浅野史郎メールマガジン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2002/6/3
http://www.asanoshiro.org/　　　　　　　　　　　　　　　　　第３９号
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　[週刊コラム・走りながら考えた]
　　○「日韓共催のワールドカップ開幕」（浅野史郎）

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　○「日韓共催のワールドカップ開幕」（浅野史郎）

　昨年の12月10日付け、第15号のこの欄で「ワールドカップ開催」を書いた
が、そのワールドカップがいよいよ開幕した。ソウル競技場での開会式と開
幕戦に行ってきた。その余韻がまだおさまらない。そんな時期に、特に、日
韓共同開催の意義について書いてみたい。

　１９９６年、ＦＩＦＡによる開催地決定は、日本側にとって大きなショッ
クであった。日本は早くから開催誘致に取り組んでおり、諸条件でもライバ
ル韓国を圧倒していたと信じていた。そこに飛びこんできた「日韓共同開催」
の悪い知らせ。「なんでなんだ」、「やってられない」との嘆きの声が聞か
れた。

　しかし、私も開催自治体の知事として、韓国の同様の自治体の首長たちと
ご一緒するうちに、共同開催でよかったと心から思えるようになってきた。
日韓関係は、過去には、確かに不幸な時期があったが、これからは、ワール
ドカップの共同開催を契機に、新しい関係を築いていくことができる。そん
な言葉を、韓国の要人から直接聞いたときに、心から共感できた。であると
すれば、開催自治体に名を連ねた我々は、その新しい歴史を作って行くこと
に、主体的に参画していることになる。こんなすごいことはない。

　そんな思いで、ワールドカップ開催の準備に関わってきた。そして、その
祭典が5月31日、ソウル競技場で開幕したのである。その歴史的一瞬に立ち
会うことができたことを、とてもうれしく思う。

　開会式のセレモニーに先立って繰り広げられた式典演技は、実に壮大であ
り、見ているものの度肝を抜くほどのものであった。２５００人のよく鍛え
られた演技者による、華麗で統一のとれたパフォーマンスにため息。物量を
投入した、さまざまな仕掛けにも圧倒された。

　時間もお金も労力も、ものすごくかかっただろう。たった３０分の演技の
ために使われたエネルギーは、恐ろしいほどのものである。ちょっとやり過
ぎ？という思いもちらと頭をかすめたが、ワールドカップに懸ける、韓国の
並々ならぬ意気込みに、ただただ感心させられた。

　心から感激したのは、そのあとのセレモニーである。日韓両国の国旗が入
場し、韓国国歌、日本国歌が演奏された。国歌の演奏の間は、６万を超える
観客は起立したままである。ここ韓国で、君が代が演奏され、韓国の人たち
を含めた皆が起立して聞いている。これが日韓共同開催ということなんだと
いうことを、実感する瞬間であった。

　小泉純一郎首相があいさつをし、金大中大統領が開会を宣言する。いずれ
も短いあいさつではあったが、あいさつの終わりには6万人の大歓声が上がっ
た。これまた、歴史的機会である。日韓共同で、ワールドカップという世紀
の大祭典を成功に導こうという決意表明がなされたわけで、それをテレビで
見ていた人を含め、世界中が目撃していたということになる。

　日本のグループであるケミストリーが、韓国の歌手達といっしょにパフォー
マンスを繰り広げたことも、歴史的意義としては小さいものではない。日本
語の歌詞の歌は、韓国のマスメディアでは、事実上禁止状態であったのだか
ら、今回のケミストリーの登場は、正式に日本の歌の解禁になる。日韓の文
化、芸術、スポーツの交流に新しい時代を切り開くことになろう。

　もともと、私はケイ・ウンスク（桂銀淑）、キム・ヨムジャ、チョー・ヨ
ンピルといった韓国歌手が大好き。キムチ、ナムル、ドゥブチゲ（豆腐鍋）、
ユッケ（生牛肉）など、韓国料理に目がない。そんな趣味・趣向のことが、
今回の共同開催で、韓国の人達とお会いし、訪問することが増えた際に、結
構役に立っている。

　それはともかく、これから1ヶ月、日韓だけでなく、世界中がワールドカッ
プ一色に塗り込められる。この1ヶ月の祭典が終わったあとに残るもの。いろ
いろあるだろうが、間違いなく、日韓の新しい、前向きな関係が築き上げら
れる。サッカー競技は、単に、ボール一個を蹴り上げるだけのゲームではな
いのである。

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>　［編集後記］　<

　ワールドカップが開幕しました。一日に世界最高のサッカーの試合を何試
合も見られるというのは、サッカーファンとしては、大変喜ばしいことです。
しかし、そのお陰で仕事が手につかなくなりますが。

　それでは、次号の「浅野史郎メールマガジン」をお楽しみに。　（一馬）

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発行：浅野史郎・夢ネットワーク　メールマガジン編集局　渡辺一馬