月刊ガバナンス平成28年7月号 議会と知事の関係 高額な海外出張経費、毎週の別荘通いへの批判に始まる舛添要一東京都知事への風当たりの強さについては、前回の本欄でコメントした。その後、さらなる展開はあったが、今回は、それについては直接触れない。論じるのは、都知事と都議会の関係である。 この原稿を書いている時点では、都議会がどういう対応をとるのかは、まだわかっていない。その時点でも言えることは、都議会の議論にこれだけ高い関心が寄せられることは、めったにないということである。 都議会にこれだけ都民の関心が集まるのはいいことである。これまでは、都議会で何が行われているか、都民はほとんど無関心であった。自分たちが選んだ都議会議員が、都議会でどんな活躍をしているのかも知らなかった。それが一転して、6月定例会では、都議会の傍聴席が満員になった。都民が、都議会での議論にこれだけ関心を寄せるのは、ほんものの民主主義に至る第一歩といっていい。 対照的なのが埼玉県議会である。埼玉県議会2月定例会で、自民党県議団による上田清司知事無視「事件」が起きた。自民県議が上田知事に質問したのは、代表質問の1回だけ。議院運営委員会で、質疑の出席を部長ら事務方に限る「部局別質疑」を新設して、知事を答弁者からはずした。 自民党県議団がこうした挙に出たのは、上田氏が多選自粛条例に反し、昨年8月に4選したことに反発し、「4期目の知事は存在しない」(幹部)と位置づけるからである。上田知事のほうでも、多選自粛条例違反を正式に謝罪することもない。 気になるのは、県議会がこんな状況になっていることに埼玉県民がほとんど関心を示さないことである。そもそも、過去2回の県知事選の投票率が、25%前後という低さであることも根っこにあるのだろうが、これほどの無関心は民主主義の危機といってもいい。 最後に、参考までに、私が宮城県知事時代の県議会との関係について紹介する。 知事選挙では、県議会最大会派の自民会派は私の対立候補を支援した。県議会は知事にとっての野党が多数であり、知事と議会との対立が激しくなるのが自然である。この対立関係を、いい意味でのライヴァル関係にするか、知事の足を引っ張る敵対関係にするかは、議会側の見識にかかっている。 その点、宮城県議会は、知事と切磋琢磨する関係であり、それを議員提案の政策的条例案を多数成立させるという形で具体化した。三重県議会と並んで日本一の議会となった。このことは、知事としても誇らしいことであった。 議会の政策転換への関与も紹介したい。地方公務員共済組合の宿泊施設である勾当台会館を改築する計画が、県議会の反対にあったときのこと。自民会派の議員から「ホテル・旅館などの民業圧迫になる」という反対理由が示された。私は「なるほど、もっともだ」と受け入れて、計画を撤回することにした。県の財政が厳しい中、多額の改築費用の支出が回避されるという副産物ももたらした。 議会と知事とのこういう関係もあるということを知ってもらいたかった。
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