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浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━2002/10/2
http://www.asanoshiro.org/                  第56号
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> <<目次>> <

 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「義務教育国家負担の地方への移譲」(浅野史郎)

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 ○「義務教育国家負担の地方への移譲」(浅野史郎)

  宮城県内の市町村立小学校、中学校の先生方の給料は、宮城県が負担し
ている。その半分は、国が負担している。つまり、先生方の給料は、国と県
が半分ずつ持っているということになる。

 これが、義務教育経費の国庫負担の制度で、国の負担分は年間約3兆円に
なる。この3兆円の国の負担をやめて、全部県の負担にしてはどうかという
議論がある。県の負担の増える分は、国税(例えば所得税)を地方税(例え
ば住民税)に振替えてしまう。つまり、税源移譲で賄う。地方分権改革推進
会議の報告にその方向が盛られた。総務省もそういった提言をしている。そ
して、私もその提言には賛成している。

 文部科学省は、この提言に反対である。今のままでいいという立場をとる。
義務教育に関する国の責任を、国庫負担という形でとるべきだというのが一
つ、県に負担を任せてしまうと、義務教育に使うべき財源を、例えば、道路
や橋などの公共事業に転用してしまう県が出てくる心配があることが二つ目。
こういった理由で、「反対」を唱えている。

 本来、義務教育の実施は、市町村の自治事務である。しかし、「教育の機
会均等」ということもあり、最低限のレベルは確保する必要がある。そこで、
教員配置の基準を定める「標準法」が設けられている。だから、義務教育に
使うべきお金を、他の用途に流用してしまうことなどできない。流用したの
では、必要な教員配置ができなくなるからである。それに、そんなケチなこ
とをしたら、責任者(知事)は政治的にとてももたない。県立高校の経費は、
県が負担している。国の負担は、基本的にない。高等学校の運営経費を他の
目的に流用してしまうなんてことは、起きていないことからも、文部科学省
の言っている理由が成り立たないのは明らかである。

 すると、「国庫負担は残すべし」ということで、文部科学省の言っている
理由で残るのは、「義務教育についての国の責任」ということになる。責任
というのは、お金の負担とイコールだろうか。私にとっては、国の責任の
「あかし」としか思えない。「あかし」のために、国庫負担をするのですか。
そのために、県からの負担金申請、国からの交付という事務手続きをする手
間暇をかけるのですか。そんな問を発したくなる。

 国が半分負担しているからということで、義務教育に関しての「右向け
右!」が浸透しているのではないか。教育における中央集権(的発想)の弊
害である。県の教育委員会も、義務教育の運営について、何事も文部科学省
の考え方に合わせてしまう。指示待ちといった現象が生じる。それにより、
各地域ごとの、個性ある教育のダイナミックさが失われるとしたら、その害
は生徒にまで及ぶことになる。

 この連載の3回ほど前の回で書いた「統合教育」についても、文部科学省
の「影」がちらついている。文部科学省の方針がどうであれ、障害児は普通
学級で学ぶのが原則だという考え方に、せめて宮城県教育委員会だけは立て
ないものだろうか。頭を真っ白にして、ゼロベースから考えたら、この問題
にどういう答が出るか。つまり、文部科学省の「お達し」は忘れて、障害を
持つ子どもたちとその保護者の生の声に虚心に耳を傾けて考えたらどうなる
か。

 義務教育国庫負担の問題は、教育の文脈だけにとどまらない。地方分権を
どう進めるかという、大きな問題意識の中での大問題になっている。補助金・
負担金を廃止し、それに見合う地方の独自財源としての地方税を国税から移
管し、さらに地方交付税の見直しをする。それを、バラバラにつまみ食いす
るのではなく、一緒に考える、つまり「三位一体」としての制度改正がなさ
れるべきである。

 3兆円という、極めて大きな財源に関わる話であるので、義務教育国庫負
担がどうしても注目されることになる。地域から考える教育問題、国と地方
との関係一般、今後の日本の活力のためにやるべき課題、そういった観点か
らの、幅広い議論が、今、急いでやられなければならない。

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> [編集後記] <

 仙台は台風一過で、とても良い天気です。街路樹の倒木や葉の散乱が昨晩
の強風を物語っています。

 今回の強風で、巨大な送電線が折れてしまったとのこと。そうなると、私
のようなパソコンに頼り切りの人は、途方に暮れてしまうのでしょう。そう
ならないように、紙の手帳を購入しようか迷っています。

 それでは、次号の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)

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発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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