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月刊ガバナンス平成26年7月号
続アサノ・ネクストから 第46

新しいふるさとづくり

 日本創成会議(増田寛也座長)の報告が話題になっている。「消滅可能性都市896」という数字が、衝撃的である。

 「消滅可能性都市」として名指しされた自治体の中には、「とんでもない言いがかりだ」と怒るところもあろう。「大変だ、大変だ。どうにかしないと」と、危機感を新たにした自治体が多いことは、容易に想像がつく。

 各自治体はこれまでも危機感を持って、対処してきた。しかし、行政がいろいろやっても、人口減に歯止めはかからず、過疎化が進んでいくのが現実である。

 確かに、行政はいろいろやっている。直接的な人口減対策として、不妊治療費助成、出産祝い金支給、保育費の第三子以降無料化、その他の子育て施策がある。産業振興としては、企業誘致、地場産業の振興、新産業の開発、観光の振興など、熱心に取り組んでいる。道路整備、商店街の活性化、何とか会館やホールの建設といったハード面の対策。これらの施策が人口減への歯止めになったという例はあまりない。

 行政主導での地域振興策は、ほとんどの場合、成果を挙げていない。そもそも地域振興は、その地域の住民の発意により、住民主体でなされるのでなければ、うまくいくはずがない。

 別の観点から考えてみる。人口減対策としては、出生率の改善よりも、社会減をどう食い止めるかが重要である。高校卒業後の若者が都会に出て行ってしまう。ふるさとを出て行った人たちは、二度と戻って来ない。新たに都会から田舎に住まいを移す人は皆無に近い。これをどうするか。

 キャッチフレーズ的にいえば、「魅力ある新しいふるさとづくり」である。「こころざしを果たして、いつの日にか帰らん」とするふるさとが、緑の山も、水清き川も失われていては、帰る気持ちになれない。田舎には、都会にない、安心と安全な食べ物がある。金銭に換算できない豊かさがある。都会生活では感じられない、人と人との絆がある。

 ないもの探しはやめよう。この地域にしかない「とっておきのもの」を探し、それを育て、地域の魅力を高める。農林漁業を産業としてではなく、それ自体楽しいこと、生きがいになること、そういうものとして育てる。ふるさとの自然を相手に、地元の人たちと「一緒に」働けるのが、農林漁業の特質である。

 こういったことは、行政主導ではできない。行政としてやるべきは、地域の人たちのいのちと健康を守る医療、福祉施策が中心である。魅力あるふるさとづくりは、定住条件を整えることである。観光でいくら地域がにぎわっても、旅行客は定住してくれない。観光業の限界である。

 地域起こしを主導するのは、ふるさとをこよなく愛し、仲間とともにふるさとに住み続けたいと熱望する人たちである。固有名詞で語られる数少ない人(たち)である。こういう人(たち)を育てなければならない。

 日本創成会議の報告書は、危機感を煽るものではない。新しい豊かさを求め、新しい生き方をしようと鼓舞するものである。そういうものと、受け止めるべきである。


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