浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

ジョギング日記 10月第4&5週分          

2012.10.31(水)

帽子かぶって    

 慶応大学SFCに行くのに、帽子をかぶっていった。2週間前、がんセンターでの受診の帰り途に、高島屋で購入したあの帽子。お店に飾ってある写真のハンフリー・ボガードの粋な帽子姿がかっこよかった。帽子をかぶって家を出るとき、光子に「どうだ?」と訊いたら、「顔が丸いから、帽子かぶっても、ハンフリー・ボガードのようには映えないわね」と笑いながら答える。その批評が頭に残っていることもあり、自分の帽子姿が恥ずかしくて仕方がない。薄い髪の頭を寒さから守るための帽子であって、決してお洒落のつもりはないから、かえって恥ずかしい。道行く人にジロジロ見られるかと心配したら、誰にもそんな素振りはない。乗り換えの横浜駅でも、電車の中でも、ジロジロは見る人はいない。こうなると、なんだか無視されたようで、かえって気になる。「今日、初めて帽子をかぶって出勤なんだぞ。ちょっとは感心して見ろよ」と、心の中でつぶやいた。

 授業は、「政策法務論」の第6回目。5グループに分かれて、法律の立法過程について調査をし、結果を発表するという課題を与えている。授業では、そのやり方について、具体的に説明をした。後半は、最近の政治情勢をにらんで、いくつかのテーマの解説。「官僚制打破」、「マニフェスト」までやったところで時間切れ。「民意とは何か」まではいかなかった。テキストには、「ガバナンス」に連載中の「アサノ・ネクスト」の原稿を使った。こういうときに、普段からの原稿執筆が役に立つ。


2012.10.30(火)

授業―授業―課外授業    

 この季節で一番気温が低い朝だと天気予報では言っていたが、それほど寒くはない。散歩、ラジオ体操には、最適に近い天候である。岸根公園のラジオ体操を仕切っているらしき人に「このラジオ体操は、どのぐらい続いているのですか」と訊いてみた。「20年前に、仲間と始めたのが、こんなに長く続いてしまったのです」とのこと。元旦も休まない、つまり、一年365日開催のラジオ体操。大したもんだ。「ラジオ体操はいいですよ。ぜひ、続けてください」と暖かい言葉。

 慶応大学SFCでの授業は、「地方自治論」。今日は「地方議会とは何か」を前半にやり、後半は「浅野の選挙」を論じた。何やっているかわからない地方議会の話より、私が直接経験した選挙のほうが、面白かったという学生の反応は、さもありなん。今日の出席者は、86名。先週より1人増えた。漸減傾向が反転。いい傾向である。

 午後の「障害福祉研究会」は、障害者差別禁止法案について。教室の机を並べ直して、円卓方式にしてのグループ討論。資料を一節ずつ学生に読ませて、次の席の学生が、それにコメントする。実際は、私からのコメントのほうが多くなるのだが、こういう参加型の授業は、教室が活発になっていい。障害者とは何か、差別とは何か、合理的配慮とは何か、私も一緒になって、いろいろ考えることは、知的刺激になる。

 授業終了後は、湘南台駅近くの居酒屋「ふる里」にて「課外授業」。履修者の半分以上の14名参加というのは、予想以上。盛り上がっている最中に、門限を気にする教授(私のこと)は、一足先に店を出る。そのあとのほうが、盛り上がったことだろう。


2012.10.29(月)

早起きは三文以上の得    

 4時過ぎに目覚めて、「ラジオ深夜便」の「天野祐吉の隠居大学」を聴く。月末の月曜日に放送される。今日の対談相手は、内館牧子さん。内館さんが国技館の一番前に座って観戦しているところに、合計360キロの力士二人が折り重なって落ちてきた。肋骨が折れているのに気づかず、翌日も同じ席で観戦しているうちに、どうにも痛みが強くなった。北の湖に頼んで相撲診療所に連れて行ってもらい、思わず「ラッキー」と叫んだ内館さん。肋骨一本折れたことより、あこがれの相撲診療所に行けたことがうれしかったという内館さんは、やはり変わり者のようだ。

 話があちこち飛ぶうちに、「嫌いな言葉」は何かということになり、内館さんは「生き様」がとても、とても、とても嫌いと連呼する。「ざまは、ザマみろのことだからな」と天野さんが受ける。「あの方の生き様にあこがれています」なんていうのが、とんでもないことと内館さんが言っていた。実に面白い対談で、未明のベッドの中で声を立てて笑うこと数回。なんだか、もうかった感じ。

 朝の散歩をしながら、私の嫌いな言葉について思いをめぐらしていた。いくつもその例が浮かんできて、「そうだ。次回の『新言語学序説』にこれを書こう」と決めてしまった。散歩していても、ラジオ体操で身体を動かしていても、体力がありあまっていると感じるほどに、体調十分である。調子に乗って怪我しないように、自重しながらも、いい気分である。帰宅して、湯船に身を浸せば、「極楽、極楽」と独り言が出る。

 締切が毎月5日の「アサノ・ネクスト」(「ガバナンス」で連載)の12月号の原稿を書く。「早いの(だけ)が取り柄」の原稿を送る。勢い余って、「新言語学序説」(「年金時代」で連載)の来年1月号の原稿を書き上げた。こちらは、いつもどおりの日程で編集部の奈良さんに送ることにする。来月は、少し、楽できる。こういうのも、「早起きは三文の得」の部類だろう。


2012.10.28(日)

杜の都の駅伝    

 日曜日。今日ものんびりしとした一日である。  午前中は、メールへの返信、書籍送付など「いただき物」への御礼状書き、手続き的書類の作成など、雑用で結構時間が取られる。

 昼からは、日本テレビで「全日本大学女子駅伝」を観戦。なにしろ、舞台は仙台である。選手が「仙台で走ることにあこがれています」というのを聞くと、なんだかうれしくなる。「杜の都」を駆け抜ける選手の姿が絵になっている。郊外の並木は紅葉し、定禅寺通りのけやき並木は、紅葉の一歩手前というコントラストも素敵だ。選手の姿の背景に、美しい街並みが映し出される。駅伝中継を見ながら、「秋の仙台は美しいなあ。牛タン食べに行こうかな」となる人も多いのではないか。駅伝の結果は、立命館大学の二連覇。佛教大学は、アンカーが力不足で、追い上げならず。立命館大学の安定した強さが目立つレースだった。

 石原新党について、どうもスッキリしない。石原氏は記者会見で述べている。「原発がどうのこうの消費税どうのこうのなんてことは小さい、こんなことはどうでもいい、 もっと 大きな目でやらないとダメ」。その一方で、現憲法破棄、「中央官僚の国家支配をぶち壊す」といったことで、「第三極」の政党の大同団結ができると考えている。  憲法破棄はともかく、官僚制度の打破を新党の「政策」の中心として、他の政党と「大同団結」できるのだろうか。「官僚制度の打破」は、一般受けもする。「そうだ、そうだ。霞ヶ関の官僚がよくない」といって溜飲を下げるのは簡単だ。政党だって、「官僚制度の打破」を掲げれば、庶民の賛同を得られると思っている。  私に言わせれば、「官僚制度の打破」は、「政策」でも何でもない。「政権交代」とか「政治主導」というものが、政策でないのと同じこと。民主党の「失敗」を繰り返してはならない。政党は、政策で一致しなければ立ち行かないし、原発問題、消費税増税が「ちっちゃな、どうでもいい」政策であるとは、暴論のたぐいである。石原新党をめぐる一連の石原発言の中で、まず、ひっかかるのは、このことである。


2012.10.27(土)

エルヴィス三昧の食事会    

 気持ちのいい朝、気分の乗る散歩、気力十分のラジオ体操。それもこれも、秋日和の中に体調十分の自分がいるから。大事にしたい。

 土日はゆっくりする日。久しぶりにJリーグの試合をテレビ観戦。なにしろ、ベガルタ仙台がジュビロ磐田と対戦する。サンフレッチェ広島の試合結果次第では、ベガルタがトップに立てる。悲願の初優勝が目の前である。試合は、1対1の引き分け。結果は残念だが、力と力、技術と技術が互角で渡り合ういい試合に満足。

 夜は、横浜駅近くの店で、「エルヴィス食事会」。メンバーは、「エルヴィス、最後のアメリカン・ヒーロー」(角川学芸出版)の著者の前田絢子さん、その本の編集担当の高橋保子さん、「メンフィス同窓会」仲間の松井裕香さん。いずれも、エルヴィス・ファンとしてのステージの高い方ばかりである。お店には、「2BEAT」のなっちゃんが送ってくれたワインを持参した。壜にはエルヴィスの姿が描かれているし、ボトルカバーには、エルヴィスの写真が50枚以上使われている。ワインの名前は「ALL SHOOK UP」。まずは、このボトルのことで盛り上がり、その後は、エルヴィス、エルヴィスで話が尽きない。楽しい時間であった。


2012.10.26(金)

今の世に光圀がいれば    

 今日の新聞もテレビも、ニュースは「石原都知事の辞任」でもちきり。12月には都知事選挙がある。それについて、私のところへ電話での取材が1件。「誰が候補者になっても、選挙戦ではみんな真摯に有権者に向かって欲しい」とだけコメントしておいた。

 「光圀伝」(冲方丁)を、昨夜、読了。文庫本でないので、電車の中で読むのに難儀する。持ち運びも重い。その重さだけの感動があった。光圀(「國」の中の「或」は「惑い」を連想させるので、光圀自身が、中に「八方」を入れた「圀」に改めた。「ワード」では、「みつくに」と入力すると、「光国」でも「光國」でもなく、「光圀」が出てくるのに、初めて気がついた。こんな字は、当用漢字にはないはずなのに。)は、文武両方にとてつもなく優れ、情に厚く、義を尊ぶ。ある意味、なんでもできるスーパーマンであるが、人間としての悩み、懊悩は人一倍深い。詩歌の才能もぬきんでていて、天皇からも最高級の賛辞を送られるほど。「人が生きてきたことすべてが、無ではないのだ」という信念が、歴史書の編纂に向かわせる。「今の日本にこんな政治家がいたら・・・」という思いにとらわれる。歴史ドラマであるが、文学作品としても、まことに美しい物語である。


2012.10.25(木)

石原都知事の辞任   

 朝からどんよりした肌寒い天気。散歩に出たら、天気が危ういので、自宅に舞い戻って傘を手にする。幸い、雨には遭わなかったが、今にも降りそうな空の下を歩いていると、なぜか物悲しくなる。ラジオ体操を目一杯やったら、元気一杯になった。お日様が出ていないと、ラジオ体操の集まりも少ない。少数精鋭で、体操を終えると、いつもどおりのパチパチパチが聴こえる。天気に関係なく、ラジオ体操は続く。散歩も続く。

 午後から、取材。「産学官連携ジャーナル」という科学技術振興機構が出している雑誌で、ATL、HTLV-1ウイルス問題を取り上げる。とてもいい雑誌なので、ATLについての情報が伝わることを期待して、今日も、喜んで取材に応じた。

 石原慎太郎東京都知事が辞任の会見を開いた。石原新党を立ち上げるとのこと。時期衆議院選挙では、比例代表の候補者として立候補する。国政復帰ということだが、この時期の都知事辞任は、ある程度の波紋を広げるだろう。政界はますます混沌、衆議院解散どころではない状況である。


2012.10.24(水)

元気な高齢者   

 いい天気、秋らしい日和である。岸根公園でラジオ体操をしている人たち(私を含む)が、秋空の下で輝いている。若者たちには負けないぞと、ラジオ体操に励む高齢者たち(私も含む)がいる限り、高齢化社会なんか怖くない。「元気な高齢者で一杯の社会」という人類が追い求めてきた理想に近づいているだけの話である。

 朝からSFCでの授業へ。「政策法務論」には、先週の茅野千江子さんに続いて、衆議院法制局から森恭子さんにゲストでおいでいただいた。「学生に講義するのは初めて」とおっしゃる森さん、堂々たる講義ぶりで、学生を魅了する。2週連続で、議員提案の法案についてみっちり講義を受けた学生たちは幸せである。「就職先として、議院法制局というのも選択肢に入れておけよ」とけしかけたら、森さんも「大歓迎」と応じてくれた。森恭子さん、ありがとうございました。

 夕方は、自宅にて、富国生命の顧客向けの生活情報誌「ブルーム」編集部の斎藤みどりさんの取材を受ける。例によって、病気の話。取材といえば、このところ、ATLサバイバーとしてのものが多い。多くの人にこの病気のことを知ってもらうためにも、取材は歓迎である。斎藤さんの的確な取材ぶりに乗せられて、楽しくしゃべり続けた。


2012.10.23(火)

火曜日は授業の日   

 慶應大学SFCでの授業。午前中「地方自治論」には、急遽、横須賀市議会議員の藤野英明さんにゲストで講義をしていただいた。これが、学生には大好評。私もうれしかった。地方自治を為政者(私のこと)の目ではなく、住民の目で見て論じるのは、学生にとっても新鮮に受け止めたことだろう。毎回のことだが、学生の授業態度がとてもいい。熱心さが、こちらに伝わってくる。教えがいのある学生たちである。そして、今日は、藤野さん、ありがとうございました。

 午後からは、「障害福祉研究会」。学生12チームから、調査研究の中間報告をしてもらった。準備状況はまちまちだが、すべてのチームが意欲満々。これからもうひとふんばりしてもらう。最終報告が楽しみである。

 夕方からは、「合意形成」についての大学院の授業。「熟議による世論調査」について博士論文準備中の学生からの発表に、教授三人がコメントし、意見交換する。大学院らしい授業であり、私のほうが教えられるところ大である。  火曜日は、一日中、SFCにいて、勉学三昧。これもまた、楽しからずや。


2012.10.22(月)

こんな風な朝   

 「私の朝」克明版。朝は、早ければ2時台に目覚める。それまでに、トイレに3,4回通っている。NHKラジオの「ラジオ深夜便」を聴くが、大体は、聴きながら再びの睡眠へのパターン。たまに3:05分からの「日本の歌、心の歌」でいい曲が流れると、そこで目覚めて聴き続けることがある。4:05からの「明日への言葉」に面白いゲストが登場すると、不思議と目が覚める。最近では、玄秀盛、アーサー・ビーナード、山崎努、宮本輝の各氏の話に聴き入ってしまった。5時からは、TBSラジオ「おはよう一直線」の生島ヒロシの声を聴いて、完全に目覚める。ベッドの中で体温測定。今朝は、36.2℃。ほとんどこの近辺である。

 5:45離床。ベッドメイク、用便、歯磨きを済ませて、水を一杯飲む。6;05散歩に出発。岸根公園まで17分。6:30からの集団ラジオ体操の開始までに、余裕をもって到着。体操終了6:40、再び散歩で帰宅。入浴前に体重測定。今日は59.6kg。60kg以下を記録するのは、3ヶ月ぶり。涼しくなったので、シャワーから浴槽入浴へ。足を伸ばして身体をお湯の中に埋めれば、「極楽、極楽」と声が出る。就寝前にも入浴する。そのたびに、シャンプーで頭髪を洗っていたが、「おはよう一直線」の健康コーナーで「シャンプーで洗うのは、週に2回でいい」と3日前に聴いてからは、それにしたがい、シャンプーなしとした。シャンプーを使うと、頭髪から脂分が奪われて、発毛に悪影響があるらしい。頭髪の早期復興を願う者(私のこと)としては、ご助言に従うしかない。

 朝食前に血圧測定。今朝は、135−83。最近は150−90というのも続いたが、今日は少し落ち着いた。手の指で測る血管の酸素濃度は98。この値は、いつも同じ。食後は、5種類6錠の服薬。セレスタミン(ステロイド剤、発疹のかゆみ、炎症抑制)、テプレノン(胃腸の粘膜保護)、ザイロリック(尿酸抑制)、リピトール2錠(コレステロール抑制)、アシクロビル(抗ウイルス)である。朝食後にお茶を2杯。一日2,000ccの水分摂取のノルマ達成へのスタートである。朝の克明版は、以上。

 午前中に宮澤歯科へ。たっぷり1時間かけての治療。「これでおしまいです。また支障が出たら、いらっしゃい」と宮澤先生。思ったより早い「完治」である。実際は、冷水で口をゆすぐと神経に障るが、食べ物を摂るのには、まったく支障がない。神経は、極力抜かないようにするのがいいという方針に従っての治療なので、冷水がちょっと沁みるぐらいは、よしとしなければならない。長いこと治療していただいて、ありがとうございました。

 午後から、「新言語学序説」12月号の原稿を書く。「独り言について」がテーマだが、むりやり探したテーマなので、原稿を埋めるのに苦労して、結構時間がかかってしまった。「まあ、これでいいか」と独り言を言いながら、「年金時代」に送付。「早いのが取り柄」の原稿なり。


2012.10.21(日)

美しい日曜日   

 早朝、外に出たら、素晴らしい天気である。「清々しい」という形容がぴったり。気温14度、湿度50%、無風、上空は雲ひとつない青空。体調はすこぶる良い。BEAUTIFUL SUNDAY、ビューティフル・サンデイ、美しい日曜日。生きているだけで幸せを感じるような。さらに、元気で散歩ができる、ラジオ体操もできるとは、幸せの2乗、3乗である。日曜日の岸根公園は、週日とは違う雰囲気。集団ラジオ体操の輪の中に、小学一年生(推定)が加わっている。母親に連れられて、4歳(推定)、2歳(推定)の兄弟(推定)もラジオ体操をしている。と言いたいが、2歳の坊やは、体操をする母親と兄貴を不思議そうに眺めているだけ。何回目かには、彼も体操の輪に加わるといいな。幸せな風景に、さらにもう一味追加されるだろう。

 「新言語学序説」の12月号の原稿を書くつもりだったが、テーマが思い浮かばない。こういう時は、本でも読むのがいい。書棚から「光圀伝」冲方丁著(角川書店)を取り出して、読み始めた。前作の「天地明察」が面白かったし、新聞の書評欄でも高評価である。アマゾンから取り寄せたものを、読まずに2週間放っておいた。単行本750頁は携行するには、ちょっと重いので、通勤時の電車の中で読むのは、文庫本になってしまう。まだ、「本のさわり」しか読んでいないが、久しぶりに読書の醍醐味を感じる出だしである。


以前のジョギング日記はこちらから

 



TOP][NEWS][日記][メルマガ][記事][連載][プロフィール][著作][夢ネットワーク][リンク

(c)浅野史郎・夢ネットワーク mailto:yumenet@asanoshiro.org