浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

ジョギング日記 10月第1&2週分          

2011.10.8(土)

朝ドラ「カーネーション」   

 爽やかで、秋らしい日。今日からの三連休は、だいたい、こういう天気が続くようだ。ゴルフには最適の日和である。行楽地には、人がたくさん訪れるのだろう。宮城クリネックススタジアムでは、秋空の下、楽天対ロッテの試合が開催されていたが、外野の芝生に寝転んで観戦している人もいる。知事時代に、宮城球場をドーム球場にして欲しいという要望があった。こうやって、爽やかな風に吹かれながら、青空の下でゲームを楽しんでいる観客の姿を見ると、「野球は、野外でやるもの。天井の下でやるもんじゃない」と実感する。その楽天対ロッテ戦は、田中将大投手が投げて、8対0の完封勝ち。文字通り、田中将・大投手である。

 ゴルフもしない、行楽地にも行けない私は、家でテレビを見るしかない。2日前から、NHKの朝ドラ「カーネーション」を見ている。朝ドラを見るのは、10年ぶりほどになる。土曜日には、朝9時半から、BSで今週放送6回分の再放送があり、見損なっていた第一回から3回分も含め、一気に見た。これが面白い。ヒロインの子ども時代を演ずる二宮星(あかり)の演技が出色である。やんちゃぶりが、ものの見事に演じられている。彼女の出演は、今日で終わり、来週からは別な女優が、成長したヒロインを演じる。もっと星ちゃんの演技を見たかった。「彼女は、子役として、いろんなところから声がかかるだろう」と一緒に見ていた家族で言い合った。


2011.10.7(金)

大学の同級生との夜   

  大学時代の同級生との集まり。クラス会とは別に、ごく少ないメンバーで集まった。内田晴康(弁護士)、鍋倉眞一(郵便事業株式会社社長)、平川修(弁護士)、望月邦計(日本バイリーン常勤監査役)と私の5人。クラス会などで会ってはいたが、私の病気もあり、こうやって顔を合わせるのは3年ぶりぐらいになるだろうか。

 思えば、昭和41年4月、駒場の教室で一緒だった時から、45年の月日が流れている。外見も、中身も、ちっとも変わっていないように見える。そんな5人での会食が楽しくないわけがない。昔話より、今現在の話に花が咲く。みんな、まだまだ現役なのである。「門限」が気になって、私だけ、みなさんより早く失礼したが、ほんとに楽しい時間だった。


2011.10.6(木)

「小沢裁判」が始まる   

 寒いぐらいの天気から、今日は暑さを感じるほどに季節が戻った感じである。爽やかな季節とは、ちょうど今頃をいう。外に出て、それを満喫したいのだが、ちょっと自粛している。長い目で、季節を楽しむためには、今はがまんしよう。

 「小沢裁判」が始まった。小沢一郎さんの全面対決を思わせる記者会見だった。記者会見は公判とは違う形での意見の表明があってしかるべきなのだが、実際は、公判での意見陳述の内容を、原稿を読み上げる形で繰り返すだけ。そして、その内容は、検察批判が中心であり、目新しいことは何もない。このやり方は、細部に入ったら、説明しきれなくなるという自信のなさのあらわれではないのか。無実であることに、ほんとうに自信があるのであれば、細部からそれを証明することはできるはずであり、この時点で記者会見を「利用して」外に訴えることは、自分のためにもなるのに。

 いずれにしても、裁判の場での決着が待たれる。検察対弁護人、守るも攻めるも、感情論、思い込みだけでは成り立たない。世論の動きだって、あてにはならない。純粋に司法的見地から、理性的に議論が進められ、誰の目にも明らかな形で黒白がつけられることを切に望む。  


2011.10.5(水)

「反ウオール街」全米へ拡大   

 急に寒くなった。涼しくなったどころではない。冷房とおさらばしたのは、ほんの少し前だったのに、今日あたりは暖房が恋しいほど。こんな気候だから、風邪がはやっている。体調に注意しなければならない。

 ニューヨークで若者デモ、ウォール街で「格差NO」、全米に飛び火、著名人も賛同、フェイスブックで拡大、米国で上がる貧困率。今朝の朝日新聞の見出しを抜き出しただけだが、アメリカで珍しい動きが出始めた。いつまで続くかわからないが、若者の間に不満と怒りが充満している雰囲気はわかる。これまでは、貧困問題なら、黒人層やヒスパニックが中心だったが、映像で見ると、デモに出ている人たちの中で、白人の若者の姿が目立つ。

 貧富の差が大きすぎるというのも、若者の不満の中心である。アメリカは機会均等の国である。努力すれば、誰でも夢を実現できる。金持ちにもなれる。というのが、アメリカの「売り」だったのだが、どうもそうではないらしい。額に汗して刻苦勉励をして金持ちになるならいいが、企業のむき出しの欲望を隠さないマネーゲームで、大金を手にする輩が目立つ。一方で、大学を出ても、まともな働き口すらみつからず、健康保険もない生活を強いられている若者たち。これでは、不満が出てくるのは当然だろう。デモが、世界の金融中心、つまりはマネーゲームの中心であるウォール街から始まったのは、象徴的である。その不満が、運動として、どれだけの広がりとインパクトを持つか、しばし興味深く見守ろう。  


2011.10.4(火)

福島智さんの本の書評   

 机に座って、パソコンに向かったり、本を読んだり、根を詰めてお仕事したという感じの一日だった。取材日程の調整、学生からの相談など、メールのやりとりが10件近く。次の授業は2週間先で、余裕があるのだが、早々と授業準備にも精を出した。昨日の授業で、学生を巻き込んでの意見交換が面白かったせいもあり、次回も続きをやってみようという気になった。そのための、「仕込み」が必要なので、それに取り掛かっていた。「ああ進めようか、こう仕掛けようか」と企画を練るのは、実に楽しい。

 原稿書きも一本。昨日、「盲ろう者として生きて」福島智著(明石書店)の書評を新聞社から依頼された。著者から送られた本を読んで、いたく感銘を受けていたので、喜んでお引き受けした。ひとこと、驚異の人材が書いた驚異の書である。書きたいことは山ほどあるのに、770字の制限はとても厳しい。それでも、なんとか思いを伝える書評を書き上げた。

 福島さんは、今、ニューヨークで研究生活を送っている。今月で研究が終わり、日本に戻ってくる。戻ってきたら、慶応大学の研究会のゲストスピーカーとして、ぜひお迎えしたいと思っていたが、なんとか、それが実現しそうである。わくわくしてくる。  


2011.10.3(月)

授業での短い意見交換    

 涼しい一日。慶応大学SFCへ。キャンパス内は、秋の気配。鴨池のほとり、彼岸花が群生しているところがあった。

 2時限の「地方自治論」では、「自治体の組織と仕事」を扱った。宮城県庁の組織を例として、説明しながら、知事時代に関わった懸案の紹介をする。産業廃棄物施設への違法投棄により、付近に悪臭が振りまかれた事案では、地域住民からの苦情処理に苦労したことなど紹介した。

 住民として、地方自治に関心を持つのは、このように、具体的な事案が発生した時であり、普通は、ほとんど関心がない。「そういったもんだよ」ということを強調しつつ、橋下大阪府知事による「教育基本条例」制定の動きについて、これを教育維新と見るか、暴挙と見るか、学生から意見を求めた。これは、学生としても、関心を持つ事案である。6人の学生からの意見は、全員が教育維新と見るということだった。私は、暴論と決め付けたのだが、学生は私の意見に同調する必要はない。自分の頭で考えてみることが大切。授業を大方終えた最後のほうの時間を使っての意見交換だったので、時間が短過ぎた。次の機会は、もう少しじっくりいこうと思う。  


2011.10.2(日)

「白熱教室」by草野厚教授    

 今朝早く、といっても深夜のことだが、毎晩、子守唄代わりにテレビをつけている妻が、「草野厚先生らしい人が授業やっているよ」と言って、私を起こすではないか。NHK−Eテレの「白熱教室」の再放送で、慶応大学SFCの草野厚教授による授業の様子を紹介していた。

 「3.11後の日本の国際協力」、「自衛隊の海外派遣」について、草野教授の講義内容も素晴らしいが、教授が論題を示して、学生に意見を求め、学生の意見に反応し、さらに別な学生の意見を求める。その進め方が的確で、学生がどんどん興味を示していく様子がよくわかる。学生が堂々と自分の意見を発表するのも、SFCならではである。これぞinteractiveな授業だと、感銘を受けた。ハーバード大学のサンデル教授のinteractiveな授業の評判が高いが、それとは別な形のとてもいい授業である。

 早速、明日の授業で、その真似事をやってみようと思う。学生がどんな反応を示すか、楽しみである。同僚教授に刺激されつつ、授業のやり方を改善していくのも、一つの挑戦である。この年になって、そんな挑戦の機会があること、これも人生の喜びである。ちょっと大げさか。

 楽天対オリックスは、5対3で楽天の勝利。ベガルタ仙台対セレッソ大阪は、2対1で仙台の勝利。スカパーとNHKのBSのチャンネルを頻繁に変えながら、両方の試合を見ていた。こういう、同じ時間帯に仙台のチームが両方勝ち、それをテレビでリアルタイム観戦していたというのは、9月24日(土)もそうだった。こんなことで、幸せな気持ちになれる。


2011.10.1(土)

障害者施設に関する、いい話、悪い話    

 今日から10月。衣替えである。天気のほうも、衣替え。陽が出ていても、吹き渡る風は、秋の気配を運ぶ。朝晩の涼しさが、快い。ちょっぴり寂しくもある。あの暑さが恋しいということでは、まったくないにしても。

 「後援会長に報告です」というメールが日浦美智江さんから入った。日浦さんが理事長をしている社会福祉法人「十愛療育会」が、後援会を発足することになり、その会長になって欲しいと日浦さんに依頼を受けていた。敬愛する日浦さんの依頼を断るはずがないのだが、何よりも、十愛療育会の運営哲学に共感したからである。早速の報告は、いいことと悪いこと。いいことのほうを先に書く。

 十愛療育園が運営する、身体障害者の生活支援施設「たっちほどがや」の近所にある高級有料老人ホームの住民であるQさんから、後援会に対して「匿名で」ということで50万円の寄付があった。Qさんは、時々「たっち」にボランティアに来られている。こんなに高額の寄付は初めてと、日浦さんは驚き、感激する。

 悪い話は、こうである。十愛療育会が京浜東北線港南台駅の近くの住宅地に建設予定の重症心身障害児施設に対して、町内会から建設反対の声が上げられている。「事前に説明がなかった」、「学校予定地だったところだから、学校のような文化施設を建てるべきだ」といった「反対意見」である。「日浦さん、25年前の『朋』の建設の時と同じだね」と、私は感想を漏らす。「朋」(横浜市栄区湘南台)は、当時とすれば、日本で初めての重症心身障害者が通所してくる施設である。

 21世紀の「文化都市横浜」で、まだこんなことを繰り返しているのか。情けない。嘆きたくもなる。しかし、日浦さんはめげない。25年前の「朋」の建設反対の時もめげなかった日浦さんだから、今回もきっちりと初心を貫徹するだろう。「朋」の反対運動の際には、地域の人、一人ひとりに丁寧に説明し、説得を続けた。それで、最後には、町内会として「賛成」になったのだが、副産物としては、「朋」スタートの最初から、ボランティアの人たちが駆けつけてくれたということである。説明を受けた人たちが、こういった形で巻き込まれ、「朋」に関わっていった。「今回も、そうなるはずだから、がんばりましょう」と後援会長の私は、口だけの協力だが、そう日浦さんに声をかけた。


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