月刊ガバナンス平成25年8月号 東京都議会議員選挙 6月23日投開票の東京都議会議員選挙は、自民党と公明党の候補者が全員当選し、民主党が惨敗という結果に終わった。共産党が都議会で過去最多の26議席獲得と大躍進し、日本維新の会は「大躍進」ならず、2議席獲得にとどまった。 今回の都議選のありようには、違和感が拭えない。結果がどうこうではない。今回に限らないことだが、「参院選の前哨戦」と各政党だけでなく、マスコミも大騒ぎであるのが気に入らない。同じく地方自治体の議会選挙であっても、宮城県議会選挙は全国版ではほとんど報道されないのとは、好対照である。 東京都は、日本の首都であるが、一地方自治体でもあることを忘れてはならない。都政のどういった課題が、この選挙で争点になっているのか、各候補者は都政のあり方についてどのような主張をしているのか、猪瀬都政に各会派はどういう態度をとるのかといったことはあまり報道されず、もっぱら、来るべき参院選にどう影響するのかの記事だけが幅をきかせている。 国政選挙の前哨戦という宣伝が効いているのか、有権者は国政レベルの争点を意識して投票先を決めている。「アベノミクスに期待している」、「民主党政権は期待はずれ」、「維新の会は、橋下徹代表がコケた」というのは、都議会議員を選ぶ基準とはほとんど関係ない。 こうなってしまうもう一つの理由は、都民は都議会に関心がないからである。都議会が何をやっているのか、ほとんど知らない。都政の問題がどこにあるのかの論点が、有権者に届いていない。 オリンピック招致、新銀行東京の再生、築地市場の移転、震災対策、保育所不足など、都政の課題は数多いのに、都議選で話題になることがほとんどない。それぞれの課題について、都議会各会派がどういった姿勢でいるのかが、有権者に伝わってこないのである。これでは、有権者は、国政政党の支持・不支持によって投票するしかなくなってしまう。 こういう状況は、「都議会なんてあってもなくてもいい」と都民が認識していることの反映でもある。本来は、都議会としての存在意義が問われていると憂慮すべきことなのだが、議員たち自身がそのことに気がついているのかどうか、はなはだ心許ない。 都議会は、石原慎太郎前知事とどう対峙してきたか。猪瀬直樹都政と政策レベルでどういった議論をしていくのか。それが見えていない。自治体は議会と知事(首長)との二元代表制で成り立っているのに、議会側は政策面で知事と競い合うという姿勢が見えない。議会は条例制定機関であるのに、都議会は議員提案の政策条例がこの5年間で1本しかないのが象徴的である。ちなみに、宮城県議会は、同じような時期に、25本の議員提案の政策条例を成立させている。これまた好対照である。 今回の都議選の投票率は、43.5%という史上2番目の低さである。これも、有権者の都議会への無関心ぶりを示す指標である。都議会は危機感を持たなければならない。あってもなくてもいい都議会では困るのである。自治体議会としての存在感を発揮し、次の都議選に臨んでもらいたい。
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