月刊ガバナンス平成25年9月号 参議院改革 7月21日投開票の第23回参議院議員選挙は、121の改選議席のうち、自民党が65議席、公明党が11議席獲得し、非改選を合わせて与党が135議席となり、安定過半数を確保した。これで国会内での「衆参ねじれ」は解消である。「決められない政治」からの解放は、めでたいことである。 「めでたいこと」と書いたが、政権与党にとってはそうだろうが、民主主義の観点から、慶賀すべきことなのかどうかはわからない。「決められない政治」の反対語は、「いとも簡単に決められる政治」であることに留意する必要がある。 政権与党が参議院でも過半数を得ていれば、ほとんどの場合、衆議院で決めたことが、参議院でもそのまま通る。「参議院は衆議院のカーボンコピー」という状況になり、「そんな参議院ならいらない」という議論を誘発する。 参議院をどうしたらいいか。参議院をなくしてしまうというのも、一つの案であるが、憲法では「国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する」(第43条)とあるから、二院制は憲法上の要請である。憲法がなぜ二院制を採用したか、その意義としては、多様な国民の多様な意見を反映するためというのもあるが、なによりも、慎重審議の必要性である。 参議院の廃止ではなく、中身を変える。私の案は、定数を30人にするというものである。30人が少ないなら、40人でも、50人でもいい。憲法第42条に「「両議院の議員の定数は、法律でこれを定める」とあるから、この定数変更は法律改正だけで可能である。選挙は、全員全国区。任期6年、半数が3年で改選とするのも、憲法第46条が定めるとおり。 議員一人あたり、国費で雇われる10人の政策スタッフを置く。参議院に30の政治的シンクタンクができるようなものである。ちなみに、アメリカの上院議員は平均44人、下院議員は、最大22人の国費による政策スタッフを抱えている。イギリス下院では、議員一人あたり平均4.5人の秘書が雇用されている。 参議院の少数精鋭化で、いわば、国民に選ばれる委員で構成される審議会のようなものに変身する。文字通りの熟慮の院で、一人一人の議員が、10人の政策スタッフを使いこなしつつ、(望むらくは)党派制にとらわれない議論を展開する。17の常任委員会それぞれの構成員は5人程度にするが、一人の議員が複数の常任委員会に所属する。委員会は、議員同士の議論を原則とし、極力、閣僚を含む政府委員の出席は求めない。 参議院議員は首相候補にならないし、閣僚など政府役職にもつかない(法律で定めるか、慣例により)。参議院を権力から遠ざける趣旨だが、議案審議に集中させるためでもある。 議員定数をわずかに減らすだけでもむずかしいのに、この案のように激減させる案は通るはずもないという見方もあろう。話は、むしろ逆で、参議院の中身をがらりと変えることに賛同してもらえば、定数削減はあとからついてくる。 荒唐無稽な参議院改革案ではないが、実現可能性については何とも言えない。真夏の夜の夢で終わるとしても、しばし夢の中に漂っていたい。
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