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讀賣新聞 夕刊 2009.2.2
浅野史郎の《夢ふれあい》 第21回

厚労行政にオンブズマンを

 不祥事が続いた厚生労働省に対する厳しい批判を受け、昨年8月、「厚生労働行政の在り方に関する懇談会」が発足した。私も委員の一人として、これまで6回の会合に皆勤賞である。

 審議の中で、ある委員から、「なぜ厚労省だけに、こういった不祥事が起こるのだろうか」という問題提起があった。私の見方は違う。たまたま、この時期に集中して不祥事が起こっただけで、霞が関の他の省での仕事ぶり、組織としての問題は同様である。

 だったら、批判の高まりを奇貨として、厚労省から改革の先鞭をつけたらどうか。情報公開の徹底、地方分権の推進、天下りの廃止、国際化への対応など、やるべきことはたくさんある。こういった改革を通じて、厚労省が霞が関改革の先駆者になったらいいというのが、私の主張である。

 とは言っても、厚労省の仕事には、特殊性があることに気がつく。生活困窮者、難病患者、障害者、寝たきりの高齢者、被虐待児童、母子家庭などを仕事の対象としていることである。社会的弱者、自分で自分の権利を守りにくい人たちと言い換えてもいい。

 だとすれば、思いを代弁し、権利を守ってくれる人が必要である。日本語訳では「護民官」といかめしいが、オンブズマンと呼ばれる人たちである。

 同時に、厚労行政の実態を地域の中で「定点観測」するようなシステムを提言したい。観測結果を報告したうえで、オンブズマンが、社会的弱者の権利擁護のためにきっちりと物申す存在としての役割を果たしてくれれば、発言力も弱い彼らにとって、どれだけ心強いことだろう。

 オンブズマンから問題点を具体的に指摘されることによって、行政として課題に適時・的確に対応できる体制ができあがるわけだが、時間もかかる。それまでの間、私自身が自薦のオンブズマンの役目を果たそうか。そんなことも考えている。


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