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浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2003/1/28
http://www.asanoshiro.org/                  第73号
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> <<目次>> <

 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「市町村合併」(浅野史郎)

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 ○「市町村合併」(浅野史郎)

 昨年の7月30日号でも、同じテーマで書いたが、今回は、その続編。

 宮城県内での市町村合併に向けての動きは、平成17年3月末の「合併特
例法」の期限切れをにらんで、このところ目に見えて活発になってきた。中
新田、小野田、宮崎の加美郡3町の合併は、今月8日、合併協定書の調印式
を終え、今年4月の「加美町」誕生に向けて着実な歩みを進めている。

 柴田郡の柴田、大河原、村田3町も、合併に向けて法定協議会が発足した。
大きな一歩である。このまま合併への動きが順調に進んでいけば、加美町に
続いてゴールへの着順については「銀メダル」でのゴールということになる
が、町ごとに若干の温度差はあるようである。これをどう乗り越えて行くか。

 登米郡8町は、ここにきて、急速に動きが目覚しくなっている。任意協議
会は発足した。合併推進重点地区の指定も受けた。しかし、なにしろ、構成
自治体数が8と多い。今後とも一糸乱れぬまとまりを見せて、合併に向けて
進んでいくかどうか、町長をはじめとするメンバーの指導力が問われる。

 こういう書き方をすると、何が何でも合併を進めたいというのが真意だな、
と言われそうであるが、ちょっと違う。そもそも、市町村合併は目的ではな
くて、出発点である。何に向けての出発点かと言えば、効率的な自治体、力
強い自治体に生まれ変わることへのものである。

 財政が厳しいから、借金がかさんでいるから効率的な自治体を目指すとい
うのは、少しばかり夢のない話ではあるが、現実問題への現実的対応ではあ
る。単独の町で実施するよりも、周辺自治体が一緒になってやったほうが、
お金もかからないで済むという行政分野は、確かにある。議会だって、一緒
になれば議員の数は減らせる。したがって、支出だって削減できるというこ
ともある。本当はその前に、現在の議員はそれぞれの自治体においてどんな
働きぶりをしているのかが問われる必要がある。それはひとまず置いておく。

 力強い自治体を目指すというのは、夢のある方向である。小規模の町では、
役場の職員が一人何役もこなしている。そうでなければ、複雑多岐にわたる
行政施策を実施することができない。どうしても、一つ一つの施策を突っ込
んで、深掘りして進めることがむずかしくなる。合併して大きな自治体にな
るということは、大きな役場(市役所)を持つということである。一つのセ
クションに配置する職員数も多くなる。その余裕をもって、職員が研修にで
かけたり、勉強したり、行政の守備範囲を広げたりすることができるように
なる。それだけ、自治体としての力がつくということである。

 合併に向けての事務作業は膨大なものになる。担当する職員にとっては、
まことに過酷な作業である。単純な仕事ではない。これからの新しいまちづ
くりをどうするかという、極めて挑戦的な仕事である。そういった仕事に取
り組むことを通じて、行政マンとして大きく成長することは、まちがいない。
合併が成った後、そういった職員群は、その自治体にとって、ものすごく大
きな戦力となることであろう。

 その一方において、合併は妥協の産物でもある。利害の異なるそれぞれの
町や村が、その利害を乗り越えて一つの自治体にまとまるということである。
問題は、どう乗り越えるか。たとえば、庁舎をどこに置くか。庁舎所在地と
なる町以外は、みんな不幸、不満。中核施設をどこに置くかも同じ。だから
といって、みんな平等に、既得権はひとつも切らずに、ということになれば、
合併で実現しようとした効率性に、全く反することになりかねない。ここが
むずかしい。

 大事な事は、原点に帰ることなのだろう。なんのために合併するのか。そ
れによって、何を実現しようとするのか。そのためになら、犠牲にするもの
があっても、十分に理解と納得は得られる。

 もう一つ大事なことは、住民への説明である。もちろん、その前に、首長
の指導性ということがある。町長にしっかりした信念がないところで、住民
に意見を聞いても、始まらない。合併の是非、方向性に関して、住民に「丸
投げ」はありえない。「どうしましょうか」ではなくて、私(我々)はこう
したいのだが、それに対してあなたはどう思うかでなければ、話は進まない
だろう。

 合併で実現できることと、合併だけでは無理なことと、両方あることもしっ
かり認識しておくことが必要である。この際、合併特例債という有利なもの
があるから、これを利用するとか、県からも、事業の優先採択があるから、
これも利用するとか。それはそれで、有効なものではあるが、そういった事
業にどれだけ依存するかは、合併を目指す自治体が慎重に検討しなければな
らない。いわば、程度問題ではある。

 合併特例債は、返済の7割は地方交付税措置がなされるといっても、しょ
せん、返さなければならないお金である。「特例債バブル」といったような
ことが生じないように、真に必要な事業にのみあてることが求められる。

 市町村合併については、まだまだ大きな論点があるが、今回のところは、
これぐらいで。

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はお気をつけて。

 それでは、来週の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)

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発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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