浅野史郎のWEBサイト『夢らいん』

 

月刊ガバナンス平成18年8月号
アサノ・ネクストから 第8

地域創造ネットワークジャパン

 アサノ・ネクストの仕事の一つとして、「地域創造ネットワークジャパン」の代表理事という職責をお引き受けした。団塊世代の大量退職という2007年問題を意識しつつ、シニアが地域の中で社会貢献活動を行うのを積極的に支援していこうという団体である。

 団塊の世代に注目というのは、きっかけだけ。地域にいるシニア全般の活用が真のテーマである。設立総会では、「団塊の世代だけが社会貢献をするのではない。我々もっと上の世代だってがんばる」という発言が参加者から寄せられたが、まさにそこが狙い目であった。シニアになっても「目立ちたがり」と揶揄される存在の団塊の世代への対抗意識から、他の世代の人たちが目覚めてくれることを期待していたら、そのとおりになった。

 その設立総会での基調講演で私が申し上げたことであるが、社会貢献活動の中でも、中心になるのは福祉分野にしてもらいたい。人間との関わりがあり、胸にどんと響く感動があれば、活動をやめられなくなる。障害者、それも最重度の重症心身障害者への支援に関わったら、「人間存在とは何か」という想いに打たれるはずである。 それと矛盾するようだが、あまり「立派な」ボランティアを目指さないで欲しい。ちゃらんぽらんに見える人がやっていれば、他の人も「俺だってできそうだ」と活動に加わりやすくなる。まなじりを決しての活動は、いずれ疲れてしまって、長続きしない。

 「地域の底力」というのも強調したい。地域の構成員が、「昔取った杵柄」を生かしつつ、自分たちのできる範囲内の活動をする。それが集まれば、地域の底力を発揮できる。例えば、小学生の登下校時に犬の散歩をしてくださるだけで、見守りになり、犯罪の抑止力になる。そういった活動を勧奨し、調整し、ネットワーク化する役割としてのコーディネーターは必要であるが、中心になるのは非専門家。これを最近の私は、「地域の底力づくりに結びつく非専門家の輪」と呼んでいる。

 設立総会には、三百を超える団体の関係者が出席した。「地域創造ネットワークジャパン」への世の中の関心と期待はとても高い。地域にはやる気とさまざまな専門性と時間をたっぷり持っているシニアがあふれ、ますます増える。自分が住む地域のために何かやりたいという想いが一方にあり、もう一方には、誰かの手を必要としている地域のニーズがある。双方がなかなか出会わないというのが悩みであった。その結びつけ役をやろうというのが、今回の団体立ち上げの理由である。

 人は集まった。想いは凝縮しつつある。あとは、具体の行動である。全国百を超える地域センターを立ち上げることが、まず第一。労働団体の連合からは、事務所の場所を提供しようという手が挙がっている。「さわやか福祉財団」など、既に同様の活動をしている団体も全面協力の態勢である。

 日本のあちらこちらで、地域の底力がついたところが増えていけば、これすなわち世直し、国づくりである。 ささやかに誕生した団体である。これからどれだけ大きく育っていくか。「地域創造ネットワークジャパン」に暖かいご支援をお寄せいただければありがたい。


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