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シローの走り書き

走るクマ

合併後の新市長に期待する

2005.5.10 

 宮城県内では、市町村合併によって、今年の4月1日に4つの新しい市が誕生した。その市長を選ぶ選挙がこのほど行われ、新・石巻市は前石巻市長の土井喜美夫さん、東松島市は前矢本町議会議長の阿部秀保さん、登米市は歯科医師の布施孝尚さん、栗原市は前宮城県議会議長の佐藤勇さんが当選した。新・石巻市長を例外として、合併前の町長は落選、年齢で若いほうが当選という結果になった。

 年齢のことはともかく、3市では首長経験のない方、行政経験がない方が市長に就任ということになる。新市長には、最初はとまどいがあるかもしれないが、経験のなさは、決して市長業務においてマイナスにはならない。むしろ、私が言うところのSense of Wonder、つまり驚きを驚きとして感じるセンスがあるという意味では、新しい組織に新鮮な息吹きを吹き込むことになるだろう。「役所の常識は、世の中の非常識」ということから、自由でいられる可能性が高い。

 どなたが新市長になられても、大変なのは変わらない。登米市は9町、栗原市は10町村の合併によってできた市である。それぞれの町村ごとに、役所の仕事の仕方が違っているだろうから、職員の間でとまどいも出てくるだろう。最終的にさばくことになる市長のご苦労は、並大抵ではないはず。

 住民意識のこともある。合併したために、住民サービスで不利になったという種類の苦情は、しばらくは続くだろう。旧町どうしの反目が表面化してこない保証はない。新市全体として、歴史、文化、伝統を共有しているわけではないから、市としての一体感を持つようになるには、ある程度時間がかかることになる。それを成し遂げるのも、初代市長として期待されているところであろう。

 庁舎にしても、当面は、いくつかの庁舎にわかれての執務ということにならざるを得ない。これだって、行政効率ということからいけば、不便さをかこつことになる。これまでは町としてやってこなかった施策として、例えば、生活保護行政があるが、市となれば新たにこういった仕事もやっていかなければならない。

 合併はスタートであって、ゴールではない。このことを、県内の市町村合併に関する行事に出席するたびに、繰り返し申し上げていた。そのとおりであって、新市長にとっては、これから全力疾走を開始しなければならない。合併直後には、合併による効率化の恩恵は現れにくい。職員の数を減らすのは、これから徐々にであって、合併直後はそのまま足し算した職員数での新市発足となる。今後計画的な職員数の削減をやるにしても、それはそれで難事業である。

 むずかしいところだけ挙げてしまったが、新しい行政体の発足は、それ自体で夢と期待が一杯であることも確かである。なにしろ、初代の市長ということで、真っ白なキャンバスに絵を描いていくような立場である。責任も重いが、自由さも無限大である。やる気さえあれば、相当なことができる。

 県としての立場で言えば、新しい市には、「合併してよかった」とみんなが思えるような発展を遂げていくことを心から期待したい。期待するだけでなく、積極的に支援していくことも当然である。頼まれもしないのに、口を出したり、手を出したり。それで「余計なお世話」ということになってはまずいが、そうでなければ、一緒に力を尽くしたい。

  これまでは、自治体としての規模が小さかったために十分にできなかったような仕事をどんどん進めてもらうというのが、まずは当面の目標だろうと思う。なにしろ、各町から集まって来た職員で、組織の能力は各段に上がったはずであるので、こういった職員の能力を生かすことによって、相当なところまでできる。

 新しく市長になられた方々は、それぞれやる気満々ということが見て取れる。こちらが何も言わなくとも、どんどん走って行く方ばかりである。いろいろ困難はあるとは思うが、これから合併を果す地域のモデルとして、必ずや成果を挙げていかれるものと期待している。



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