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月刊ガバナンス平成25年4月号
続アサノ・ネクストから 第31

有識者会議の乱立

 新政権発足以来、安倍晋三首相のもとで、有識者会議が次々と立ち上がっている。思い浮かぶだけでも、「教育再生実行会議」、「国家安全保障会議の創設に関する有識者会議」、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」、「産業競争力会議」(日本経済再生本部の下部組織)、「規制改革会議」と、花盛りの様相である。

 上記の会議の委員は、ほとんどが10人以上。会議開催時間2時間内に、委員一人あたりの発言時間は10分-15分、事務局からの説明が入ると、もっと短くなる。これだけの時間で、すべての有識者から有益な意見を引き出せるだろうか。どれだけ意義のある議論が展開されるだろうか疑問がある。

 選任された委員は、会社や大学などの組織で、それぞれ役職を持っている。忙しい職業生活を送っている人ばかりである。有識者会議の中で、「課題解決のためにご意見を」と政府から依頼されても、それに応えることは義務ではないし、他にもっと時間と労力を使ってやるべき使命がある。つまり、委員一人一人は、与えられた課題解決に「命を賭けている」わけではない。稀に「命を賭けている」委員がいたとしても、毎回、15分程度の発言時間の中で、どうやって十分な貢献をすることができようか。

 課題解決に命を賭けているのは、担当部署の役人である。そのために給料をもらっているからだけではない。国家公務員としての使命感がある。熱心な役人であれば、「寝ても覚めても」課題解決のことを考えている。それとの対比でいうのだが、有識者会議の委員は、フルタイムの「必殺請負人」ではありえない。そこに、有識者会議の限界がある。

 限界を突破する方法として、役人による「有識者」への「取材」を提案したい。知識と見識と有用な示唆を引き出すのである。委員から教示されたものを咀嚼して、政策の形にまとめるのは、役人の得意わざである。

 その結果を有識者会議の場で報告をし、その内容を改めて議論してもらう。報告書の内容を実践に移すのは、政府の責任であるのだから、政府の一員たる役人が報告書をまとめるのに、全身全霊で臨むのは当然のことである。その意味では、役人、及び役人からなる事務局を信頼していい。逆に、事務局としては、有識者からなる会議の信頼を得るような働きぶりでなければならない。

 「事務局が政府の都合のいいように勝手に報告書をまとめるのはけしからん」と文句を言う委員がいる。「勝手な」報告書になるのは、各委員からの情報量が少ないゆえに、役人が作文しなければならないからという事情もある。上記のように、各委員からじっくりヒアリングをする方策をとれば解決できる問題である。また、この取材の機会を通じて、有識者と役人との間に信頼感が醸成されるはずである。「報告書を勝手に作っている」という不信感も払拭されるだろう。

 有識者会議には、立派な成果をあげて欲しい。そのためには、会議の場だけの議論ではなく、役人による委員への徹底的取材を併用する形をとれば、「有識者会議」から意義のある成果が期待できることを強調したい。


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