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月刊ガバナンス平成27年5月号
続アサノ・ネクストから 第56

自治体と国の対立

 沖縄県の米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移転をめぐって、国と沖縄県との間に意見の不一致がある。政府は辺野古移転に沖縄県の理解を得たいのだが、翁長雄志知事は辺野古の新基地建設反対の意向を崩していない。地方自治の観点から考えてみると、国が決めた方針を自治体が覆すことができるかどうかという問題である。

 沖縄県における「政権交代」も問題を複雑にしている。仲井真弘多前知事は「ノーというだけでは済まない」という意見であり、辺野古沿岸の埋め立てを承認もしている。2014年11月の沖縄県知事選挙で、仲井真氏が「辺野古移設反対」を公約に掲げる翁長雄志現知事に大差で敗れた。翁長知事としては、「民意を得た」として、公約通り移設反対にこだわるのは当然である。そうではあるが、前知事が出した埋め立て承認を撤回することは法律的にかなりむずかしい。

 国が法律的に瑕疵がないとして、辺野古移設を「淡々と」進めるとした場合、沖縄県として移設阻止をどうやって実現するのか。法律的には対抗措置はむずかしく、政治的問題として扱わざるを得ないだろう。

 翁長知事を選んだ沖縄県知事選挙で表された民意は、「移設反対」である。改めて、住民投票で移設の可否を問うことが考えられる。「移設反対」が多数となっても、政府は結果にとらわれず、「淡々と」移設を進めることはできる。しかし、「反対多数」の民意を前にして、移設を強行することは、政治的にはリスクがある。原発事故で生じた放射性廃棄物の最終処分場建設候補地とされた自治体が、建設に強く反発していることから、国(環境省)が建設を強行できないでいるのも、強行した場合の政治的リスクを認識しているからであるのと同じである。

 辺野古移転問題は、沖縄県と国の対決にとどまらず、地方自治の侵害と捉える見方も出てきている。愛知県岩倉市議会と長野県白馬村議会は「中央と地方の対等をうたう地方自治を侵害しかねない」とする請願・陳情を採択し、政府が沖縄県との話し合いを進めるよう求める意見書を安倍首相らに送った。

 沖縄県と同県名護市が受け付けた「ふるさと納税」が、今年に入り前年同月比で最大約 77倍も増えたとの報道があった。寄付者からは移設反対運動への支援文も多く届いているという。沖縄県以外の議会や住民からのこういった動きは、政府が移設を粛々と進めることを当然視することの危険性を示唆している。

 辺野古移転問題から離れて、自治体と国の対立という一般論で考えてみよう。こういった対立は今までもあったし、今後とも続くであろう。

 国には国の言い分があり、自治体には自治体の言い分がある。合意に至るまで粘り強く話し合いを継続することが求められる。その際、自治体側としては、民意を的確に把握してそれを政府側に伝えることを怠ってはならない。政府側も自治体側も、話し合いにおいては秘密があってはならない。出すべき情報はすべて出したうえでの話し合いこそが、正しい解決に達する近道である。            


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