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月刊ガバナンス平成29年6月号
続アサノ・ネクストから 第81

地方自治に関する憲法改正論議

 衆議院憲法審査会は「国と地方のあり方」についての議論を始めた。4人の参考人が意見陳述をしたが、いずれも地方自治の充実・発展を求める立場での発言であった。論点はたくさんあるが、ここでは衆議院憲法審査会で取り上げられたものについて考察することとしたい。

 民主党政権時代に使われた「地域主権」の用語が一人歩きして、国家主権と対置されるものとの誤解を生じることがある。現に、審査会では、大津浩明治大学教授からの「国民主権の地域的行使の場として地方自治を考えることが大事だ」という意見に対して、自民党議員から「地域に主権があるとはおぞましいことだ」との主張がなされた。

 「地域主権戦略大綱」(平成22年6月22日閣議決定)において、「地域主権改革」の用語が一貫して使用されているが、そこでは「国と地方が上下の関係から対等の関係へ」という趣旨が強調されている。さらには、「地方自治の本旨」である団体自治と住民自治の徹底、充実という目標も示されている。決して、国家主権に対置する地域主権ではない。

 地域主権の主張とは別に、自治体のつくる条例に必要性と合理性が相当程度認められる場合には、例外的に条例が法律を優位することを認めるべきであるという意見が大津教授から述べられた。憲法94条「地方公共団体は・・・法律の範囲内で条例を制定することができる」を改正すべきということだろう。地方自治法14条に「法令に違反しない限りにおいて・・・条例を制定することができる」という規定があり、この規定は憲法の規定と同趣旨と解されているので、法律の授権がない条例も制定可能である。大津教授の求めることは現行憲法の下でも認められるのではないかと思う。

 齊藤誠東大大学院教授からは、二元代表制見直しの意見も出されている。地方議会が自治体の長を選ぶ仕組みの提案である。国における議院内閣制と同じような仕組みになるわけだが、地方自治体の場合、これが二元代表制よりも優れた仕組みといえるかどうか不明である。

 齊藤教授は「多様な民意の反映と集約の視点から」というが、白地に絵を描くのと違って、現在の二元代表制をガラリと変えてまでやるべきことか疑問である。二元代表制が機能していないとすれば、首長、地方議会、住民がそうさせているのであって、決して制度のせいではない。二元代表制が本来目指している形になるように、実態のほうを変えるのが先である。

 佐々木信夫中央大学教授からは、「人口減少時代に財政の効率性から考えて、道州制移行を本格的に検討すべきである」との意見が表明された。道州制移行に要する膨大な時間と政治的エネルギーもさることながら、道州制導入で地方自治の懸案が簡単に解決できるというのは幻想に過ぎない。道州制導入を憲法改正の文脈で語る段階ではないだろう。

 衆議院憲法調査会でのここまでの議論では、地方自治に関して憲法改正で対応するのが適当という案件がみつからない。さらに別な観点からの議論が望まれるところである。  


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