浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

 

月刊ガバナンス平成27年4月号
続アサノ・ネクストから 第55

フレッシュ地方公務員へ

 新年度が始まる季節。自治体には、新入庁者がやってくる。彼らは、将来どんな公務員になっていくのだろうか。

 公務員は役人と呼ばれる。「役に立つ人」のことだとの説明が最近のはやりである。そのとおり、住民の役に立つ仕事をするのが、自治体職員である。国家公務員より身近に住民がいるのが、地方公務員の特質である。

 さて、どうやったら住民の役に立つ公務員になれるのか。配置された部署の仕事には、「顧客」としての住民がいる。まずは、その住民のことを知ることから始める。日々の仕事に忙殺され、そんな暇がみつからないと嘆くなかれ。書類を見て、資料を読んで、想像力を働かせることはできる。それらの文書の背景には、住民の姿があるはずである。住民の姿が見えてくれば、そういった住民の役に立つための仕事のポイントがおぼろげにも見えてくる。

 新人時代は雑用が多く、上司からは「考えるより手を動かせ」と言われる。仕事は回転寿司のように次々に回ってくる。余計なことを考えずに、皿の上の仕事を処理し続ける。これは慣れれば、楽なものである。深く物事を考えないで済む。

 新人だからこういう仕事ぶりになるのではない。公務員時代を通じて、ずっとこれが続く。それでいいのか。回転寿司が回るのを眺めながらも、そう自問することは必要である。  「楽なもの」といえば、公務員特有の前例踏襲、横並び尊重の仕事は楽である。真剣に考えなくとも結論が出る。上司への説明も簡単に通る。時には、前例を排し、横並びを破るような仕事もしたらいい。前例がない難問に出くわしたときに、呆然と立ちすくむだけにならないように。

 公務員に人事異動はつきものである。数年で、次のポスト、また次のポストへと異動し、仕事の喜び、やりがいを味わっている余裕がない。そうこうしているうちに、公務員生活は終わってしまう。それでは詰まらない。公務員の醍醐味は、今そこにある部署の仕事にしかないと思い定めること。「足下に泉あり」である。前方や周囲に気を取られず、足下を掘り進むことに集中せよ。さすれば、必ずや甘露の泉が湧いてくる。

 仕事の仕方を上司からだけ学ぶのでは、心許ない。役所の外にいる人たちからも学ぶべきである。住民から学ぶのは当然であるが、仕事を一緒にするパートナーとしてのNPOなどの民間団体の活動から学ぶところは大きい。生協(生活協働組合)との連携も新しい可能性を開く。

 最後に情報の大事さについて。情報は文献、マスコミ、ネットからも得られるが、生きた情報、使える情報は、生身の人間を通じて入ってくる。だから、情報を持っている人を知らなければならない。そういう人を仲間にすることが必要である。そのためには、公務員自身が魅力的で、目立つ存在でなければならない。匿名や役職名だけでなく、固有名詞で勝負する。そうであってこそ、人が寄ってくる、情報が集まる。

 以上、新人公務員だけではなく、すべての自治体公務員へのメッセージである。      


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