![]() 月刊ガバナンス平成20年10月号 「厚生労働行政の在り方に関する懇談会」 「厚生労働行政の在り方に関する懇談会」の委員に任命された。私としては、「喜んで」という思いでお引き受けした。23年間も身を置いた厚生労働省への恩返しという気持ちもある。 厚生労働行政に関して、薬害肝炎問題、年金記録問題、後期高齢者医療制度などの失態が明らかになった。行政への信頼回復が必要である。そういった事情からの懇談会の設置と理解している。 信頼回復ということで言えば、ひとり厚生労働省だけの問題ではない。霞ヶ関の各省は、国民の目から見て、いかがなものかという失態を何度か演じている。霞ヶ関全体の見直しが必要な時期である。ここで厚生労働省が改革に成功すれば、霞ヶ関改革のリーダー、モデルになり得るのではないか。 第一回会合予定の8月1日が、内閣改造と重なってしまい、8月7日に延期されている間に、懇談会の事務局は厚生労働省から官邸(内閣官房)に移されてしまった。その第一回会合で、私の考えるところの概略を披露した。 第1に、情報公開の徹底である。宮城県知事として、情報公開の重要性を骨身に沁みるほどに実感した。カラ懇談会、カラ出張などにより、裏金づくりが県庁内で広く、長い間行われていた。そのことが、宮城県情報公開条例に基づく情報開示により、仙台市民オンブズマンの手によって明るみに出された。不祥事の発覚を契機にして、県庁組織は、恥をさらし、血を流し、組織の再生に至った。この過程を通じて、県民の信頼を取り戻したことも事実である。 だったら、厚生労働省も情報公開を徹底することによって、国民の信頼を取り戻すことができるはずである。不祥事を表に出すことが目的ではないし、そういった結果になるかどうかはわからない。大事なのは、何も隠すことがないというほどに、素っ裸になってわが身をさらすということである。そこで何が飛び出してくるかではなくて、裸になる姿勢が国民から評価される。その過程を通じて、組織は生まれ変わることができる。 第2点としては、厚生労働省の所掌する事務の権限、財源の地方への移譲である。今年5月に出された、国から地方への権限移譲に関する地方分権改革推進委員会の第一次勧告に対しては、霞ヶ関各省は、見事なまでのゼロ回答であった。各省横並び体質の下で、厚生労働省だけが、地方への権限移譲に同意しにくいという事情は理解できる。今回の在り方懇談会が設置された今こそが、横並びを脱する好機である。 地方に任せたほうがいい事業を抱え込んだり、補助金分配業に忙殺されていては、国でしかできない重要でむずかしい仕事に十分な人手、時間、労力はかけられないだろう。権限、財源を地方に移譲することによる組織の見直しは、前向きな、攻めの姿勢の方向転換であることを理解すべきである。 その他、最低限のルールの遵守とか、天下りの廃止といったことについても、懇談会では、順次、具体的な提言をしていこうと考えている。今回だけでは紙面が足らないし、今後の展開もある。 次回も、在り方懇談会について、続けて書かせてもらうことにして、今回はこの程度で。
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