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月刊ガバナンス平成24年1月号
続アサノ・ネクストから 第16

大阪W選挙がもたらしたもの

  11年11月の「大阪ダブル選挙」は、その後も、「余震」がやまない。維新の会が巻き起こした旋風に煽られて、既成政党の政治家たちの「右往左往」ぶりが、やたら目に付く。そういった表面的な動きはともかく、この時点で、今回の「ダブル選挙」を総括し、今後の展望を考察する必要がある。

 自治体の選挙が、これだけ全国の注目を集めたことは、画期的である。選挙の争点は、「大阪都構想」である。つまりは、大都市制度のあり方、地方自治のかたちに関することである。地方自治が、全国的話題になることは、めったにない。今回の選挙がもたらした、反射的効果といえる。

 次に、選挙結果をどう見るか。維新の会、なかんずく、橋下氏が圧勝した要因は何か。国民の間には、政治(家)不信が高まり、政治的な閉塞感を打ち破ってくれる人材への期待が広がっていたところに、橋下氏が登場した。主義主張が明確で、行動力もある、強いリーダーシップを持ったスターとして、期待が集まった。これだけ魅力的な人材が、当選するのは、当然であろう。

 民主党、自民党のみならず、共産党までもが、対抗馬の平松氏の支援に回ったことは、今回の選挙では、橋下氏に有利に働いた。政党の支援を受けないで戦う橋下氏が潔いと、有権者の目に映ったことは、既成政党への不信感がある中では、プラスに働いた。

 次に、選挙結果に現れた「民意」について考えてみる。有権者は、大阪都構想に賛意を示したように見えるが、それは、魅力的な橋下氏が掲げる構想だからこそ、魅力的な構想に思えたということなのではないのか。実際のところ、大阪都構想が、住民にとって、それほど魅力的なものとは思えない。大阪市民にとっては、大阪市が、自治体としてはなくなってしまうのだから、大賛成とはなりにくいはずである。「選挙結果」=「民意」と言い切るには、距離がある。

 これからのことを展望してみよう。選挙結果をよりどころにして、「民意は我にあり」と決め付けていいのか。民意にしたがって、大都市構想の実現に突っ走っていくとしたら、「橋下さん、ちょっと待て」と言わなければならない。「総論賛成、各論反対」という局面もあるはず。たとえば、大阪市24区を8つの特別区に再編する案で、低所得層が多数である区と統合される区が出てくる。その区の住民は、素直に統合を受け入れるとは思えない。

 選挙は、橋下氏勝利ということになったが、民意を受けているのは、市長だけではない。大阪市議会があり、堺市には堺市議会がある。議員は、住民から選挙で選ばれており、二元代表制のもと、議会は、政策決定では、市長と並び立つ存在である。今後、大阪都構想をどうするかについては、議会の動向も、大事な要素となる。橋下氏としては、議会の動向、住民の意向に目配り、気配りしながら、手堅く進んでいくことを期待したい。前に進むだけでなく、引くべきときには引くだけの柔軟な対応も求められる。

 今後は、大阪都構想の行方だけでなく、民主主義が大阪の地で、どう機能するかも気になる。これからも、大阪から目が離せない。


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