宮城県知事浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

ジョギング日記 4月第5週
2002.4.30(火)

 連休明け。朝方雨降りだったので、今朝の走りはなし。実際は、雨だからではなく、昨日から風邪気味だったからである。我が家でも、順番に風邪を引いている。その菌をもらったらしい。喉の痛みが特徴の、新型インフルエンザのようだ。幸い、基礎体力があるので、そんなに悪くならないで済んでいる。これも、ジョギングで鍛えているおかげと、自分では信じている。

 月曜日ではないが、記者会見があった。資産公開の制度により、私の資産内容も世の中にさらされている。「自分の資産についてどう思うか」という質問があったが、なんとも答えようがない。別の記者の質問だったが、基本的には自分の資産がこんなふうに公開されることは、決して愉快なことではないといったことを答えておいた。

 日曜日の新潟の参議院補選、和歌山の衆議院補選、徳島県知事選挙の結果について問われたので、新潟の国政選挙で自民党候補が負けたことが、小泉政権への打撃だといったことを新聞がコメントしているのは、ちょっと違うんじゃないのと言っておいた。むしろ、昔ながらの選挙の図式に対して「ノー」と言われたのであって、古い体質の自民党ではだめだというメッセージととるべきなんだろう。

 風邪を早めに完璧に治したいので、今日は早く帰宅するつもりだったが、結構会議が長引いた。暖かくして早く寝ることにしよう。明日のジョギングもお休み。


2002.4.29(月)

 みどりの日でお休み。「みどりの日」というのを実感するような朝である。新緑が町を包んでいる。晴れ渡り、風もなく、生きていることをありがたいと思うような素晴らしい天気。時間もある、足も痛くない、長い距離を走るには絶好の条件を備えた日であったが、身体がそれを欲していない。だから、今朝はつつましく、4K走ったのみ。それなりに気分がいい。

 あまり行事の入っていない3連休。ふだんあまりできなかった、テレビ視聴と読書が新鮮だった。テレビのほうは、二夜連続でNHKスペシャルを感激して見ていた。土曜日は、昨日も書いた「イギリス 授業崩壊からの脱出」。イギリス・ロンドン郊外の荒れていた公立小学校をあっという間に立て直し、優良校に変えたシャロン校長の活動記録。「学校間での不平等、不公平」といった反発を撥ね返すだけの理念と方法論、そして実績がある。みやぎらしい教育を考えるヒントが、一杯詰まっている番組だった。

 日曜日のNHKスペシャルは、「奇跡の詩人―11歳 脳障害児のメッセージ」であった。誕生直後の手術の影響で、脳に障害を受け、話すことも立つこともできない日木流奈(ひき・るな)君。過酷なリハビリテーションで知られるドーマン法による運動訓練、知的訓練で、彼の能力は極限まで開発される。哲学書から天文書まで2,000冊もの本を読破したという。一体どうやってそんなことができたのか。

 そういった訓練の成果は、目を見張るばかりである。母親が持つ文字盤を驚くほどのスピードで操って、自分の意思を伝えていく。魔法を見ているようだ。詩のみならず、エッセイも書きこなす。「世の中は、あなたが幸せにならないと幸せになれないのです」といった言葉を次々に発していく。脳の機能の相当部分を喪失している人間が、ここまでの知的発達を遂げるという現実に圧倒される。

 ちょっとした表現をするためだけでも、流奈君は呼吸が乱れるほどのものすごいエネルギーを消費する。正直つらいのだそうだ。それでも、どうしても伝えたいことがあるという思いが、彼をせきたてる。すごい、すごい。人間にとって、意思伝達―コミュニケーションが本源的な欲求であり、人間の人間たるゆえんであることを、改めて知らされる。ふだんから、垂れ流しのようなコミュニケーションしかなし得ていないことを、恥じる思いである。

 読書のほうは、川上弘美の本をまとめて読んだ。今月はじめに(4.7の日記に書いた)「ゆっくりさよならをとなえる」という彼女のエッセイを不思議な思いで読んでから、ぜひにも他の作品を読みたいと願っていた。先日の上京の折に、八重洲ブックセンターで彼女の著作をしこたま買いこんだ。昨晩読んだ「センセイの鞄」はうわさにたがわず、とてもよかった。短編集の「ありがとう」、エッセイの「あるようなないような」も今日立て続けに読んだが、いずれもよかった。ふわふわととらえどころのないような作風であるが、豊富な読書に支えられたしっかりとした文章と、他人と同化しないぞといった風変わりな個性とが、いいハーモニーを作り出している。しばし、はまりそうである。

 今日は、第7回の「名ゼリフコンテスト」の審査員を務めた。毎年、みどりの日に開催されるこの催しも、3,4回連続の参加になる。12時から夕方6時まで、みっちりとつきあってしまった。

  今回の大賞は、渡り鳥が北に帰っていくというニュースを感心して聞いていた亭主に、奥様が言うセリフ。「あんだは、どいな時に帰りたくなんのっしゃ」というもの。こうやって書いてみるとなんのこともないようだが、セリフを読む代理人の演技力で、なんとも言えない味が出てくるのである。金野むつ江さん率いる演劇の六面座の面々が、総力を挙げてやっているこの催し。今や、この時期の仙台の風物詩になっている。

  こんなふうに、私の連休、その前半は終えようとしている。


2002.4.28(日)

 連休の間にもかかわらず、わがSMCには今朝も50人以上のランナーが集まっていた。走り終わったあとに、先週のつばきマラソンに参加したメンバーが、皆の前で挨拶をさせられた。女子60歳以上5Kの部に出場した石川トヨ子さんは、優勝報告だった。私は、知事の部で5年連続の優勝の報告。石川さんは、67歳。今朝だって、6Kランで私より先を走っていた。石川さんは、私にとって、ひとつの理想である。あと、15年はああやって走りたいものである。

 昨夜のNHKスペシャルで紹介されていたが、イギリスの荒廃した公立小学校を見事に立て直した女性校長先生の朝の日課が,1時間のジョギングとのこと。彼女の手腕と意気込みに感心しながら見ていたが、朝5時からロンドンの町を走る様子に感銘した。一緒に番組を見ていた妻に、「ほらな、立派な人は、こうやって毎朝走っているんだぞ」と言ってやった。

 阪神はヤクルトに連敗してしまったが、原稿を書いたり、読みたかった本を読んだり、たまっていたお礼状を書いたりの、それなりに有意義な休日であった。


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