浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

ジョギング日記 7月第3週分          

2012.7.21(土)

富山の市民講座へ   

 「第67回日本消化器外科学会 市民公開講座」で講演のため、富山市の富山国際会議場へ。羽田から全日空便で富山空港まで。飛行機利用は、2009年5月29日に、高知市での講演のために、羽田から龍馬空港まで飛行機を使って以来、3年ぶりである。そういえば、高知での講演は、その4日前に東北大学血液内科の張替教授から「ATL急性型発症」の告知を受けたのと、6日後の6月4日に東京大学医科学研究所附属病院に入院するのとの、ちょうど合間の出来事だったことを思い出す。これが病気前の最後の講演だった。

 ともあれ、3年ぶりの飛行機である。一人で乗るのは怖いので、光子について来てもらった(「怖いので」は嘘です)。羽田で搭乗するところで、村木厚子さんと遭遇。彼女も、富山で講演があるとのこと。帰りの便でも一緒だった。彼女は男女共同参画についての講演だったらしい。それにしても、村木さんとは、不思議な縁、同じ運命なのだが、今日も不思議な出会いをしてしまった。縁はますます、深くなる。

 「市民講座」のテーマは、「患者と医師のよい関係」というもの。私は、「ATL患者になって」というタイトルで、30分の講演をした。最低でも1時間欲しいところ、この限られた時間なので、気ばかりあせって、しゃべる、話す。光子から、「いつも以上に早口、大声で、聴きづらかった」と言われてしまった。私の講演の前には、富山大学消化器・腫瘍・総合外科の塚田一博教授の仕切りで、北條荘三助手の「パターナリズムからインフォームド・コンセント」、松井恒志助教の「セカンドオピニオンとは」、嶋田裕准教授の「医師から見た賢い患者」というそれぞれ10分ずつのミニ講演が展開された。いずれも、とてもわかりやすく、面白く、ためになる。それを10分でまとめるのだから、すごい。「30分は短い」と言っている場合ではない。

 この市民講座に、300人(目測)の市民が駆けつけて、熱心に聴いている姿に感銘を受けた。こういう市民講座を続けていることも、すごい。塚田教授の献身の結果だろう。今回はお世話になりました。塚田教授、ありがとうございました。


2012.7.20(金)

   

 涼しい朝。散歩とラジオ体操には、丁度いい。今日のラジオ体操は、石川県七尾市の陸上競技場からの実況。2,000以上集まっている。知事時代に、宮城野原の陸上競技場で、ラジオ体操に参加したが、その時も実況中継だった。この岸根公園に集まる人たちの体操ぶり(こんな表現はありません)は、見事である。きびきびとした動き、伸ばすところはギリギリまで伸ばす。一心不乱に体操に取り組んでいる。例外は、私の左後ろにいるおばあさま二人。いつも、最初から最後までぺちゃくちゃしゃべりながら体操もどきをしている。小学校の先生だったら、「そこの二人、真面目にやれ!」とどやしつけるところ。実は、私もそうしたかったが、ぐっと抑えた。そんな体操を終えて、散歩に戻る。19分+17分53秒。

 「政策協働論」の採点を終えた。途中、横浜労災病院の耳鼻科の受診で2時間取られたが、それ以外は、大体真面目に採点に取り組んだ成果である。これで終わりではない。ABC評価、集計をしてから、講評を作成する。試験を受けっぱなしでは、自分が正しい回答をしたかどうか、学生はわからない。講評を読めば、自分の回答ぶりと比べて、自分ができたのかどうかがわかる。講評には、各問題ごとに模範回答を示す。こういう答案を書く学生がいることを、他の学生にも知って欲しいとの思いがある。


2012.7.19(木)

暑い日に   

 暑い、暑い、暑い。梅雨明け以来、急に暑くなった。こんなことなら、梅雨が明けないほうがよかった。そんな暑さの中、銀行での手続きのため、横浜駅前支店に出かける。屋根のあるところは、冷房が入っているが、青空の下は太陽が一杯で、暑い、暑い。身体がまだ暑さに慣れていない。家の中も、さすがに冷房なしではいられない。

 午前中は、たいがい、そんな用事でつぶれてしまい、「政策協働論」の学期末試験の採点に向かったのは、午後になってから。精神を集中して、88人の学生が作成した回答用紙に挑む。どうも出来がよくない。素直に採点すると、限りなく零点に近くなってしまう。各問とも、出題された問題についての理解が十分でない。上っ面だけの理解しかできていないので、回答に説得力がない。「教え方が良くなかったからかな」とちょっと落ち込むが、中には、私の期待どおりにしっかり回答している答案もある。15点満点も数人。バラつきが大きいな。そんなことを考えながらも、ひたすら採点業務に集中。半分は終わったので、明日には終了できる。

 夕食後には、今月末に収録する対談番組の打ち合わせで、対談相手(聴き手)の朝日新聞の高橋美佐子さんとディレクターの小久保泰二さんが来宅。高橋さんの仕事の関係で、この時間に設定した。私は暇があるから、時間はいつでもオーケー。打ち合わせなどしないで、ぶっつけでもいいのにと考えるのは、お気楽なゲストである私だから。番組を作るほうは、そうはいかない。その辺のこともわきまえて、しっかりと打ち合わせをさせてもらった。それにしても、2時間に及ぶ打ち合わせは、ちょっと長い。テーマは、私の闘病について(のはず)。放送は、8月3日(金)20:00−20:50「ニュースの深層」(CS朝日ニュースター)のはず。CS放送だから、見られる人は多くないだろう。


2012.7.18(水)

ほんとの最終授業   

 今日こそ、今学期の最終授業である。「未来構想ワークショップ」の授業は、11グループに分かれて、それぞれ与えられた課題解決目指してグループワークをするもの。その研究成果の発表を、先週6グループ、今週5グループやってもらった。今日の授業の終了時間のちょっと前に、第11番目のグループが発表を終えた。最終授業、時間ぴったりですべての発表が終了である。11グループ、ひとつとして「ダメ」という発表がなかった。それどころか、期待を大きく上回る、素晴いい出来である。そのことに、私自身が驚き、感激している。何もわからない大学一年生が、これだけのことを作り上げた。誰に言っても、どこに出しても恥ずかしくない内容であり、発表ぶりである。彼らもそのことを誇りに思っていい。

 それぞれの発表ぶり、研究成果について、コメントをするという仕事が残っている。いろいろやることが目の前にあって、こちらは後回しと考えていたが、今日中にコメントを作らないと、記憶が薄れてしまう。それが気になって、結局、仕上げてしまった。コメントだけでなく、点数による評価もする。すべてのグループがGOOD JOBなのだが、どうしても評価に差をつけないといけない。低い評価をしたグループに「ごめんな」と言いながら、評価を終えた。コメントと評価は、今日中に、学生全員に送っておいた。一喜一憂だろうな。


2012.7.17(火)

今学期の最終授業   

 SFCでの今学期最終授業。「政策協働論」では、今日の授業を期末試験に宛てている。「問題はむずかしいぞ」、「80分では回答しきれないぞ」と脅かした試験問題は、大半の学生は軽々とクリアしたようだ。時間を20分以上残して、回答を終えた学生もちらほら。時間切れで回答を終われなかった学生はほとんどいない。受験者は88名。回収した用紙をナナメ読みしたが、私の期待どおりの回答になっていないのが多い。問題の読み違え、あまりに表面的な回答が散見された。採点にかかれるのは、明日以降であるが、どんな回答になっているか、楽しみである。

 「障害福祉研究会」も今学期の最終授業。今日は、車座に机を配置して、「擬似シンポジウム」を試みた。私が提示するテーマについて、私が指名する学生に、なんらかのコメントをしてもらうというもの。実際にやってみたら、口頭試問のようになってしまった。学生が答えに戸惑っているところを私が補うという形である。それはそれで、面白かった。

 最後の部分で、「私ができること」というのを全員から披露してもらった。これが、なかなか感動的でよかった。詳しくは書かないが、「この研究会を履修してよかった。障害者問題に関わる視座がはっきりした」、「これからも、何らかの形で障害者問題に関わっていきたい」という総括と決意表明が相次いだ。担当教員としては、これに勝る言葉はない。こういった学生をもって、私も大満足。「来学期も履修してくれよな」と頼み込んでいるのだが、言われずとも、学生はその気であるらしい。

 授業後、この研究会としては初めての「飲み会」を湘南台駅近くで。今までは、何度声をかけても、3人しか参加希望がなく、飲み会が成立しなかった。今日は、ほとんどの履修者が参加。狭い店に11人がひしめき合う。これも私にとっては、楽しい時間であった。来学期の再会を約して、私は早めに辞去。宴は、そのあとも続いている。

 帰宅したら、アマゾンから吉村昭の作品10冊が届いていた。採点あり、原稿書きあり、番組づくりありと、いずれも締切がある仕事が続く。本に取り掛かるのは、だいぶ先になりそうである。  


2012.7.16(月)

海の日に   

 「海の日」の祝日。7月20日だったのが、「happy Monday」とかで、第3月曜日となった。1876年、明治天皇の東北地方巡幸の際、それまでの軍艦ではなく灯台巡視の汽船「明治丸」によって航海をし、7月20日に横浜港に帰着したことが根拠である。「海の恩恵に感謝するとともに、海洋国日本の繁栄を願う」という趣旨で制定された。根拠も薄弱、制定理由もとってつけたようなものだし、夏休み近くという時期も悪い。14ある国民の祝日の中では、最もインパクトの薄いものである。

 海の日制定には、横浜港も関係している。その横浜の岸根公園では、海とは無縁の集団ラジオ体操が大盛況。私も大盛況に一役買って、ラジオ体操第一、第二をきっちり実践した。体操していて改めて気がついたが、ピアノ伴奏がいい。6歳の頃から馴染んだメロディーである。一つ一つの体操の動きにピッタリの伴奏で、これを聴くと自然に身体が動いてしまう。一つの文化・伝統として、日本人の中に根を下ろしている。今の小学生が私の年になっても、ラジオ体操は続いていることだろう。ラジオ体操を間にはさんだ散歩を16分+15分14秒楽しんだ。

 「総員起シ」(吉村昭著 文春文庫)を読む。奇しくも、海の日にピッタリとなった。戦史小説5篇が収録されているが、そのうち4篇は海での沈没を描いたものである。中でも表題作の「総員起シ」がすごい。戦争中に事故で沈没した「伊号第三三潜水艦」が九年後に引き揚げられるまでの過程を描いたものだが、衝撃的内容である。息をもつがせずに読み進む。(変な表現かな) これで吉村昭作品「殉国 陸軍二等兵比嘉真一」、「戦艦武蔵」、「零式戦闘機」、「総員起シ」と太平洋戦争における悲劇的な戦争記録作品を続けざまに読んだことになる。迫力に圧倒されるが、重い気分が残る。気分転換の意味もあり、「蹴りたい背中」(綿矢りさ著 河出文庫)を読む。芥川賞の最年少記録を破る19歳での受賞作品は、著者の才能が随所に光っている。(これも変な表現だな) 青春小説らしくない青春小説。吉村昭の作品の重厚さとは違うが、小説の面白さを味あわせてくれる。大きな文字の薄い本で、あっという間に読んでしまった。これも吉村昭作品とは好対照。  


2012.7.15(日)

メンフィス同窓会   

 集団ラジオ体操は、日曜日になると、いつもより活気があるようだ。その活気を感じながら、今日もラジオ体操の第一、第二ときっちり付き合わせていただいた。散歩の帰りにコンビニに寄って、アサヒスパードライ350mlを6缶とアイスを6個購入。6缶のビールを飲み終えるのに半月かかる。そんなペースなのに、光子には「あなた、最近飲み過ぎよ」と教育的指導を受ける。どうも、「飲み過ぎ」の基準が違うようだ。てなことを考えながら、19分+20分24秒の散歩を終える。

 アマゾンに注文していた「柔らかな犀の角」(山崎努著 文藝春秋)が届く。山崎さんが「週刊文春」に連載中の「私の読書日記」6年分を収録したものである。7月5日にNHKの「ラジオ深夜便」に山崎さんが出演して、「演じること、読むこと、生きること」の話の中でこの本の紹介をしていた。早速アマゾンで取り寄せることにしたが、中古品しかない。値段は新品よりずっと高い。今年の4月刊行したばかりの新刊なのに、なぜアマゾンに在庫がないのか、中古品なのになぜ新品より800円も高いのか。楽天では、新刊が定価で購入できるのだが、クレジットカードでの支払いしかできないので断念。通販ではクレジットカードは絶対に使用しないことにしているので、仕方がない。

 そうやって手にした本である。「総員起シ」(吉村昭著 文春文庫)を読む隙間を縫って、ちょこちょこ拾い読みしたが、面白そう。その一方で、吉村昭作品への傾倒が続いている。アマゾンで、文庫本ばかり10冊注文してしまった。

 読書の最中に、原稿依頼があったのを思い出した。メンバーでありながら、入院以来3年以上欠席している「分権型政策研究センター」の研究会の「ニュースレター」への寄稿である。800字の短い原稿なので、手早く書き上げて読書に戻った。楽天対日本ハムのデイゲームの中継をチラチラ見ながら、注意散漫な休日の読書。試合は、5対0で楽天が快勝。

 夜は、横浜駅ルミネの「豆ちゃ」で、メンフィス同窓会。2000年の8月、エルヴィスの命日墓参りツア−で一緒だったメンバーが集まる。世話役の松井裕香さん、笠原弘之・久美夫妻、小西由起子さん、児玉あゆみさんと我々夫婦の7名が集まった。まずは、メンバーの一人で、がんで昨年亡くなった杉山みどりさんに黙悼を捧げてから開会。なにしろ、エルヴィス・ファン度からいったら、私なんかより何段階も高いステージの人たちばかりなので、乱れ飛ぶエルヴィス度百%の話には「恐れ入りました」というしかない。そして2000年のツアーの思い出に戻るのだが、その前後に何回もメンフィス詣でをしている人たちなので、ここでも差がついてしまう。それはそうとしても、エルヴィスファンという共通点を持った仲間の会はとても楽しくて、話は尽きない。自宅に戻って、この日話題になったエルヴィスの曲をCDで聴いた。エルヴィスは永遠であると改めて思う。


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