浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

 

月刊ガバナンス平成28年6月号
続アサノ・ネクストから 第69

知事であることの覚悟

 知事になるには厳しい選挙に勝たなければならない。それに比べれば、知事であること、あり続けることはやさしいことのように思える。そうだろうか。本当にそうだろうか。このところの舛添要一東京都知事への風当たりの激しさを見ていると、知事、特に東京都知事でいることは、そんなに簡単なことではないと思えてくる。

 舛添知事が2014年2月の就任後に行った8回の海外出張の経費が、合計で2億1300万円に上ることが分かった。都議会の共産党都議団が、都に情報開示請求をした文書にある数字である。一回当たりの費用は平均2600万円余で、石原慎太郎元知事の平均額を1000万円上回っていることも明らかになった。

 出張経費が高額に上る要因として、ロンドンでのスイートルーム滞在の一泊19万8000円、その際の19人の同行(うち10人の宿泊費が一泊10万円以上)が目立っている。航空機がすべてファーストクラス利用というのも、他の知事ではないことである。

 この高額出張経費に対しては、都議会の他、マスコミ、知事経験者、都民などからも厳しい批判の声が聞かれた。こういった批判に対して、舛添知事は記者会見などで、「スイートルーム宿泊は突然の要人との会談に備えるもの」と説明しているが、どうだろうか。コスト縮減を標榜する舛添知事にとっては、イメージダウンは免れない。

 この問題が治まりかけたタイミングで出てきたのが、「毎週末の湯河原別荘通い」である。舛添知事が、毎週末に公用車で都庁から100km離れた湯河原の別荘に通い続けていることを週刊誌が伝えたことで、各界、各層から一斉に批判、非難の声が上がった。テレビ各局のワイドショーでは連日この問題の報道が続いた。視聴者の関心を集めたのは、この問題がわかりやすいからだろう。「都知事として、尋常な行動ではない」ということは誰でもわかる。

 この「都知事として尋常でない」というのがこの問題の本質である。公用車の使い方として許されるか、危機管理上問題ではないかという議論についての舛添知事の反論(言い訳)は一理ある。「公用車の使用は、都のルールに従ってやっている。全く問題がない」、「確実に連絡ができるシステムや、そばにはヘリポートに利用できるグラウンドがあるので危機管理には対応できる」と記者会見で語っている。こういうのを「理路整然たる非常識」という。

 尋常でない、非常識でもある。そう思うのが、ふつうの都民の感覚である。そこを踏み外しているのが、「毎週末の湯河原別荘通い」そして「高額出張経費」である。「都民の感覚」というのは、都民が都知事に期待していることであり、都知事はその期待に応えなければならない。

 舛添知事からすれば、「知事の仕事はそんな窮屈なものなのか」と嘆くかもしれない。しかし、それが知事に期待される姿である。

 知事の中でも、都知事は別格である。だからこそ、都知事であることには、それ相応の覚悟がいる。仕事を離れた日常生活においても制約がある。都知事でいることは、簡単なことではないのである。    


TOP][NEWS][日記][メルマガ][記事][連載][プロフィール][著作][夢ネットワーク][リンク

(c)浅野史郎・夢ネットワーク mailto:yumenet@asanoshiro.org