宮城県知事浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

浅野史郎メールマガジン バックナンバー

浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2002/12/17
http://www.asanoshiro.org/                  第67号
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
> <<目次>> <

 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「イージス艦派遣のあわただしい決定」(浅野史郎)

 [お知らせ]
  ○メルマガ登録者、相互リンク募集中です。

____________________________________________________________________
> [週刊コラム・走りながら考えた] <

 ○「イージス艦派遣のあわただしい決定」(浅野史郎)

 昨日、16日(月)、イージス艦「きりしま」が、海上自衛隊横須賀基地か
らインド洋に向けて出港した。なんとあわただしい出港だろう。

 この間の新聞記事を追ってみると、「与党内調整つけば年内派遣も」と小
泉首相が語っていたのが12月2日(月)である。その2日後の4日(水)には、
「イージス艦派遣を政府決定」となっている。まさに、電光石火というべき
速さである。

 4日昼の与党幹事長会談の段階では、公明党は慎重姿勢を示しており、5
日の党首会談で改めて話し合うことを確認していたはずである。それが、4
日夕方に石破防衛庁長官が首相官邸を訪れ、小泉首相にイージス艦の派遣を
要請、首相が了承した。党首会談を待たずに、決定してしまったことを、公
明党はそれほどとがめることもなかったのは、どういう事情からなのだろう
か。

 8日(日)に、米国のアーミテージ国務副長官が来日した。この日程に無理
やり間に合わせるかのような動きが、なにか不自然さを感じさせる。16日
(月)には、日米外交・防衛担当閣僚会議である。その前に、すでに4日に
は、アーミテージ氏は、「小泉首相の傑出した指導力によるものだ」とイー
ジス艦派遣決定を評価する発言をしている。同日の大統領報道官は、「ブッ
シュ大統領は、テロとの戦争における日本の支援に大変感謝している」と述
べている。

 つまりは、米国の意向を色濃く反映して、今回の政府決定になったと考え
るのが自然である。しかし、この時期に、日本にとってこのように極めて重
大な意味を持つ事項について、かくもあわただしく決定していいとは、到底
思えない。野党は何をしていたのか。野党第一党の民主党の代表交代をめぐ
るごたごたが、丁度この時期であったことを思えば、まさに罪深いごたごた
であった。進める政府・与党にとっては、願ってもないチャンスであったこ
とにもなる。

 問題は、そんな次元ではない。今回のイージス艦派遣は、イラク攻撃に備
えてのものであることは明らかである。であるとすれば、そもそもの論点、
この時期のイラク攻撃の妥当性、正当性こそが真剣に論じられなければなら
ない。世界の趨勢は、総選挙におけるドイツの動きを見ても、ヨーロッパ各
国は米国のイラク攻撃には批判的、懐疑的である。国連決議においても、慎
重姿勢が見て取れる。こういった世界の動き、なかんずく、国連決議に基づ
く査察が進行中であるという状況をしっかりと見れば、あわただしくイージ
ス艦派遣を決定するのが国家として正しい選択であり得ないことは、明白で
はないか。

 公明党の慎重姿勢というのも、また、わずかに記者会見において発せられ
た記者からの疑念にしても、「憲法が認めていない集団的自衛権の範囲を越
えているのではないか」といったものである。解釈上、そして運営上、集団
的自衛権の行使とならない範囲ならいいのか。そういった問題ではないはず
である。今、この時期、こういった条件の下でイージス艦を派遣することが、
正しいのかどうかを冷静に、慎重に、幅広く論議をして決定すべきである。
その決定は、国家としての日本の姿勢を世界に示すことになるのであるから、
その点も十分に認識して行なわなければならないのは言うまでもない。

 であるとすれば、答はノーである。少なくとも、国連決議に基づく査察の
結果と評価を待つべきである。真意は別としても、今の時点でのイージス艦
の「あわただしい」派遣は、米国の意を迎えるための姑息な態度と見られて
しまうおそれがあり、日本の国益を考える上で大きな問題である。

 経済問題にしても、アメリカ流市場経済万能論を下敷きにした政策決定が
まかり通っている。「ルック・イースト(マレーシアから見て東、つまり日
本をみならえ)」政策を掲げて、マレーシアの近代化に大きな実績を上げて
いるマハティール首相は、最近の日本があまりに米国流の経済運営にかたよ
り過ぎているのを嘆いている。「日本の成功はアジアの人々を発奮させた。
しかし、今や日本人が自信を喪失している。欧米諸国に受け入れられようと、
日本人は日本的なもののほとんどすべてを拒否しようとしている。その過程
で自らを弱め、多くの場合、失敗をした。」(「アジアから日本への伝言」
マハティール・モハマド毎日新聞社)

 ことさらにアメリカの動きにたてつけというのではない。日本は国家とし
ての国益をまずは第一義に据えるべきである。そして、いたずらにアメリカ
モデルの「グローバル・スタンダード」に盲従することなく、日本型の経済
運営の良いところには自信をもって、わが道を行く気概が必要なのではない
か。そんなことの延長線上にある象徴的なできごとが、今回のイージス艦の
派遣ではなかっただろうか。

____________________________________________________________________
> [お知らせ] <

 ○メルマガ登録者、相互リンク募集中です。

 多くの皆様に浅野史郎の「生」の声を届けたいと思っております。
 お近くにご紹介いただければ幸いです。

 相互リンクも随時募集中です。お気軽にこちらまでメール下さい。
 mmz@asanoshiro.org
 リンクページはこちら
 http://www.asanoshiro.org/link/index.htm

____________________________________________________________________
> [編集後記] <

 風邪を引いてしまいました。今冬2回目です。皆様もお気をつけて。

 それでは、次号の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)

                        皆さんのご意見、ご感想をお待ちしております。
                            メールアドレス mmz@asanoshiro.org

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
浅野史郎メールマガジン http://www.asanoshiro.org/
発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


TOP][NEWS][日記][メルマガ][記事][連載][プロフィール][著作][夢ネットワーク][リンク

(c)浅野史郎・夢ネットワーク mailto:yumenet@asanoshiro.org