浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

ジョギング日記 12月第3週分       

2015.12.19(土)

橋下徹大阪市長の退任

 橋下徹大阪市長が、昨日、任期満了にて退任した。マスコミはこのことを大きく取り上げている。政治家橋下徹の軌跡をたどり、今後の橋下氏の身の振り方まで予想する記事が多い。

 私なりに、橋下政治を総括してみる。大阪府知事就任後の動きは素早く、また改革への意欲と実践は目を見張るばかりであった。その点に関しては、高く評価している。それから後の時期の言動には、疑問符をつけたくなることが多い。特に、再選を果たした後に問題が多かった。具体的には、教育委員会改革、大阪都構想について、選挙で有権者から選ばれたのだから、選挙公約した政策は有権者の信任を得ているとして、強行しようとしたことには、首を傾げざるを得ない。ある種の「選挙結果絶対論」であり、これには異議ありとしたい。

 本人は政治家はやめたと言っているが、周りはそれを字義どおりに受け取っていない。いずれ、国政に乗り出すだろう、そう期待する人も少なくない。橋下氏の言葉に嘘はないと思うが、「周りの声に押されて」とか、「今の国政を黙って見てられなくなった」ということで、「万端やむを得ず国政選挙に出ることにした」と言明する場面がいずれ出てくる可能性は高いような気がする。それが本人にとっても、日本の政治にとっても、いいことなのかそうでないのか、今のところはわからない。  


2015.12.18(金)

仙台二高卒業50周年記念事業

 仙台二高18回卒業50周年記念「学校施設配置板」贈呈式に参加。場所は仙台二高の正門近く。寒い屋外にもかかわらず、市内、市外から五十人の同期生が集まった。引き続き、紅陽グランドホテルでの祝賀会に出席。

 「配置板」作成費用として、120万円を目標に寄付を募ったところ、最終的には、153人からその2倍以上の金額が集まった。私も相応の寄付をさせていただいた。このようなイベントができたのは、記念事業発起人代表の渡辺康之君(地元)、加藤俊一君(在京)のおかげである。特に、加藤君はそもそもの発案者でもあり、その功績大である。寒さ厳しき仙台であったが、出席した甲斐があった。  


2015.12.17(木)

夫婦同姓規定に合憲判決

 民法の夫婦同姓規定、女性の再婚禁止の規定が憲法違反かどうかが法廷で争われてきた。それが16日の最高裁の判決で決着がついた。夫婦同姓については合憲、再婚禁止規定については一部違憲という判決である。

 どちらの案件も、女性の結婚に関するものである。この2件が同じ日に判決が出されたのは、最高裁の配慮なのだろうか。二つ一緒となると、インパクトは2倍以上になり、新聞の一面トップ扱いとなる。

 女性の再婚禁止規定については、判決の補足意見にあるように、父親について争いになる可能性がない場合には、再婚制限期間は不要というところまでいったらよかった。100日制限の判決には、中途半端の感がある。

 夫婦同姓規定は違憲でないとする判決文をよく読むと、夫婦同姓制の是非は、本来は法律によって決められるべきものとしている。つまり、その是非は国会が決めるのが適当であると言っている。この種の問題に、裁判所がどこまで関わるべきかということには限界があるということはよくわかる。その意味で、今回の判決は妥当なものと思う。

 国会が決めるのが適当と言っているので、自民党有力女性議員3人の意見がどうか興味がある。稲田朋美政調会長は「これからしっかり議論すべきだ」、高市早苗総務大臣は「夫婦、親子が同じ「氏」を戸籍上しっかり残すことが基本だ」、野田聖子前総務会長は「別々の名字を名乗りたいという人の選択肢を認める多様性のある社会にしたい」というコメントである。男性が多い国会議員によって、選択的夫婦別姓を認める法改正がなされる可能性は低いのではないか。


2015.12.16.(水)

幼児教育の無償拡大

 今日が神奈川大学の今年最後の授業となる。地方自治論Uでは、公共事業について論じる。入札と談合問題。障害福祉論のゼミは、グループワークの大詰め。A班は、横浜の特定子会社に取材ででかけた。残すところ、あと1回のグループワークでまとめなけらばならない。各班とも最後の追い込み。

 大学教育に関わる者として、教育全般に関心がある。「幼児教育無償拡大へ」という政府の方針には、全面的に賛成である。低所得世帯に限ってのことではあるが、3人目以降の子どもの幼稚園や保育園の保育料を来年度から全額無料にするという方針とのこと。本来は、低所得世帯に限らずに、そして一人目からといきたいところだが、まずは方向性はよしとせざるを得ない。

 書評も書かせてもらったが、「保育園義務教育化」(古市憲寿著)で提唱されていることを理想とすれば、理想へのささやかな第一歩である。公的保育というと、働く女性の支援の問題と見がちであるが、子どもたちにとってこそ大きな意義がある。「子どもの教育は、乳幼児期に一番お金をかけるのがいい」というのが教育経済学の定説らしい。単なる「お勉強」ではなく、むずかしくいうと「非認知能力」は集団の中でこそ磨かれるという。非認知能力が高いことは、人生での成功につながっているということは多くのデータによって証明されている。

 政府の方針は、ここまでのことを狙っているのではないだろうが、幼児教育に目をつけたことは評価したい。保育園義務教育化までには、財源の問題、人材確保の問題など、長い道のりがあるだろう。しかし、日本が真に豊かな社会を築くためには、目標とすべき方向ではある。


2015.12.15.(火)

羽生結弦選手の快挙

 15時から、学士会館で「まちかどのフィランソロピスト賞」贈呈式に臨む。社会に役立つ寄付を行った人を顕彰する趣旨で平成十年創設、今回で18回目である。個人では、65歳の定時性高校生、女子プロレスラーのお二人。青少年部門では、兵庫県加東市立社(やしろ)小学校、神戸市立白川台中学校、千葉県立銚子商業高等学校が受賞した。代表の生徒が、自分たちの活動をパワポを使って紹介する。その発表ぶりの素晴らしさに、会場からは感嘆の声。私は、表彰状の贈呈役をこなす。

 フィギュアスケートの羽生結弦が、12日、バルセロナであったグランプリファイナルで史上最高得点の330.43点で三連覇を果たした。3日前の出来事だが、余韻はまだ残っている。

 完璧な演技もさることながら、ここまでくるストーリーに感激してしまう。羽生選手自身も感激した様子が、得点が出た後の笑顔が一転号泣に変わったところに出ていた。その姿を見て、こちらも涙目である。あの涙は、嬉し涙ではなく、重圧から解放された安堵の涙だった聞いて驚いた。それほどの重圧だったんだ。

 新聞の見出しは、「前人未踏」では済まない。完璧、神の領域、求道者、異次元、大気圏突破などなど、スポーツの世界では珍しい表現である。海外からも絶賛の嵐、ライバルたちも脱帽と聞くと、こちらまで誇らしくなる。

 あまりいい出来事がなかった今年一年、年末にきて最高に明るいニュースがやってきた。スポーツでは、五郎丸人気がフィーバーしたが、羽生君の快挙の前には、霞んでしまう。ついつい羽生君と呼んでしまう。大ファンの義母などは「ゆずるちゃん」である。だって、まだ21歳なんだ。21歳の頃の自分を思い起こして、恥ずかしくなる。羽生結弦の生き方は、スケートの演技同様に完璧である。


2015.12.14.(月)

モランボン楽団公演ドタキャン

 夜、横浜小児ホスピス設立のための「ハートフルツアー2015」で横浜みなとみらいホールへ。私の出番は、かしわ哲さん率いるサルサガムテープの紹介を兼ねた短いメッセージのみ。

 北朝鮮のモランボン楽団が、12日夜に予定されていた北京での初公演を土壇場でキャンセルし、一度も演奏をせずに、同日午後、帰国した。

 ドタキャンの理由は、金正恩第一書記の「北朝鮮は水爆を保有し、強大な核保有国になった」という発言に不快感を覚えた中国側が公演の出席者の格を下げる措置を取り、それへの反発と見られている。金第一書記は、中国との融和関係構築のためにモランボン楽団を送り込んだのに、直前のとんでも発言で、それを自ら台無しにしてしまった。  こういうリーダーが率いる国家が、国際社会でどういった役割を果たすのだろうか。そんな懸念を抱かせる今回の出来事である。  


2015.12.13.(日)

原発の売り込み

  小雨の中、「ぷれジョブ藤沢」へ。神奈川大学の「障害福祉論」ゼミの学生3人が、プレイヤー、ジョブサポーター、プレイヤーの母親にインタビューするために来ていた。

 軽減税率についての自民党と公明党の駆け引きの最終局面、まだ決着がつかないうちに、安倍晋三首相はインドに飛び立った。何をしに行ったのだろうと思っていたら、インドと原子力協定を結ぶ約束をして、すぐに日本に帰ってきた。インドへの原発売り込みに目処をつけるというおみやげを持っての帰国である。

 インドは核不拡散条約に参加せずに核兵器を保有した国である。そんな国に原発を売るということは、原子力技術も提供するということになる。これは核不拡散体制を崩してしまうことにつながる。福島の原発事故の後に、日本が原発輸出の動きをすることに、不条理といえるほどの違和感を覚えた。さらに今度のインドへの原発売り込み。あれほどの原発事故を体験し、今なお被害は収束していない日本。唯一の被爆国である日本。他の国も原発売り込みをかけているからといっても、日本だけはこれに追随してはならない。兵器ではない、原発だからいいじゃないかというのは、まったく通らない。


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