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月刊ガバナンス平成23年1月号
続アサノ・ネクストから 第4

情報公開と情報管理

 行政が保有する文書について、情報公開、情報管理という面から考えてみたい。

 外務省は2010年7月、作成後30年を経過した日米安全保障条約や沖縄返還に関する外交文書ファイル37冊を公開した。これにより、非核三原則について、核の持ち込みは他国からの核攻撃に対する抑止力に有効であるというのが当時の外務省の見解であったことが明らかになった。非核三原則の実質否定である。

 国民世論に配慮して二枚舌を外務省は使っていたのだから、30年前のこととはいえ、もっと議論が巻き起こってもおかしくない。むしろ、大問題は2000年の情報公開法の施行前に、外務省が外交文書を大量に廃棄したと疑われていることである。こちらのほうが国民の怒りを買ってしかるべきである。外務省は廃棄を認めていないが、それなら、あるはずの重要文書が大量に紛失していることになり、これはこれで文書管理上の大問題である。

 文書管理上の大問題といえば、警視庁公安情報がネット上に流出した事件がある。公安関係の外国人情報提供者の氏名、住所、家族構成が記載されているし、公安担当者の顔写真入りの名簿も掲載されている。秘匿性の高い捜査資料が114件にのぼるという。わが国の公益をどれだけ害する行為であるのか、憤りを隠せない。

 この事件を知って思い出すのは、私が宮城県知事時代に、県警の犯罪捜査報償費の執行に関する資料を見せてくれという要求を県警に拒まれたことである。実際には、協力者など存在しておらず、予算は裏金に回っているのではないかという疑問が私にはあった。県警の反応は、協力者の名前が記載されているので、協力者を守るために、絶対に見せられないという。情報公開せよというのではない。予算の執行権者である知事の要請さえも、「協力者の保護」ということで拒んだ事実はとても重いものと、当時も今も考えている。

 それほど情報管理に厳格な警察組織が、今回のような情報漏洩を許してしまうというのは、一体どういうことなのか。情報公開は時代の要請とは言いながら、こんな極秘情報まで公開しろとは誰も言わない。だったら、きっちり管理しろよと声を大にして訴えたい。

 今回の情報漏洩は、ネット上に公開するという形で行われた。情報の拡大を防ぐ手立てはなく、取り返しのつかない暴挙である。

 ネット上に公開ということでいけば、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件のビデオ映像が動画サイトのユーチューブに流出した事件がある。情報漏洩をしたのは、海上保安庁の職員で、国家公務員法の守秘義務違反が問われた。同じ情報漏洩でも、警視庁の公安情報漏洩とは、次元がまったく違う。流されたのが秘密情報と言えるのかどうか。今回の件は、公務員の服務規律の観点から、なんらかの処分はせざるを得ないが、刑事罰を課するのは、無理だろうと思う。

 情報公開と情報管理は裏表。公表すべきでない情報を漏洩することを、情報公開の美名のもとに正当化することはできない。組織内部において、情報公開と情報管理について、さらに高い次元での対応を早急に確立すべき時期である。


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