の池田昌弘さんたちが、手作りで立ち上げたフォーラム
である。

 自然発生的に始まって、あっという間に全国に広まっていったのは、ニー
ズがあったからである。サービスを提供するほうのニーズと、受けるほうの
ニーズがぴったり合致して、しかも行政がうるさいことを言わなかった。こ
れが人気の秘密ではないかと、行政を預かる者としては、やや複雑な思いと
ともに認識している。

 今回のフォーラムで改めて感じたのは、対象者の範囲が広がりつつあると
いうことである。宅老所は、どうして老人だけでなければならないのか。既
に、惣万さんのところの「このゆびとーまれ」では、富山方式と称して、身
体障害者、知的障害者、児童まで広く対象にしている。しかも、バラバラに
受け入れるのではなく、一緒に、同じ場でというのが、大事な方法論になっ
ている。惣万さんの説明では、赤ちゃんが一番活躍するボランティアという。
がん末期の高齢者や、痴呆症の高齢者が、赤ちゃんの顔をのぞきこんでニコ
ニコしている写真が印象的であった。

 ひとつの家に、支援を必要とするいろいろな態様の人たちがやってくる。
高齢者、障害者、子ども達。「ごたまぜホーム」と私が言ったら、「家族
的」、「ニーズ適応型」と言ったほうがいいと惣万さんに反論された。とも
あれ、行政が決めたタテワリのサービスでは収まり切れないニーズが、実際
の場面ではある。そして、「赤ちゃんが最も喜ばれるボランティア」という
ことに象徴されるように、お互いが役割を果たし合い、支援し合う関係がそ
こでは生まれている。

 わが宮城県でも、来年度から、共生型在宅支援といったグループホームが
発足する。重症心身障害者、軽度の身体障害者、知的障害者、痴呆症の高齢
者が一緒に住むグループホームである。第1回の「プロジェクトM」に応募
した33のプロジェクトの中から、グランプリに選ばれたものである。庁内
の若手の職員のグループから、「タテワリを超えて」ということを共通コン
セプトとしてプロジェクトを募った。結果的には、共生型グループホームが
当選して施策化されることになったが、「タテワリを超えて」というだけで、
さまざまな有益なプロジェクトが生み出されることに、検討にあたったグ
ループも、そして私自身も、目を見開かされる気がした。

 和田さんからは、地域の中で孤立している高齢者、話し相手のいない若い
人たちなど、孤独に悩む人たちのためのサロンが、全国でどんどんできてい
るという話があった。一昔前であれば、こういったニーズは正面きって取り
上げられることがなかったであろう。こういうことも、私にとっては、新鮮
な驚きではある。

 つまりは、地域の中から自然に湧き上がってくるニーズに、ちゃんと応え
ていこうという人たちがいるということである。既存の行政のマニュアルか
らは出てこない発想。こういった事業を、後追い的ではあっても、行政が拾
い上げていくということも必要であろう。

 そんなことを、いろいろと考えさせられるフォーラムであった。

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いなと感じていたのが、最近は週に20人程度のペースで増えています。そし
て、配信を希望される方が宮城県外からも多いのが特徴です。
 「送信」を押すと一瞬で、全国の皆様に届くのだから、便利になったもの
ですね。

 それでは、来週の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)

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発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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