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讀賣新聞 夕刊 2009.3.19
浅野史郎の《夢ふれあい》 第24回

障害者福祉 カギは「非専門家」

 24回にわたって書かせていただいたこの連載も、今回が最終回。福祉の分野の中で、障害者福祉を中心にして題材を選んできた。現在の私の関心 分野は地方自治であるので、障害者問題の情報に接する機会が限られていた。トピックを探すのに、結構苦労したことを告白しなければならない。

 連載で訴えたかったのは、非専門家の巻き込み方である。厚生省障害福祉課長時代、私が敵として見定めていたのは、世の中の無関心であった。

 老人福祉なら、誰もがいずれ老人になるから、一般の関心を引くのは比較的容易である。しかし、自分たちが障害者になることは想定していない人たちに、「あわれでかわいそうな障害者に何かやってあげましょうか」という以上の関心を期待することが難しかった。

 障害者問題は、いつまでたっても、他人事なのである。

 スペシャルオリンピックスの活動を通じて、スポーツをする知的障害者が上達していくのを見るのは楽しい。「とっておきの音楽祭」は、障害者も健 常者も一緒になった楽しいイベントである。障害のある人たちが就労すれば、一緒に働く人たちに、その仕事の意義と楽しさを教えてくれる。

 「楽しさ」がキーワードであり、それを通じて障害福祉の「非専門家」が、ごくごく自然に、こちらの分野に足を踏み入れてくれれば、ボランティアぐらいには変身してもらえるのではないかという期待があった。

 そのように変身した非専門家が、地域の中で2倍に増えれば、その地域の底力は2倍になると信じたい。それが世直しであり、国づくりである。

 統合教育によって、障害児だけでなく、健常児も大きく変わる。障害児と机を並べて学ぶ経験をもった子どもたちが、世の中に大勢出て行くようになれば、世の中が変わる。そんな思いをこめて書いてきた。

 こういう機会を与えていただいたことに感謝しながら、しばしのお別れである。 (おわり)


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