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浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━2002/7/16
http://www.asanoshiro.org/                  第45号
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> <<目次>> <

 [週刊コラム・走りながら考えた]
  ○「日本道路公団、そして宮城スタジアム」(浅野史郎)

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 ○「日本道路公団、そして宮城スタジアム」(浅野史郎)

 日本道路公団改革をめぐる議論が白熱化している。「道路関係四公団民営
化推進委員会」の討議が本格化してきた。そもそも、この委員会のメンバー
をどうするかが注目を集めた。小泉首相の判断で、作家の猪瀬直樹氏を入れ
たことで、道路関係議員が猛反発をしたことが大きく報じられた。そもそも、
そんな人選で騒ぐことでもない。要は、どういった議論がなされるかである。

 その議論の中身。道路公団を民営化した際の、組織形態が中心課題である。
「上下一体方式」と「上下分離方式」がぶつかりあっている。前者は改革派、
後者は道路関係議員と国土交通省が主張している。小泉首相は、「一体方式」
を支持しているらしい。

 「上下一体方式」というのは、道路の建設も管理も新組織が担当するとい
うもの。この方式だと、民営化された新組織が、建設投資の是非を判断する
ことになるので、非効率な道路建設に歯止めがかかることが期待される。早
く言えば、もうからない道路は、経営上の足を引っ張るから作らないという
ことになる。

 「上下分離方式」は、道路を保有するのは公的機関、管理・運営を民営化
した新組織に委ねるというもの。建設に国が関与することになるので、未整
備区間の整備を進めやすくなる。

 民営化するということは、営利企業になるということだから、もうけを最
大にすることを目標にするのは当然だろう。上下一体方式の場合、もうけを
最大にするには、今後一切新規の高速道路を作らないことにすればいい。そ
うすれば、これまで作った高速道路からの収入がどんどん入ってくるだけ。
あとは、既存の道路の補修だけ行なっていれば済む。しかし、本当にそれで
いいのだろうかは、ちょっと考えてみればすぐわかる。

 そもそも、高速道路は有料であるものと決めつけるところから、なにか大
きな誤解が始まるのではないか。7月14日(日)の日本経済新聞の記事
「改革論議 ポイントを聞く」で、自民党道路調査会の古賀誠会長が言って
いたが、本来道路は、国が責任をもって国費で整備すべきものである。道路
整備をするのは、国だけではなく、地方自治体も入るが、いずれにしても、
高速道路は有料と決めつけるべきものではない。有料道路にすると、限られ
た国費、公費であっても、早く整備ができる。そういう目的があって有料化
しているに過ぎないと考えるべきである。

 有料と決めつけるから、採算のことだけが前面に出てしまう。だから、
「採算の取れない高速道路は作るべきでない」という議論になってしまう。
高速道路の必要性は、採算性も一つの判断材料ではあるが、それ以外の有用
性、つまり、その高速道路が地域にとってどういう役割を果すのかという観
点からも考察されなければならない。

 高速道路でない、一般道路を考えてみよう。基本的に利用は無料である。
全額公費で建設され、管理される。無料なのだから、利用にかかる収入はゼ
ロ。大赤字ではないか。それでは、作らないほうがいいか。しかし、その道
路があることによって、多くの人が便益を得ている限りは、無駄ではない。
必要性ありである。作るべきであり、利用されるべきである。

 こう考えてきて、わが宮城スタジアムのことを思った。ワールドカップが
終わったあと、毎年の運営費に3億円もかかるのに、使われてもその利用費
の収入はせいぜい数千万円。赤字が増すばかりだから、いっそ壊してしまっ
たほうがいいのではないかという意見さえ出されている。その論法でいけば、
宮城県内の一般道路の管理には、年間何十億円の公費がかかる。利用収入は
ゼロである。大赤字だから、いっそ壊してしまえばいいということになって
しまうではないか。

 宮城県立図書館。仙台市の宮城野区から、泉区に移転新築された当初は、
足の便が悪いと言われた。今でも言われている。宮城スタジアムはアクセス
が悪い。利用しにくいというのに、あい通じる。県立図書館の場合、利用は
無料であるから、収入はゼロ。大赤字である。しかし、いっそ壊してしまえ
という議論は、さすがにない。

 つまりは、使ってナンボということである。道路も、図書館も、そしてス
タジアムも、使われずにいれば無駄であり、必要性が薄いということになる。
赤字うんぬんなら、そもそも道路も図書館もスタジアムも、民間でやればい
い。そういう分野ではないからこそ、公費で作り、公費で運営する。もちろ
ん、運営を民間に委託することは、可能ではあるが、それは別問題。

 使ってナンボ。高速道路の必要性も、そういった観点からの判断がなされ
なければならない。道路公団の形態をどうするかも、この観点から議論され
るべきである。そして、ついでに、宮城スタジアムも使ってナンボ。宮城県
のスポーツの普及、そして文化活動の普及のために、大いに使い尽くす算段
は働かせなければならない。壊してしまえなんて、とんでもない。

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> [編集後記] <

 また台風が日本列島を横断しています。私の実家の角田では、心配されて
いた阿武隈川の氾濫は、ほぼ堤防内で収まり、大事には至らなかったとのこ
とですが、今度の台風でどうなることか。ちょっと心配です。

 それでは、次号の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。 (一馬)

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発行:浅野史郎・夢ネットワーク メールマガジン編集局 渡辺一馬


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