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月刊ガバナンス平成23年8月号
続アサノ・ネクストから 第11

社会保障・税一体改革

 社会保障・税一体改革が進められようとしている。改革の中身と方向性について、ここでは、詳しく論じない。社会保障改革について言えば、基本的には、数字の予測と理論の問題である。議論すれば、共通認識は得られる。問題は、増税である。

 「税一体改革」と銘打って議論しているのだから、改革の中に増税は組み込まれている。増税の中身は、消費税率の引き上げである。これは、検討に関わった人たちの中での共通認識である。

 改革の行方はどうなるか。結論から言えば、菅政権の下では、さらに言えば、民主党主体の政権の下では、改革の実行は不可能だろう。増税、消費税の引き上げの問題は、単に、理論的な問題にとどまらず、政治的な問題であり、すんなりとは進められない。

 与党内でも、国民新党は消費税引き上げ反対、さらに、民主党内でさえ、「消費税引き上げを言い出せば、選挙で落選する」と不安になるあまり、なんとか改革論議の中で、消費税引き上げ問題の時期や上げ幅をあいまいなものにしておきたいと考える議員が少なくない。そんな政治状況の中で、一体改革なるものが、実現可能なものとしてまとまるはずはない。

 どうやったら、改革が実現するか。それを考える際に、私の頭に浮かんでくるのは、この夏の電力不足の中での節電についての企業、国民の対応である。

  15%の節電は、かなり厳しい。企業活動にも悪影響が出るし、国民生活の不自由さも相当のものである。しかし、政府からの節電要請に、不平不満をじっと飲み込んで、協力したではないか。なぜ、こんなことができたかと言えば、今、節電しなければならない背景と理由を、きっちりと理解し、そのことをやむを得ないものとして受け入れたからである。

 わが日本国民は、この程度の理解力と、さらに言えば、「愛国心」は持ち合わせている。だとすれば、消費税の引き上げも、節電の要請と同じく、なぜそうしなければならないのか、きっちりと理解できれば、「国難」を乗り越えるために、受け入れる素地は十分にある。そのためには、消費税引き上げも含む改革の必要性を、改革を進めようとするリーダーの下、誠心誠意、力を込めて国民に説くことが、絶対に必要である。

 国民は、リーダーが改革遂行にどれだけ本気で、真摯に取り組んでいるかを、じっと見ている。小泉首相の下での郵政改革ができたのは、小泉首相の本気度が誰の目にも明らかだったからである。郵政改革がほんとに正しいのか、必要なのかの国民的理解は、十分でなかったのにもかかわらず、である。改革の必要性が理解され、改革へのリーダーの本気度が見えれば、国民はついてくる。これが政治である。

 「改革の実行は不可能」と書いた。なぜ、そういう結論になるかは、今の政治状況を見れば明らかだろう。消費税の引き上げは、単なる理論ではない。政治の問題である。首相に、上記の条件を充たす要素が見られないとすれば、改革は成就しない。方向性さえ示せない。逆に言えば、本気で取り組む体制と、強い政治的意志があれば、改革は必ず実行できる。


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