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宋 文洲 氏のメルマガ
第101号 2008.7.25配信
連載コラム「病識、常識、非常識」
第4回

大分県教育委員会の不祥事

 大分県教育委員会の教員採用にまつわる贈収賄事件は、底なしの泥沼状態を呈 している。合格者の半分近くが不正によるものというのは、ひど過ぎないか。

  なぜ、こんなことが起きてしまったのだろう。教育委員会という、狭い閉じら れた世界で、一握りの人たちが採用の権限を独占している。教員の採用倍率が 10倍を超えるという状態であるなら、この採用権限はとてつもなく強力な権 力となる。県議会議員は、教育委員会職員との貸し借りの力をちらつかせなが ら、支持者からの要求を取り次ぐ。金銭や贈り物が介在するのも、強大な権力 に取り入るために有効であるからである。

  贈るほうも、もらうほうも、頼む議員も頼まれる職員も、罪の意識を感じてい ないらしいのは、「悪しき慣行」として、幅広く、長い間続いていたから。コ ネや情実で採用を左右することは、教育委員会においては、「常識」だったの だろう。「教員採用なんて、こういうもんだ」とうそぶきながら。私の言うと ころの、「もんだの人々」の姿である。

  大分県で顕著なのは、その「閉じられ方」だろう。試験の解答を発表しない、 本人に試験結果を通知しない、答案用紙は(10年保存の内規に反して)1年 で廃棄される。これでは、「悪事」は表に出ることなく、深く静かに広がって いく。関わった者は、どうせばれないと高をくくってしまう。

  では、どうしたらいいか。まずは、事実関係を、大分県教育委員会自身が、本 気になって徹底的に解明することである。まずは、その覚悟がなければならな い。「捜査当局のご判断を待って」といったことが、教育委員会幹部から表明 されていたが、人任せでは絶対にいけない。内部調査では、真実が明らかにな らないと心配する向きもあるが、まずは、自分たちで解明するという強い意志 が教育委員会になければ、話にならない。外部の手も借りるかどうかは、方法 論レベルの問題であって、最初から外部に任せるという態度では、自分たちの 手で再生を図ることを放棄しているようなものである。

  こうやって、マスコミをはじめ、周りの人間が憤っているが、本来、最も怒ら なければならないのは、大分県民である。合格するはずが落とされた受験者は 言うまでもないが、子どもたちを学校に送っている父兄、ちゃんとした教育行 政を期待している納税者は、ここで、きっちりと怒りを示さなければならない。 「大分県教育委員会の常識は、大分県民の非常識」と叫ぶことも必要だろう。 一番の被害者は、大分県民であって、私を含めて、周りでいろいろ言い立てて いる人間は、コトの顛末を見届けることは必要であるが、直接的には、何か被 害を受けたわけではない。

  この困難を自分たちの手で乗り越えた後には、大分県の教育界には、新しい風 が吹いてくるだろう。一度転んだとしても、その立ち直り方が大事。転んでも タダでは起きない。手にしっかりと何ものかをつかんで立ち直って欲しい。 。

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